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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1626/2453

第1626話:デミアンとアグネス

 ――――――――――二五八日目。


「わっさわさだねえ」

「わっさわさですねえ」

「わっさわさだぜ」

「わっさわさね」

「わっさわさだぬ!」


 灰の民の村へ行く途中の湧き水のところだ。

 クレソンが水辺を三分の一くらい覆ってしまっている。

 もう一ヶ月もしたら全部カバーされちゃうな。

 魔境クレソンの旺盛な繁殖力よ。

 食草で覆われる幸せ。


「生でもスープでも炒めてもイケるもんな。クレソンマジ万能」


 今年は移民の食の救世主になるだろう。

 意表を突くような調理法も生まれるかも。

 しかし……。


「増え過ぎてもムダになっちゃうな」

「ここに植えたものは、私達しか利用しませんからねえ」

「半分サイナスさんとこに持ってこうか」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」


 食べちゃっても開拓地の水路伸びたとこに植えてもいい。

 有効に活用してもらおう。

 灰の民の村へ。


          ◇


「サイナスさん、おっはよー」

「おはようぬ!」

「やあ、待ってたよお肉」


 ニコニコのサイナスさん。


「肉のおかげで弁当がよく売れるんだ」

「わかる」

「しかもユーラシアが持ってきてくれる肉だから、利益率が高い」

「わかる」


 実によくわかるけれども、ウルトラチャーミングビューティー御一行様よりお肉の方が歓迎されているのは、もう一つ納得いかないとゆーか。


「最近お肉運搬係に成り下がってる気がする」

「成り下がってるなんてことはないよ。立派なお肉調達係だと思ってる」

「あれえ? どっちにしてもお肉運搬係から脱出できないぞ?」


 アハハ、まあいいけれども。


「クレソンとお肉、水魔法『アクアクリエイト』のケイオスワード文様ね」

「水魔法のスキルスクロールは、月二〇〇〇本の生産だったな?」

「そーだけど、行政府は大階段の上にあるからいっぺんに運んで納めるの大変なんだよね。一〇〇本単位くらいで、毎回輸送隊がレイノスに到着するたびに納めりゃいいと思う」

「伝えておこう。盾の魔法も同じだな?」

「同様にお願いしまーす。あ、注意点があるよ。欲張って月三〇〇〇本以上のスキルスクロール生産の仕事は請けるなって、アレク達に一応言っといてね。帝国の貿易商さんがいると、増産してくれって話が出るかもしれないんだ」

「ドーラのスキルスクロール生産量が大きくなると、帝国に警戒されるかもしれないということだな?」

「うん。パラキアスさんには、今の生産出荷本数でも多いって言われたくらいなんだ。まあ合計三〇〇〇本が生産限度だと思わせとけってことで」


 さて、いいだろう。

 灰の民の村での用は終わり。

 

「サイナスさん、じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「やあ、チャーミングなユーラシアさん。いらっしゃい」

「ポロックさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 ギルドにやって来た。

 角帽のポロックさんは大体いつもゆったり構えている。

 感情が安定しているからかな。

 ヴィルもポロックさんが好きみたいなのだ。


「デミアンと妹のアグネス来てないかな? このくらいの時間なら会えることが多いみたいなこと、ダンに聞いたんだけど」

「ああ、つい先ほど来たところだよ」

「やたっ! タイミングバッチリ!」


 ちょっと不思議そうなポロックさん。

 あたしとデミアンはあんまり絡みないからな。


「デミアンさんに用なのかい? どうもあの二人、ギクシャクしているというか……」

「付き合いたてのカップルみたい?」

「ハハッ。その割には毎日ギルドにいるんだけどね」

「最近毎朝ギルドにいるのか。素直になれない兄妹のすれ違いという名の喜劇なんだ」


 ポロックさんに説明する。


「デミアンは単純にシスコンなんだよね。妹アグネスを構いたいんだけど、煙たがられてる感じ」

「うん、わかるね」

「アグネスは氷魔法使いでさ。まだ冒険者になって三ヶ月も経ってないくらい。初めデミアンの転送先使って修行してたはずなんだけど、その後塔の村へ行ってたんだ。多分お兄の干渉がうざったくなったから」

「ほう?」

「で、塔の村の冒険者とパーティーを組んで、ダンジョンに潜ってたりしてたんだよ。けど段々考え方の違いみたいのが出てきたみたい。アグネスが入れてもらってたのが、一〇〇%生活のために冒険者やってるパーティーで」

「ふうん。生活は大事だと思うけどねえ」


 家庭持ちのポロックさんはそう思うだろう。

 いや、あたしだって冒険者はお肉とおゼゼのためにやってるけどな。


「まーアグネスは、夢と希望を追って冒険者になった子なんだ。レベルと知識が欲しいんだって。簡単に言うと、お兄デミアンみたいな華麗な冒険者になりたい」

「なあんだ。じゃあ問題ないんだね?」

「ないない。あたしが知ってるのは、アグネスが塔の村で活動してた時までなんだ。実家に帰ったってことは、デミアンの教えを乞いたいって考えになってるはず」

「いい傾向だね。普通にデミアンさんに教えてもらえばよさそうなものだけど」

「でもアグネスは率直に言えないんだよ。何でわかんないのお兄察しろって思ってるんじゃないかな。デミアンはデミアンで機嫌の悪そうな妹を迂闊に扱えないから、ギルドに連れてくるんだと思う」


 大きく頷くポロックさん。


「状況はよくわかったよ。となるとユーラシアさんの役割は?」

「そんな二人を玩具にしたいというかおちょくりたいというか指差して笑いたいというか? どーもあたしは口下手だからうまく言えないけれども」

「ハハッ、つまりあの二人の仲立ちをするんだね? 食堂にいると思うよ」

「最近のデミアン達の活動はどうなってるか、ポロックさん知らない?」

「予定のなさそうな冒険者と共闘しているようだよ。マウルスさんや『ネクストジェネレーションズ』のノブさんを誘っていたのは知ってる」

「『ネクストジェネレーションズ』っていう呼び名は定着してるんだ? あたしは後輩ズって呼んでるけど」


 まあ言い続けてりゃ定着もするか。

 デミアンはどうやら、レベルの高くないアグネスのためのトレーニングに良さそうなエリアを使いたいってことみたいだ。

 だから他の『アトラスの冒険者』の転送先を借りたいんだろうな。

 アグネスと二人だと気まずいってこともありそう。


「よーし、遊んでやろ」

「遊んでやるぬ!」

「ほどほどにね」


 ギルド内部へ。

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