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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第148話:話をまとめた

 この前の三村合同焼き肉親睦会の交渉でも思った。

 黒の民は動き出すのがどーも遅い気がしてる。

 カラーズ交易が始まってからも様子見姿勢が強いと乗り遅れるぞ。

 この際だからサフランとクロードさんによーく言い聞かせておかねば。 


「サフランの酢の完成度は商業レベルでしょ。あれを売るんだよ! 黒は酢以外だと呪術グッズくらいしか売るものないし、呪術グッズがカラーズの一般人に売れると思う? 他人のもの買っといて自分のもの売らなきゃ、おゼゼが出て行く一方だろ。黒の民が貧乏になっちゃうんだぞ?」


 目に見えてクロードさんとサフランがグラグラしだす。

 何だそれ?

 黒の民特有の動揺のジェスチャーかな?

 見てて愉快だけれども。


「水っぽい酢は狭口の縦長ガラス容器が、どろっとしてるまよねえずは広口で匙の入りやすい容器がいいと思うんだ。この辺はサフランの意見でお願い。まず試作品を作らせなよ」


 まよねえずの商業化は早過ぎるか。

 ニワトリの卵を大量に入手するとなると、白の民との提携が必要になりそう。

 保存が利くことからも、まずは酢だな。


「は、はい」

「次、カグツチさん」

「お、おう」


「黒の民は尻が重いから少々せっつくのは構わない。でもがっついちゃダメっ! 客の意見聞いてものを作って。良くて安いものなら必ずリピート注文が入る、つまり安定収入になるから。勢いで買わせると次から売れないよ」

「わ、わかった」

「とゆー観点からだと、職人か職人に近い目を持ってる人を連れてこないといけないことはわかるでしょ? 何が作れて何が作れないか、いくらまでなら赤字にならないかが判断できないんだから」

「う、うむ」

「次回は職人を同席させなよ。今日は大雑把な流れ作るだけで満足しようね」


 商売したことない人達はこれだから。

 あたしもないけど。

 まあいい、この場の主導権はあたしが握った。

 思い通りの方向に誘導したる。


「三人に言っとく」


 クロードさん、サフラン、カグツチさんを見渡す。


「カラーズ交易が始まって初期は白の民と灰の民の商品ばかり売れるけど、あまり気にしないように」

「何故だ!」


 カグツチさんが焦ったような声を出す。

 族長として早期に結果が欲しいのはわかる。

 特にスクワッターカグツチさんはせっかちだから。


「食べ物は生活必需品だからだよ。白の民のお肉とミルク、灰の民の野菜が売れるのは当たり前。工芸品や化学品が売れるのはレイノスと商売するようになってからなので、どーんと構えてどうやったらレイノスの商人呼び込めるかを考えてなさい」

「じゃ、じゃあ農産物を作った方が金になるのか?」


 クロードさんの声も上ずっている。

 あれ、黒の民は悠長に構えてるのかと思ったら、そーでもないのかな?

 スクワッターが焦ってるんで乗せられちゃってるのかも。


「あんたらが付け焼刃で農産品売ろうと思ったって、白の酪農や灰の耕作には絶対勝てない。でも農産物は収穫量増やすのに年単位で時間かかるけど、工芸品・化学品の増産は早いよ。つまり当たれば大きい。自分とこの強みで勝負するの。わかった?」

「おう」「ああ」「はい」


 カグツチさんが質問してくる。


「レイノスに売るためにはどうしたらいいか、精霊使い殿に何かアイデアはあるか?」


 まだカラーズ間交易ですら始まってないのに、もうレイノスに売る話か。

 本当にせっかちだなもー。

 もっとも赤の民と黒の民の商売は、人口の多いレイノスとの交易が始まってからが本番だろう。


「ここからレイノスに行く途中に聖火教の大きな礼拝堂があるの知ってる? 一つのアイデアだけど、あそこに店出せないかな? 巡礼者が結構来るんだ」

「巡礼者?」

「うん、でっかい建物で宿屋兼カラーズ物産販売やったらいい。今礼拝堂の人達、レイノスまで買出しに行ってるんだよ。大変でしょ? あそこで商売やったら礼拝堂からも感謝されるし、巡礼者の口コミも期待できるよ」

「「なるほど」」


 カグツチさんとクロードさんが唸る。


「もう一度言うけど、カラーズ同士で売り買いしてる内は本番じゃないよ。貧乏人同士ががおゼゼ回してるだけなんだから。発展するためには、お金持ってるところからぶんどってこないとダメ」


 全員が頷く。

 今度はクロードさんが質問してくる。


「ちなみに灰の民はどうしようとしてるんだ? 話せるところまででいいから、参考までに聞きたい」

「あたしは冒険者で村を出てるからあれこれ口出してないけど、灰の民の村には植物や土壌、気候に詳しい精霊がいるから、農産物には絶対の強みがあるんだよ」


 灰の民は精霊と共に暮らす軟弱な種族、くらいに思ってたろ?

 精霊にはノーマル人にない鋭敏な感覚があるのだ。


「だから農作物とその加工品が主になるよ」

「加工品?」

「案が出てるのは、サフランに教えたまよねえずと同じ異国の調味料であるけちゃっぷ。これは煮潰したトマトに塩を混ぜたような調味料で、多分まよねえずと同じ容器が流用できると思うんだよね。容器決まったら教えてよ。赤の民的にも同じものをだーっと作った方がコスト下げられるでしょ?」

「うむ」

「皆で儲けようよ。あたしの言いたいことはお終い。で、どうする? サフランが赤の民の村まで出向くか、赤の民の方から職人寄越してもらうか、早めに決めちゃえば?」


 カグツチさんが考えながら言う。


「……ガラスや陶器も工房はいくつもある。それぞれに得意不得意があるから、黒の民の担当者に出向いてもらった方がありがたいな」

「うん、あたしもいいと思う。サフランはどうする?」

「では、明日伺います」


 面白そうだから一つ提案してやろ。


「ピンクマンに連絡がつくなら誘いなよ」

「えっ?」


 サフランの顔が赤くなる。

 ハハッ、あんたがピンクマンを好きなのはわかってる。


「護衛に冒険者はピッタリだし、ピンクマンはかなりいろんなこと知ってるんだよ。アイデアとか交渉とか役に立つかもしれない。ピンクマンにも黒の村を変えたいって思いがあってさ。この件に一口噛めるのは嬉しいと思うから」

「で、ではそうします」


 そうしてくださいニヤニヤ。


「では、自分はおいとましよう。サフラン嬢、お待ちしているぞ」

「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」

「あたし達も帰るね」


 うちの子達を連れ、転移の玉を起動して帰宅する。

 ケチャップって現在ではほぼほぼトマトケチャップを指しますけれども、元々は中国の魚醤なんだそうで。

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