第150話:カード交換で強くなった気がする
「ヴィル、聞こえる?」
寝る前に赤プレートでヴィルと通信してみた。
こういうのも悪くないじゃないか。
ヴィルの嬉しそうな声が聞こえてくる。
『よく聞こえるぬ! 感度バッチリだぬ!』
「元気してた?」
『元気ぬよ。御主人が赤プレートを持っててくれれば、わっちはいつも元気だぬ!』
よしよし、いい子だな。
「ここのところ何か変わったことあったかな?」
『昨日、パラキアスが聖火教の礼拝堂の大祭司と会って、かなり長い時間話してたぬ』
「ミスティさんと?」
ともにドーラの実力者であるあの二人は近い関係だったのか?
じゃあドーラの主だった情報は聖火教にも流れると考えていいから、聖火教が孤立することはない。
逆にパラキアスさんは聖火教が重要と見ているのかもしれないな。
パラキアスさんはドーラ独立派だから、帝国であんまりいい扱いを受けていない聖火教にシンパシーを感じているのかも。
いや、パラキアスさんみたいな現実主義者にシンパシーなんてないな。
利用できるとか、移民としてドーラに来ないかなくらいの感覚だろ。
『でも話の内容まではわからなかったぬ。ごめんなさいぬ……』
「何言ってるの、十分だよ。ヴィルはよく働いてくれてる。危ないから欲張ってその二人に近付いちゃダメだからね」
『わかったぬ!』
せっかくだから疑問に思ってたことを聞いておく。
「ヴィルは夜どうしてるの?」
『普通にあちこちを偵察しているぬよ?』
「寝てないんだ?」
『わっちは寝なくても平気なんだぬ』
ふーん。
以前バエちゃんところで酔って寝ちゃったのは、レアなケースだったのかな?
まあヴィルには家もあるし、心配しなくても大丈夫か。
「じゃあ通常の偵察任務に戻っててね。疲れたら休むんだよ」
『大丈夫だぬ!』
「あたしは寝るね。おやすみ」
『おやすみなさいぬ』
あたしがこの赤プレートを持ってることが、ヴィルにとって重要なんだな。
繋がりを感じられて嬉しい気がする。
◇
――――――――――四一日目。
「カカシー、おはよう! 行ってくるね」
「おう、元気でな」
畑番の精霊カカシに声をかけ、今日はまずアルアさん家だ。
強力なパワーカードが手に入ると思うとテンション上がるわ。
フイィィーンシュパパパッ。
「アルアさーん、おっはよー! カード交換しに来た!」
「おや、そうかい。何と交換する?」
「昨日の夜うちの子達と相談して、もらうカード決めたんだ」
『あやかし鏡』『スペルサポーター』『ハードボード』を受け取り、残り交換ポイントは四六三となる。
「もういいのかい? まだかなりポイント残ってるだろう?」
「うーん、欲しいパワーカードもあるんだけどね。この前の魔物掃討戦の時、『寒桜』揃えなきゃいけなくて大変だったから、ポイント多めに残しとくことにしたの」
「意外と堅実だね」
「この『あやかし鏡』ってカード、メチャクチャすごい効果だねえ。ビックリした。これ使いこなせれば、パワーカード使いとして一人前な気がする」
「かかかっ、一人前かい」
アルアさんが少し頭を傾け、何かを考えるようにしている。
「『あやかし鏡』はロブロ師の伝える正統なカードではないんだよ。しかしかなり精緻に組み立てられたカードで、製作側もこれを作れれば一人前と言えるね」
やっぱカードは作る方にとっても難易度に差があるんだな。
「外行って試してきまーす!」
◇
「雑魚は往ねっ!」
色々試してみて、かなり『あやかし鏡』のクセを掴んだ。
自分の行動を前もって二回指定しておく感じだ。
ヒットポイントやマジックポイントの自動回復は一ターンに一回なので、倍にはならない(残念)。
攻撃の指定順には注意が必要だ。
例えば溜め技の『雑魚は往ね』のあとに『ハヤブサ斬り』とした場合、『雑魚は往ね』『ハヤブサ斬り』が連続して出る(多分)。
一方『ハヤブサ斬り』のあとに『雑魚は往ね』とした場合、順当にダンテの次に『ハヤブサ斬り』が出、全ての行動の最後に『雑魚は往ね』が出る。
逆に正の速度補正技である『勇者の旋律』と通常の『乙女の祈り』では、先制で『勇者の旋律』が出、本来の自分の順で『乙女の祈り』が出る。
『あやかし鏡』は誰が装備したとしてもそれなりに効果がありそうだが、やはりメイン火力であるあたしが『あやかし鏡』を装備するのが正しいと思われる。
一応こういうカード編成にしてみた。
あたし……『スラッシュ』『アンチスライム』『シンプルガード』『オールレジスト』『ポンコツトーイ』『誰も寝てはならぬ』『あやかし鏡』
クララ……『マジシャンシール』『エルフのマント』『逃げ足サンダル』『ポンコツトーイ』『寒桜』『誰も寝てはならぬ』『光の幕』
アトム……『ナックル』『サイドワインダー』『ルアー』『厄除け人形』『ポンコツトーイ』『誰も寝てはならぬ』『ハードボード』
ダンテ……『火の杖』『プチエンジェル』『ボトムアッパー』『ポンコツトーイ』『誰も寝てはならぬ』『癒し穂』『スペルサポーター』
予備……『寒桜』×三『シールド』
あたしはレベルが一〇を超えたあたりから、良からぬ状態異常を食らったことないのだ。
運がいいせいか『オールレジスト』のおかげかはわからないけど。
『寒桜』の麻痺無効は侮れないが、上がるパラメーターが魔法力なのは物理攻撃がほとんどのあたしにとってあまり恩恵がない。
よってこれを『あやかし鏡』に置き換えた。
嫌らしい魔物がいた場合、先に『ハヤブサ斬り』などで倒しておいて、最後に『雑魚は往ね』で一掃する戦術をイメージしている。
アトムの『シールド』を『ハードボード』に置き換えるのは当初の想定通り。
回避率よりも確実に被ダメージを減らすことを目的とする。
ダンテの『寒桜』を『スペルサポーター』に置き換え、マジックポイントリソースを潤沢にして強力な魔法使いとしての運用を視野に入れ、さらに沈黙無効としておく。
今のところダンテは『実りある経験』の係で魔法使いらしいことさせてないけど、強力な魔物を相手にしなきゃいけなくなるとそうも言ってられないしな。
『光の幕』をクララに、『スペルサポーター』をダンテにというのは、後衛二人を沈黙無効にする細かい配慮だ。
「さて、これでもう少しアイテム採取と経験値稼ぎしていこうか」
「「「了解!」」」




