第136話:新しい転送先は……
――――――――――三九日目。
朝から海岸でおゼゼ稼ぎもとい素材の採取を行う。
「ボス、『地図の石板』があるね」
「本当だ」
昨日の山の集落のクエストが完了したの夕方なのにな。
今朝もう新しい『地図の石板』が来てるのか。
どのタイミングで配布されるんだかイマイチわからん。
まー遅いよりはいいけど。
『地図の石板』を拾う。
ズズズウンンン、うん、お約束の地鳴りだね。
さて、どこ行きの転送魔法陣が設置されたかな?
「随分いろんなところへ行けるようになってきたから嬉しいねえ。乙女心がキュンキュンしちゃうよ」
「姐御、早速次のクエストに行きやすか?」
「おっ、アトムは冒険好きだね。いや、素材の換金もしなきゃだし、ヴィルをギルドにお披露目もしたいんだよね。クエストはその後にしようかな。でも転送先だけは確認しとこう」
「がってんでやす!」
ちなみに昨日のレベルアップで、あたしが沈黙付与の全体攻撃バトルスキル『黙秘剣』を。
アトムが敵全体にスタン付与、攻撃力・防御力・敏捷性低下付与する土魔法『トリックノーム』を。
ダンテが火耐性弱体化付与の全体火攻撃魔法『ウィークポイントフレイム』と、暗闇・混乱・睡眠付与の全体氷攻撃魔法『カースドブリザド』を覚えている。
いずれも群れで出てくる強敵に使えそうだが……。
「うちのパーティーはユー様の『雑魚は往ね』のパフォーマンスが良過ぎますので、他の全体攻撃スキルはどうしても見劣りしますねえ」
「ノーコストの『薙ぎ払い』以外はね。まーどこで使う機会があるかわからんし」
本当に使う機会があるかな?
あたしも最近覚えたスキルは、試し撃ちすらしてないやつが多い。
スキルは持ってりゃ持ってるほどやれることが増えるのは確かだが、所詮やってるのは魔物退治に過ぎない。
パーティーの戦闘スタイルが確立されりゃ、使うスキルも一緒だ。
つまり使えないスキルをたくさん持ってるより、使えるスキルを一つ持ってる方がいいと最近は思っている。
クララによると、上級冒険者ともなるとそうレベルアップでスキルを覚えるものではないらしい。
もう残りの習得スキルは各人二~四個ずつではないかとのことだ。
使える使えないは別として、スキルを覚えると成長したなー気がするのは確か。
だから残りちょっとって言われると寂しい気がしなくもない。
もっともチュートリアルルームで売ってる汎用スキルで欲しいのもあるんだよな。
『クイックケア』とか。
冒険者道の先は長い。
帰宅して一〇個目の転送魔法陣の上に立つ。
頭の中に響く事務的な声。
『塔の村に転送いたします。よろしいですか?』
ん? んんんんん?
塔の村って、ひょっとして……。
「例の、灰の民の移住先ってやつでやすかい?」
「転送魔法陣さん、塔の村ってドーラの西への街道の終点の?」
『そうです』
すぐ魔法陣から飛び出し家の中に飛び込む。
「クララ! 塔の村への転送魔法陣が出た!」
「えっ!」
「皆、予定変更。すぐ行くから用意して!」
「「了解!」」
しかしダンテが冷静に指摘する。
「ボス、ジャストモーメントね。アイシンク、ヴィルを呼んで、得られるインフォメーションは得ておくべきね」
それもそうだ。
塔の村で何か起きてるのか?
「よし、ダンテ偉い! ヴィルカモン!」
あたしは赤プレートでヴィルを呼び出す。
しばらく待つとヴィルが現れる。
「ヴィル参上ぬ! 御主人、どうかしたかぬ?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「何かぬ?」
「『アトラスの冒険者』のクエストで、西域街道の果ての塔の村への転送魔法陣が出たんだよ。基本的に困ってることがあるとクエスト対象になるから、向こうで何かあったと思うんだけど、ヴィル心当たりない?」
ヴィルが腕を組んで首をかしげる。
そういう仕草も可愛いな。
「わっちには順調に見えるぬよ? 大きなトラブルはないぬ」
「じゃあ塔の村について、ヴィルの知ってることを話してくれる?」
「基本的には塔の中で採取した素材やアイテムを買い取ることで、集めた冒険者の生活を成り立たせるんだぬ。村側は素材やアイテムの加工・転売、冒険者や商人が落とすお金で発展しようとしているぬ。レイノスやカトマスで宣伝していて、鼻の利く冒険者はもう塔の村に来ているぬ」
うん、デス爺やソル君が同じことを言ってた。
想像の範囲内だ。
「今の段階では、到着したばかりの冒険者はまだ様子見だぬ。塔に入ってるのは御主人と同じ精霊使いのパーティーだけぬ」
「へー、精霊使いがいるんだ。会ってみたいな」
『精霊使い』の固有能力はすごく珍しいって話だった。
ぜひ情報交換したいものだ。
あ、精霊使いがいるから、パワーカード製作技術を持つコルム兄が呼ばれてるのか。
ようやく話が繋がった。
「その精霊使いは、冒険者応募で来たの?」
「わからないぬ。でもわっちが塔の村に偵察に行った時はもういて、塔に潜ってたぬよ? 最初からいた冒険者はその精霊使いと、フィールドで魔獣狩りをしている赤い髪の魔女だけぬ」
赤い髪の魔女とは赤の民のレイカだろう。
風魔法で獣を狩って、当面の食料にするんだとか何とか言ってた。
精霊使いの方はどうなんだろうな?
最初から精霊使いの当てがあったから、移住メンバーに精霊三人が含まれていたんだろうか?
デス爺の主導してることだから、それくらいのことはあってもおかしくはないけど……。
「ふーむ? わからんな?」
しかしヴィルの話聞く限りでは、塔の村が困ってるということはなさそうに思えるんだが?
件の精霊使いがガンガン素材拾ってきたものの、当座の交換資金がなくて破綻しそう、なんてのはあるかもしれない。
でもおゼゼのことだとあたしも力になれないしな?
「ヴィルの見立てだと、いきなり危険なんてことはないんだね?」
「なさそうぬ」
どうやらこれ以上は時間のムダだ。
塔の村もまだ運営を始めたばっかりだ。
細かいトラブルがあるんだろ。
「塔のダンジョンで結構な魔物が出てしまって、初心者冒険者がそれ以上進めなくなっているということかもしれませんねえ」
「実にありそーだな」
だったら一応レベルだけ上級冒険者のあたし達にクエストが振られた意味もわかる。
急いだ方がいいか?
「よし、行ってみよう。ヴィルもついて来なさい」
「了解だぬ!」




