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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1554話:陛下の意思を優先させるには

「コマツナギの一種ですね」

「有用な植物なんだ? 食べられるの?」

「いえ、藍が取れるんですよ」

「愛は間に合ってるかな」


 アハハと笑い合う。

 今日は午後三時以降にルーネも連れてガリアに行く予定だ。

 時間があるから、魔境ピクニックを楽しむことにした。

 うちの子達とのふれあいの時間も大切だからね。


 アトムが首をかしげる。


「染料でやすか。イマイチピンとこねえ」

「まあねえ。食べられるものほどわかりやすくはないもんな」


 とはゆーものの、ピンクマンのピンクやデミアンの黄色は目立つ。

 何で染めてるんだか知らんけど、お金かかってるなあっていう気はする。

 ドーラで実用服は、生成りかせいぜい地味な草木染めばっかりだ。

 染料が安くなると楽しいよなあ。

 ファッションが進歩するのは間違いない。


「でも優先順位は低いかな。場所だけ覚えておこうか」

「はい」


 今はどうしても食べられるもの優先になる。

 いや、食用でもなー。

 最近魔境に来るたび、クララがちょいちょい食べられる山菜のようなものを見つけてくれる。

 が、生産や栽培に向かないものや、生産性に劣るもの、季節がごく限定されるものは、やっぱり後回しになるんだな。

 わかっちゃいるけど、即戦力としてすぐ採用できるものはなかなかないもんだ。


「染料と言えば、西域のどっかでベニバナ作ってるって話だったね」

「レッドカラーね?」

「そうそう、赤い染料になるやつ。名前がまんまだから覚えてる」

「ベニバナは食用油も取れますから、大変有用ですよ」

「油も取れるのか。いいやんけ」


 複数用途のあるものは栽培する価値があるな。

 効率にもよるが。


「ワイバーンだぬ!」

「いつの間にかワイバーン帯まで来ちゃってたか。た~ま~ご~お~と~せ~」

「ぜひ私に攻撃させてください!」

「『アビゲイルホームラン』ね?」

「『アビゲイルホームラン』の火力はあたしも見てみたいな」

「戦力としての把握じゃなくて、見世物的なやつでやすね?」

「そーだ、見世物だ! クララ先生の一発ネタ、とくと拝見しようじゃないか!」


 レッツファイッ!

 ダンテの豊穣祈念! クララのアビゲイルホームラン!


「おお、すげえ!」

「すごいぬ!」

「グレイトね!」

「えへへー」


 ワイバーンがぶっ飛んでったぞ?

 身体の小さいクララからこの技が出るとインパクトはバツグンだなあ。

 一見の価値ありのスキルでした。

 おっと爪は回収しておかねば。

 遠くまで行かなきゃいけないのが面倒だな。


「卵ドロップしてやすぜ?」

「割れなくてよかった。王様に食べさせてやろう」


 夕御飯に一品添えられるな。

 クララがためらいがちに言う。


「先ほどの……リモネスさんが去り際に仰られた言葉ですが」

「うん」


 コンスタンティヌス今上帝の二通の遺言書が存在し、あたしが持っていることをプリンスルキウスには伝えておけという内容だ。

 ちょっとリモネスさんの意図がわからない。


「姐御、すぐに行政府に行って伝える手はあったでやしょう?」

「あった」

「迷ってるんで?」

「ボスらしくないね?」


 迷っているとゆーのはちと違うんだが。


「リモネスさんがあんなこと言ったのは何でかなーと思って。あんた達の推理に期待しようじゃないか!」

「大いに期待するぬ!」


 クララが首をかしげる。


「リモネスさんは、ルキウス様に有利になるようなことはしないですよね?」

「明らかにアンフェアなことはしないと思う」

「大体姐御が手紙持ってること知ってたって、有利にならねえじゃねえか」

「それな?」


 アトムの言う通りだ。

 遺書があることをプリンスが知ってようが知らなかろうが、内容自体に変わりはないのだ。

 あたしだって改竄したり握り潰したりする気は、これっぽっちもないわけであるし。


「だってもう決まってる未来じゃん? 手紙に書かれてる名前は変わんないんだから。まー皇帝後継者候補達が従うとは限らないけどさ」

「決まってねえんじゃないでやすか?」

「えっ?」

「書かれてるネームがオンリーワンとは限らないね」

「複数名が書かれてることもあり得るってこと? でも混乱するだけのような気がするな。派閥同士で亀裂ができると根深くなっちゃうぞ?」


 皇帝陛下は国のためを思ってるようだ。

 曖昧なことはしないと思うぞ?

 いや、待てよ?

 リモネスさんは、皇帝後継者に関する重大な決定について書かれていると断言できる、と言っていただけだ。

 必ずしも直接後継者を指名した内容ではない?


「ヒントなのかもしれません」

「ヒント? 手紙に何かのヒントが書かれてるってこと?」

「いえ、リモネスさんの意図が、です」

「わからないのでクララ先生の解説講座開幕だよ!」

「パチパチだぬ!」


 拍手じゃなくて口で言うのな。

 面白いけど。


「遺書だけで次代の皇帝が決まらないというのは、私も同感です。決まっているのでしたらユー様の言う通り、ルキウス殿下に伝えることに意味がないですから」

「だよねえ。続けて」

「リモネスさんは、おそらく『サトリ』の能力でだと思いますが、まだ後継者が決まっていないということを知ったのでしょう。そして決まっていないということ自体をルキウス殿下に知らせるべきだと考えた」

「何でだろ? プリンスに教えたって得になるわけじゃないし」


 そもそも得になるようなことはフェアじゃないから、リモネスさんはやらないだろうし。


「メッセージだと思います」

「メッセージ?」

「ルキウス様と周辺のドーラ首脳に対する。こういうことを知らせてくれるだけの支持が、ルキウス様にはあるんだぞという」

「根拠として弱いな? でも何かのメッセージってのはありそう。あたし達にわかんなくてもプリンスや行政府に伝わるのかもしれないし」


 特に『周辺のドーラ首脳に対する』ってのはありそう。

 リモネスさんはパラキアスさんが悪いやつって知ってるしな?

 リモネスさんも割り切って考えるタイプだから、パラキアスさんがどう蠢動しようが、プリンスに味方したわけじゃないと思ってそうだし。

 というかフェアかフェアじゃないかよりも、陛下の意思を優先させることが大事と考えたのかも知れない。

 遺書が存在することをプリンスに伝えることは、どうやら陛下の意思にそぐうらしい?


「よし、明日行政府行ってくる。お腹減った。お昼にしよう!」

「「「了解!」」」「了解だぬ!」

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