第152話:『ゴールデンラッキー』とペペさんにマジ期待
武器・防具屋さんからもう一つの店へ。
さて、問題はここだ。
いつもの通り店主がつっぷして寝てるし。
紫のローブがシワになるぞ?
つば広の魔女っ子帽子が変形しちゃうぞ?
「たのもう!」
「ふあっ?」
ペペさんが飛び起きる。
化粧の薄い日は見た目まるで幼女だ。
こんなんが低く見積もってもドーラ有数の大魔道士だとゆーのだから、世の中不条理だ。
「あっ、ユーラシアちゃん久しぶり! 待ってたの」
「ごめんね。この前ギルド来た時ペペさんいるの知ってたんだけどさ。ここのところおゼゼが寂しかったから起こせなかったんだよ。今日はようやくある程度お金できたから」
「スキルができたことわかってたの? 気を使わせちゃってこっちこそごめんね。……あれ、その子は?」
「紹介しに来たんだ。新しい仲間のヴィルだよ。百獣の王のポーズ!」
「がーおーぬ!」
「か、可愛い!」
ペペさんが駆け寄ってくる。
幼女もどきと幼女悪魔が見つめ合う何これなシーン。
あっ、ピンクマンがこっち見てる。
羨ましかろう。
「高位魔族ね?」
「そうぬよ?」
「ぎゅっとしてもいい?」
「いいぬよ?」
ペペさんがヴィルを抱きしめる。
「ふおおおおおおおおお?」
ぎゅーするとダイレクトに感情を摂取できるんだろうなあ。
よしよし、よかったね。
でも声は何とかならんものか。
驚いてる人がいるよ。
いや、ペペさんが起きてることに驚いてるのかもな?
「き、気持ちいいぬ……」
「ヴィルはね、幸せの感情が好きな悪魔なんだよ」
「とってもいい子ね」
「とってもいい子ぬよ?」
「これから時々ギルドに連れてきてやろうと思ってるんだ。ペペさんも見かけたら可愛がってやってよ」
「わかったわ」
「よろしくお願いしますぬ!」
ペペさんも相当ヴィルを気に入ったみたいだな。
ヴィルの頭を撫で回してら。
ヴィルもニコニコしている。
「さて、商談といきますか。売り物があるんでしょ?」
「あるわよ。今日のはちょっとすごいんだから」
ペペさんがニッと不敵な笑みを見せる。
相当自信がありそうだ。
でも今までペペさんがあたしに売った『デトネートストライク』にしても『実りある経験』にしても、すごいを越えてヤバかったじゃん。
あれら以上に自信があるんだとかなりだな。
「本日のユーラシアちゃん向け販売品はこれっ! 最強魔法『デトネートストライク』のパワーアップ権!」
「……え?」
てんで予想外のものキター!
「ケイオスワードの文法を整理することによって、『デトネートストライク』の効率化に成功しました! コスト一緒で従来比二割のパワーアップとなっております! お値段は三〇〇〇ゴールド! さあ、買った買った!」
「まあ、買うけど」
「そうよね! ユーラシアちゃんがアートでロマンでドリームなものを理解しないはずがないものね!」
えらくテンション高いけど、あたしは引いてるからな?
ペペさんが自信があるってのはつまり、単にスキルを作成するより効率化の方がよほどテクニカルってことなんだろう。
「これってやりようによってはまだ威力上がったりするの? 例えばアイテム消費してもっとコストつぎ込むとか」
ペペさんが悲しげに首を振る。
「理論上の魔力の凝縮限界にすごーく近付いてるの。術者の魔法力が上がれば威力はもちろん上がるけど、コストが上がっても効率の向上はこれ以上ムリだと思う。せっかくユーラシアちゃんが期待してくれてるのに……」
「いやいやいやいや、期待はしてないけど」
「えっ? でも二つ返事で買ってくれたじゃない」
『こんなネタ魔法はあたし以外買うはずないじゃん』なんて本音が漏れるとペペさん泣いちゃいそうだしな。
適当に意訳すると……。
「ペペさんを信じてるからだよ。精霊使いユーラシアが伝説ロードを歩むべく作ってくれたスキルなんでしょ? 買うしかないじゃん」
「うええええーん、ユーラシアぢゃああああん!」
結局泣かせてしまった。
はいはい泣かない。
三〇〇〇ゴールドね。
「じゃあこれ、どうぞ」
「あ、やっぱりスクロールなのか。はい、ダンテ」
「汎用のスキルスクロールと違って、適合者じゃないと開けないのよ」
選ばれし者しか開けないスクロール?
……格好いいじゃないか。
乙女心がくすぐられる。
「ねえ、ペペさん。あたししか開けないスクロール、あたしにしか使えない魔法作ってよ。なかなかアートでロマンでドリームだよ!」
「……それもそうねっ!」
ハハッ、乗ってくれたぞ。
実に楽しみだなあ。
「じゃあユーラシアちゃんの詳しい能力値教えてくれる? 入口のパネルのところへ行きましょ」
何だよピンクマン、羨ましそうな目で見んな。
ペペさんがいるからだな?
誘ってやるか。
「ピンクマンもおいでよ」
「うむ、すまんな」
おーおー嬉しそうに。
サフランが泣くぞ?
デートがどうだったかはあとで聞かせてもらうからな?
エントランスへ。
「ポロックさん。フルステータスパネル貸してくださる?」
「よろしいですけど、何に使うんです?」
「ユーラシアちゃんの今のステータスを見たいの」
「ほう、俺も興味あるな」
青っぽいパネルに掌を当てると文字が浮かんでくる。
「全体的に高いステータスだけど、運のデタラメな値はどういうことだい? パネル壊れてないよね?」
「あっ、すごいすごい! 固有能力が四つもある!」
「四つ?」
あれ、増えてるぞ?
「『自然抵抗』『精霊使い』『発気術』『ゴールデンラッキー』か。属性魔法系なしで四つの固有能力持ち? そんなことがあるとは……」
「俺もこんな固有能力欄見たことないねえ……」
ピンクマンとポロックさんが呆けたように呟く。
「初めチュートリアルルームで調べた時、三つって言われたんだけどな。いつの間にか『ゴールデンラッキー』が加わってる」
固有能力って増えることもあるんだな。
『ゴールデンラッキー』は、名称の通りメチャメチャ運がいい、だそうな。
運のパラメーターが高いと知った時に気付くべきだったのかも知れないけど、固有能力が増減するとは思わんもん。
「ユーラシアちゃん、これ余裕で差別化できるわ。すごくすごいスキルが作れるのは間違いないけど、ちょっとアイデアが思い浮かばないから、ゆっくり考えさせてね」
「うん、マジで期待してる」
正直、ペペさんにマジ期待するのは初めてだ。
本人は知らんと思うけど。




