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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第155話:女っぷりが上がったから

 フイィィーンシュパパパッ。

 ギルドから帰ったあと、チュートリアルルームにやって来た。


「あら、ユーちゃんいらっしゃい」

「バエちゃーん、明日お肉持ってくるから一緒に食べようよ」

「やったあ!」


 小躍りしてるよ。

 動きにキレが増してきたような気がする。

 本当にお肉好きだなー。


「クエストで帝国本土の山の中に行ってさ。コッカーっていう大きめの鳥の魔物がいたの」

「明日はそのコッカーの肉を持ってきてくれるの?」

「予定ではね。これがすごく美味い肉質なんだ。薄切りして焼いて岩塩かけて食べると最高」

「今まで持ってきてくれたお肉も皆おいしかったわよ?」

「素の旨みという面ではこれまでで一番だと思う。ただちょっと硬めの肉なんだよね。調理法は限定されるかな」

「えー本当? 困っちゃう」


 バエちゃんがかなりの高速でクネクネしているけど、別に困りゃしないだろ。


「ユーちゃんの今のクエストは? 順調?」

「おっ、自分の給料に関わるあたしの働きは気になるかな? 順調だよ。開村したばかりの村の食料事情に関わる案件だね。時間をおいてお肉を調達しろってやつでさ」

「ユーちゃんの一番得意なやつじゃない」

「十八番ともいう」


 アハハと笑い合う。


「チュートリアルルームはいつも人あんまり来ないよね? 暇でしょ?」

「ええ。一日誰も来ない日もあるわね。まあ最初に『アトラスの冒険者』についての基礎的な説明とテストモンスターとの試闘が終わったら、あとはスキルスクロールを買うくらいしか用がないから。ユーちゃんみたいにしょっちゅう来てくれる人は、他にいないわ」


 かもしれないな。

 でもバエちゃんに教わったまよねえずとけちゃっぷは、ドーラの食文化の発展に貢献すると思うのだが。

 異文化導入の目的で来てる冒険者は、他にいないか。


「楽しておゼゼの稼げる、いい仕事だねえ」

「でも最近、スクロール買ったり値段確認しに来てくれる人が明らかに増えたの。どうしてだろう?」

「そりゃあ、バエちゃんの女っぷりが上がったからだよ」

「えっ?」


 バエちゃんポカンとしてるけど、全然意外じゃないんだぞ?

 自分じゃわからないのか。

 さもありなん。


「きちっとした服着てカツラちゃんと着けてるじゃん? 栄養と運動が足りてるから肌艶もいい。表情も豊かになってるよ」

「そ、そお? 私、変わってるのかな?」

「自信持ちなよ。モテてるんだぞ」


 ハハッ、嬉しいのか照れてるのか。

 クネクネが高速化し、そして止まる。


「ありがとう、ユーちゃんのおかげよ」

「バエちゃんが頑張ってるからだよ」


 こんなところにずっと閉じ込められてりゃストレスも溜まるだろう。

 あたしじゃとても耐えられんわ。

 よくやってると思うよマジで。


 ……そろそろ頃合いだろうか。

 バエちゃんがこっちの世界の人じゃないと気付いた時から、いつかは聞かなければと考えていた質問をする。


「バエちゃんはさ、もしこっちの世界にいい人ができたとしたら、こっちで暮らす気はあるのかな?」


 バエちゃんは結婚願望はあるようだからな。

 『アトラスの冒険者』のメンバーは、皆優良物件だと思うよ。

 これまで見せたことのないような真剣な顔で悩んでいるバエちゃん。


「難しいわ。でもそっちの世界で暮らすのも悪くないんじゃないかと思うの。もし故郷かパートナーかの選択を迫られたら、状況次第ではそっちを選ぶんじゃないかな」


 言質は取った。

 何故こんなことを聞いたのかと問われても、本当にカンとしか言いようがないのだが。

 強いて理由を挙げるなら、『アトラスの冒険者』なるシステムを信用していなかったから、ということなのだろう。


 あえて何でもなさそうなフリをしてバエちゃんに答える。


「ふーん、まあどうでもいいけど」

「ひどーい」


 アハハと笑い合う。

 まーいろんな未来を夢見るのも楽しいんじゃないかな?

 考えるだけならタダだよ。


「じゃあ、明日は楽しみにしててね」

「うん、待ってる」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 ――――――――――四二日目。


 日課を終えてから、一ヶ月ぶりにスライム爺さんのところへ行く。

 素材『スライムスキン』を取り置いて、安く売ってくれるという約束があったから。

 かなり涼しくなってるかと思えば、さほどでもないな。

 あんまり気温の変化がない土地なのかもしれない。


「こんにちはー」

「おお、お主らか。久しぶりじゃの。ふむ、見るからにやり手の冒険者といった雰囲気を漂わせるようになった」


 大先輩にこう言われると嬉しいなあ。


「アルハーン平原の可住域を増やす計画で、精霊使いが大活躍したという話を聞いたぞ。お主らのことじゃな?」


 こんな山奥で仙人モドキな暮らしをしてる爺さんとこまで話広がってるのかよ。


「うん。ちょっと張り切っちゃった」

「呆れるほど成長が早いの。たった一ヶ月でそんなに強くなるはずがないと常識で考えていたが、精霊使いなどそうそうおるわけもないし」

「実は精霊使いはもう一人いるんだよ。西の街道の果て、開拓されたばかりの塔の村というところに」


 エルも有名な冒険者になるかもしれんし、今の内に宣伝しとこ。

 スライム爺さんが重そうな眉を跳ね上げる。


「ほう、レアな『精霊使い』の固有能力持ちが二人。これも時代の変わり目なのかの」


 風雲児ってやつ?

 何だかカッコいいじゃないか。


「そーいえばレイノスで物価が上がってるみたいだって聞いた。『スライムスキン』売るんだったら、もう少し高く買ってもらえるかも」


 だがスライム爺さんは首を振る。


「いや、この辺りは食べられる野草も多い。特に生活に困っているわけではないでの。販売価格を上げる気はないのじゃ」


 見上げたもんだよ屋根屋のなんとか。

 スライムの飼育も半分趣味みたいなものなんだろうな。

 品種改良も大変だったろうに。

 こういう社会の役に立つ特殊なことやってる人は、ぜひ社会的金銭的に報われて欲しいっていう気持ちがあたしの中にはあるんだけど。


「では、あたし達は帰りまーす」

「また『スライムスキン』は取り置いておこうか?」

「いや、もう大丈夫だよ。ありがとう!」

「うむ、達者でな」


 ちょっと寂しそうな顔をするスライム爺さん。

 もうあたしのプリティフェイスが見られないと思ったからだろうか?

 多分またいつか来るよ。

 転移の玉を起動し帰宅する。

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