第142話:エルとバエちゃんの共通点
「拙者は自らの力を試したくてな。たまたまパワーカードを手に入れたのでこの塔で戦っていたのだ」
「オー、気持ちはわかるね。ミーもジャスト同じね」
「あっしもそうだ。ようやくカード七枚揃ったところだぜ」
アトムダンテチャグが語る語る。
冒険者になりたかった連中は仲いいな。
チャグも冒険者希望だったとは知らなかったが。
「エル様、私達もカードの数は揃えたいところですね」
「塔の村ではパワーカードをどうやって手に入れるの?」
「最初に支給されたものもあるが、ダンジョンにも稀に拾えるんだ」
「コモさんにも聞いたけど、カードが落ちてるのは何でなん?」
クララが言う。
「ユー様、おそらくパワーカードの開発者であるドワーフと関係のある塔だからだと思います」
「やっぱり?」
クララの見解でもそうか。
とゆーことなら、他所じゃ手に入らない昔のカードが手に入る可能性があるな。
「将来ダブっていらなくなるカードがあったら売ってよ」
「いいけど、どうしてだい?」
「パワーカードの職人がいてさ。もう何日かでこっちにも一人来て、スタンダードなパワーカードは一通り手に入るようになるよ。けど製法が失われたらしくて、今では作れない昔のカードってのがあるんだ。この塔ならそれが手に入るかもしれないの」
「ユーラシアはこの塔に登る気はないのか?」
うーん、興味がなくはないんだが。
「楽しそうではあるね。でもエルや塔の村を本拠地とする冒険者達の仕事だと思うんだな。あたし達には他所でやることがあるから」
「そうか」
しんみりされても困るんだが。
そしてコケシよ。
もう面白いことはないんですかっておねだりするな。
「ボス、レディー、チャグが倒れたね」
「あっこらアトム! あんたチャグにお酒飲ませたでしょ!」
「ひ、一口だけですぜ!」
「レディーってボクのこと?」
「喜んでる場合か!」
てんやわんや。
クララの提案で、基本状態異常解除の白魔法である『キュア』をかけてみたら効いた。
解毒に当たるらしい。
アトムが大喜びだ。
「これからはいくらでも飲めるぜ!」
「捨てて帰るぞ?」
まったく何を言っているのだ。
◇
結局暗くなるまで食堂で話をしてた。
あんまり居座ってもよろしくないから、適当なところで今日は解散だ。
「やー遅くなっちゃったね。そろそろ帰るよ」
「寂しくなるな……」
俯き気味になるエル。
わからなくもない。
知り合いもいない場所に連れてこられ、毎日塔に入って魔物退治とアイテム回収だもんな。
何やってんだって気になるだろう。
デス爺もエルを召喚したなら、もっとメンタルを気遣ってやって欲しいわ。
最初突っかかってきたのもハートがささくれてたからだろうし。
レイカを除けば同世代の女の子もいない。
そのレイカをおっぱいがデカいからって敵にしたら、マジで喋る相手が精霊だけ。
コケシなんかといつも顔突き合わせてたら、頭おかしくなるわ。
時々塔の村に来て遊んでやるか。
「また五日後に来るよ。フィールドで肉狩りしてたレイカって赤髪の子いたでしょ? あの子がオーバーワークで倒れちゃったからさ、あたしが食堂にお肉納めることになってるんだ」
「レイカ……名前は知っているが、あまり接点がないな」
「レイカはあんたが面白いやつって見抜いてたぞ?」
エルはビックリしたような顔をする。
「レイカも塔に活動の場移すって言ってたからさ、仲良くしてやってよ」
「あ、ああ」
「あたしもまたコケシとコンビで構ってやるから」
「いらない。フリじゃなくて本当にいい」
却ってフリっぽくなってるんだけど?
エルは天然の気があるとゆーか突っ込まれ体質とゆーか。
コケシがウォーミングアップしてるが、今日はもう勘弁しろ。
「じゃねー」
転移の玉を起動して帰宅する。
◇
「さて、本日の復習と明日以降の予習をしまーす」
帰宅後に会議を行う。
単なるうちの子達とのお喋り時間ともいう。
睡眠時間にはまだ少し早いからな。
クララが挙手する。
「エルさんと知り合ったことは、イシンバエワさんに言わない方がいいと思います」
「うん、それはどうして?」
エルとバエちゃんが同じ世界の住人であることは間違いないだろう。
クララはどう考えているだろうか?
「エルさんがいなくなったことを、向こうの世界で問題視してる可能性が高いです。もしこちらの世界に召喚したことが知られた場合、何が起こるか予想ができません」
「うんうん」
至極もっともだ。
エルはこっちの世界にいたいという言質は取った。
向こうの世界でどんな扱いされてたか知らんけど、意思は尊重してやりたい。
一方で異世界はエルを取り戻したいと考えてるかもしれないしな?
最終的に異世界と決着をつけなきゃいけないのかもしれないが、今はその時期じゃない。
知らんぷりして情報を集めるのが吉だろう。
しかしエルとバエちゃんの両方に接点を持ってるのは、今のところあたし達だけか。
ちょっと愉快だな。
「エルの方には突っ込んで聞いてもいいだろうね。口止めされてるはずはないから」
今日のエルの惨状を見ていたうちの子達が、サディスティックな笑みを浮かべるかと思えばそうでもないな。
「うちの姐御も相当だが、あのコケシはとんでもねえやつだったな」
「デンジャラスってワードがカワイク思えるね」
クララが消え入りそうな声で呟く。
「いえ、いつもはあんなんじゃないんです……」
「あたしと話す時は大体あんなんだなあ」
どーしてクララがコケシと仲いいのかマジで謎だ。
互いにないものに惹かれ合うのだろうか?
二人とも勉強家っていう共通点はあるけどな。
「でも今日はいい一日だったよ。デス爺に紹介したから、塔の村には安全にヴィルを飛ばせるようになったしね」
「明日以降はどうしやす? 五日後まではクエスト完了できないようで」
「早めに片付けときたいのは、レイカから預かった木片を届けることだな。だから明日は灰の民の村へのお土産用にお肉を狩って、赤の民の村へ行こうかと思ってる」
うちの子達が頷く。
「早めにギルドでヴィルをお披露目したいけど、この前ペペさんいたんだよねー。お金作ってから行きたい。なのでアルアさんのところが先」
「予定が立つのはそこまででしょうか?」
「まあねえ」
「あとはケセラセラね」
「よーし、今日はお終い。おやすみっ!」




