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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1609話:非常識が当然

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 ゼムリヤで村人の皆さんを交えて、お肉たっぷり汁を十分に堪能したあとに帰宅。

 毎晩恒例のヴィル通信だ。


「今日はお肉の日だったんだ」

『今日『も』だろう?』

「そーとも言える」


 いや、言うほどあたし達はお肉ばかり食べてるわけじゃないよ?


『ユーラシアは最近、村でパンを買っていかないだろう? 作ってる時間があるとも思えないし』

「本当だ。意識してなかったな」


 あたしが単独行動してる時でも突発事態となることがある。

 あたしの主人公体質を理解しているうちの子達は、すぐに出かけられるような態勢を整えてくれている。

 どうせまた何かに巻き込まれてくるぞと思っているので、留守の時でも大して複雑な作業はしていないのだ。


 うちの食事をメインで担当してくれているクララも同じ。

 食材はあるのでパンは買わないし作らない。

 だから家で食べる御飯は具だくさんスープや炒めものが多い。


「気がついたら家であんまりパン食べなくなってたな」

『そうだろう?』

「パンの代わりにお肉食べてる感じ」

『野菜も食べろよ?』


 食べてるんだって。

 スープには野菜・野草がてんこ盛りだし、毎朝凄草一人一株ずつ食べてるし。


「今日、久しぶりにゼムリヤ行ったんだ」

『ああ。ゼムリヤの魔物退治用の人員を塔の村で鍛えた話の続きか。かなり仕上がったということだな?』

「うん、一ヶ月にしては立派だった。もちろんゼムリヤへはリリーと一緒に行ってさ。爺ちゃん子リリーがメルヒオールさんとぎゅーしてたから、あたしも負けずにヴィルをぎゅーした」

『どうでもいい情報を挟んでくるなあ』


 アハハと笑い合う。

 どうでもよくはないけどね。

 ヴィルはいい子。


「魔物退治要員三人が中級冒険者レベルになったよ。レベルよりも辺境侯爵家の家来として恥ずかしくないようにって感じで鍛えられてたな」

『リリー皇女の従者だという人にか?』

「さすがにリリーの従者だけあって、できる人なんだよね」


 フィフィのお付きのマテウスさんもできる人だ。

 帝国にはああいう人がたくさんいるのかなあ?

 ドーラでも養成して欲しい。


「今日はお肉の日だったんだ」

『さっきも言ってたじゃないか。繰り返しのエンタメ?』

「大事なことは何度でも繰り返し言うのがモットーだね。魔物退治要員がどれくらいの腕になったかを確かめる目的で、魔物退治に行ったんだ。この前も行った聖モール山っていう、精霊コユキが住んでるとこ。山っていうか山脈だな。ゼムリヤと帝国本土の境になってる」

『ふむ? 塔の村で十分鍛えられているんだろう?』

「ダンジョンとフィールドは感覚違うしね。実際の勤務地でどうかっていう検証は必要だよ」


 慣れさせるって目的もあったんだろうけど。


「メルヒオールさんによると、聖モール山も標高の高いところには結構強い魔物いるらしいんだ。でも住民に迷惑かけそうな魔物、低いところに住んでるやつはあんまり強くなくてさ。試しにやっつけようっていう」

『ふむ?』

「さっきから何の疑問形なの? 美少女トークが気に入らないの?」


 サイナスさんは不届きだな。


『いや、違うんだ。要するにユーラシアは、魔物退治要員の実力を見るためについて行っただけなんだろう? 君が主役のイベントじゃないじゃないか。いきなり肉の話になるのかと思ったら、魔物退治の方を掘り下げるみたいだからどうしてかなと疑問に思ったんだ』

「おおう、サイナスさん優秀」


 思ったよりちゃんと聞いてくれているんだな。

 あたしが反省。


「ちょっとしたハプニングがあったの」

『またとんでもない事態になっちゃったわけか?』

「『また』という表現に、あたしに対する愛情が溢れているけれども」

『溢れてないよ。そういうのいいから!』


 せっかちだなあ。


「とんでもないってほどでもないな。人食いハンミョウっていう魔物の幼虫に、魔物退治要員の一人が捕まって食べられかけたくらい」

『大した事件じゃないか』

「事件とゆーほどでもないんだってば。パワーは強めだけど弱点も多い、どうってことない魔物なんだ。食べられかけた魔物退治要員の子一人でも、落ち着いて対処してりゃ十分勝てたくらいの。メルヒオールさんも勉強のために一度攻撃食らってみろって態度だったな」

『教育がスパルタでえぐい』


 最近えぐいとえぐくないの境界がよくわからん。

 魔物に食われかける体験はえぐいよーな気が、あたしもしないことはない。

 ただ言葉にしちゃうとえぐいかもしれないけど、実際にはそーでもなかったしな?


「ま、魔物に食われかけるなんて日常茶飯事はどうでもいいんだ。一つおかしなことが発覚してさ」

『君のやってることは何から何までおかしいことを把握しような。何だ?』

「あたしの使ってるパワーカードに『スナイプ』ってのがあるの。物理攻撃の遠隔化が可能になる、使いでのあるカードなんだけど」

『ふうん、珍しい話題だね』


 サイナスさんに装備品のパワーカードの効果の話をするのは初めてかもしれない。


「一〇ヒロくらいなら届くようになるから、遠くにいるおいしそーな魔物の首をひょいっと狩るのに便利だと思ってたんだよ」

『今聞いた限りでは、レベルを上げて物理で殴る話よりはまともだな』

「レベルを上げて物理で殴るのは、揺るぎない勝利への方程式だとゆーのに」


 まったく何を勘違いしてるんだか。


「そしたら狙いもつけずに一〇ヒロの距離で攻撃が当たるはずないだろ。あたしのやってることは非常識だみたいな謂れのない中傷を受けた」

『自慢ではないんだよな? ユーラシアなら当然だろう。ところで肉の話は?』

「いろんな草食魔獣が住んでるところなんだ。カモシカ、ウサギ、クマ、リスなんかを食べ比べられたから幸せ。カモシカが一番おいしかったかな」


 しかしサイナスさんが素早くお肉の話に転換したのは違和感があるんだが?


「……ひょっとして技が当然じゃなくて、あたしの非常識が当然ってことだった?」

『つまらないことに拘泥しないのが君のいいところだ』


 難しい言葉で誤魔化されたぞ?


「まーいーや。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日はアレク達を連れてガリアだ。

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