第139話:赤く燃えている
ちょっとフォロー入れとくか。
やる気のあるパーティーであることは間違いなさそーだし。
何故絡まれたあたしがそこまでしなきゃいけないのかは、イマイチ納得いかないけれども。
溢れる慈愛のせいだな。
「あんた達、前衛二人後衛二人でしょ? パーティーバランスはすごくいいじゃん。まだ駆け出しだろうに、ヒーラーと魔法使いがいるのはすごく恵まれてるよ。少々魔物が適性レベル以上でも勝てるだろうし、ここの塔でも稼げると思うよ。でも世の中とんでもないやつはいるから。このじっちゃんみたいに」
四人の目がデス爺に集まる。
「知ってるかもしれないけど、この村の村長だよ。で、おそらくドーラ大陸一の転移術師。ケンカ売る相手は選ばないと長生きできないよ? どんなに強くても、亜空間に飛ばされたら何にもできないんだから」
四人はコクコク頷く。
素直になったなあ。
「頑張ってね。この塔は経験を積むにもおゼゼ稼ぐにも都合がいいんだ。地道にやってれば、あんた達なら必ず強くなれるよ」
デス爺がこっちを睨む。
もう少し褒めてからリリースせんかいってことだろうけど、あとは自分でやってよ。
最低限の仕事はしたわ。
これ以上は有料だわ。
「ふむ、しかし今の戦いを見せてもらったが、仕掛けも連携も悪くなかったな。後衛が二人いるというのも恵まれておる」
「うん、マジでそう。魔法職が二人もいるって、実績あるパーティーでもほとんどないぞ?」
うちがクララとダンテの二人の後衛魔法職がいるので実感はないけど、魔法系の固有能力持ちの実数は少ない。
魔法使いやヒーラーのいるパーティーが羨ましがられる理由だ。
四人の顔がようやく明るくなる。
「レベルさえ上がれば、名の知れた冒険者となれるであろうよ。期待しておるぞ」
「「「「はい!」」」」
その『期待しておるぞ』が効くのは、あたしがデス爺を持ち上げたからだぞ。
「あたしさっきお肉をたくさん狩ってきたんだよ。今日の食堂の目玉になるから、ぜひ食べてってね」
「ああ、色々すまなかったな」
「本当に」
「ばいばーい」
「バイバイぬ!」
四人組は手を振りながら去っていった。
余計な時間を食ってしまった。
「お主はまたバカげたスキルを持っておるの」
「『雑魚は往ね』のこと? バカげたゆーな!」
「ユー様の『雑魚は往ね』はメイン火力なんですよ」
「お主らのレベルアップが早い理由の一端が垣間見えたの」
どー見ても尊敬の目付きじゃない。
呆れてる目だ。
まあ天才はなかなか理解されづらいもんだから、仕方ないと思っておくけれども。
「ところでじっちゃん、レイカはどこで休んでるの?」
「おお、見舞いじゃったな。こちらじゃ」
一つの小屋に案内される。
「こんにちはー。レイカ、大丈夫?」
「ううん、あっ、ユーラシアか!」
「いやいや、身体起こさなくていいから、ゆっくり休んでなよ」
「し、しかし食料が足りなくなってしまうし」
責任感強いなー。
もっと堂々と寝てりゃいいのに。
「あたしが任された。お肉狩ってくるから一〇日は大丈夫。その後はダンジョン内で狩れるらしいよ。だからゆっくり身体休めな」
「すまない。せっかくデス様からスキルをいただいたというのに不甲斐ない」
「あんた冒険者がやりたいんでしょ? お肉ハンターやりに来たんじゃないでしょうに」
「うむ、しかし肉狩りでレベルも二ほど上がってな、やり甲斐もあるのだ」
目的が変わっとるがな。
いいんか、それで。
「お肉ハンターが楽しいならいいんだけどさ。ダンジョンの中でやりなよ。ここ『永久鉱山』じゃん? 中の魔物はいくら狩っても減らないんだ」
レイカは初めてその点に思い当たったようだ。
「フィールドの魔獣が減ってきて狩りづらくなってきたところなのだ」
「だろうね。ふつーは狩れば減るのが当たり前」
「ソロではちょっとキツいダンジョンだって聞いた。メンバーを募らないといけないな」
「低層階はソロで大丈夫だと思うけど」
あの掃討戦を一人でこなしてたレイカの実力でダメなら、初心者お断りになっちゃうもんな。
件の精霊使いは元々素人だと言うし。
「人の出入りがすごく多くなりそうな気配だよ。様子見してる冒険者とその予備軍が結構いる。レイカの気に入る人も来ると思う」
レイカが将来のパーティーに思いを馳せているようだ。
「前衛が欲しいな……」
「前衛なんて腐るほどいるって」
「何かワクワクしてきた。こうしちゃいられない!」
「だから寝てろ」
飛び起きてどこかへ行こうとするレイカをムリヤリ押さえつける。
まったくこいつはムチムチばいんだけじゃなくて熱血なんだから。
「赤の民の村に伝言かなんかある? 伝えとくよ」
「あ、ユーラシアもここへは転移で来たのか? じゃあお願いする。手紙をしたためるから、少し待っててくれ」
飛び出てきたレイカはいいかも知れないが、里の知り合いや御家族は心配だろう。
手紙を届けてやれば安心材料になるに違いない。
「赤の民の村の人は、レイカの現況についてどこまで知ってるの?」
「え? 何も知らないぞ?」
「冒険者になって西への移民団についてく、くらいは話してるんでしょ?」
「いや、荷物だけ詰め込んで出てきたから」
ちょっと待てい。
どーゆーことだ。
「思い立ったが吉日、というのが赤の民の行動原理でな」
「いい話ふうだけど、やってることは知らない道どんどん歩いていって迷子になる幼児と一緒だからな?」
「何を言う、私は迷ってなどいない!」
レイカが一言だけ書きつけた木片を寄越す。
「これを里に届けてくれれば嬉しい。誰でもいいから見せればいい」
「『赤く燃えている』……何これ?」
「赤の民ならばこれで全てが伝わるのだ」
「そんなわけあるか!」
「いや、本当だぞ?」
おおう?
思いの外レイカが真顔じゃないか。
なら大人しく木片を預かっておこう。
「じゃ、あたしは行くから。あんたは体調整えなよ」
「病気じゃないから、寝たら疲れが取れて大分良くなったんだけどな」
「うんうん。まあお肉の準備の方はあたしがクエストとして請けたから、一〇日分は全然問題ない。さっきも言ったけど、その頃には塔で肉狩りできるらしいから、レイカもダンジョン慣れしといた方がいいと思う」
「わかった、低層階を回ったり仲間に目星つけたりしとくよ」
あ、一つ聞き忘れた。




