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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1345話:監視するピンクのモジャ髪

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、ウルトラチャーミングビューティーじゃないか」


 塔のダンジョン入り口フロアにいた、ピンクのモジャ髪の軽薄な男に話しかける。

 パラキアスさんの手下のケンだ。

 ちょうどいてよかった。


「あんたここで案内人してない時は何してるの? あたしが会いに来たのにいないことあるじゃん」

「可愛い娘ちゃんにムダ足踏ませたのは悪かったね。オレもずっとここにいるわけじゃないよ。塔で冒険者活動してる時もあれば、村をうろついてる時もあるし」

「とゆーどうでもいい話は置いといて、エルに熱い視線を送れって、最近パラキアスさんから言われてない?」


 ハハッ、急激に話題転換したった。

 警戒気味のモジャ髪。


「……監視を強めろ、特にエルに接触してくる者に注意しておけって」

「うん、予想通りだな」

「ウルトラチャーミングビューティーは理由を知ってるのか?」

「見当違いではないだろうな、という程度には。でもチャラ男は意味がわかってないんでしょ?」

「ああ。今になって監視を強める意味がサッパリわからないよ。弱めろならともかく」

「パラキアスさんも説明の足りない人だからなー」


 聞けば教えてくれたろうけど、パラキアスさんも推測が主だろうしな?

 『アトラスの冒険者』廃止イコールドーラの治安にも関わる件だから、情報をなるべく出したくないという心理も働いたかもしれない。


「言えないこともあるから、フィクション半分で説明するよ」

「半分もかい! まあいいや」


 いいのかい。

 パラキアスさんに慣らされ過ぎじゃない?


「エルは今はなき王国のプリンセスなんだ。王族の血を引く唯一の存在と考えられている」

「異世界の、ってことだね?」

「何だ、エルが異世界から来たことは知ってるのか」


 じゃあ今から言うことをモジャ髪も理解しやすいだろう。

 話しやすいな。


「エルは自分がプリンセスってことは、ついこの前まで知らなかったんだ。身分の重要性から閉じ込められてたところを、デス爺の転移術でこっちの世界に連れてこられ、運命の歯車が回り始めたのでした」

「おお、ワクワクするね」

「向こうの世界はエルの行方を追っているんだ。エルをプリンセスとして持ち上げたい立場、王家の血を根絶したい立場、こっちの世界で安穏と暮らしたいエルの立場という、三つの思惑がひしめき合うことになる。いいね? エルの立場を守るため、怪しい魔の手を察知するのがあんたの役割だよ」

「高潔な白馬の騎士の役割だね!」

「モジャピンクの見た目は丸っきり道化みたいだぞ?」

「ひど過ぎる!」


 アハハ、まあまあ。


「異世界の事情については、パラキアスさんもある程度は感付いてるはずなんだ。異世界の揉め事をドーラに持ち込まれちゃかなわんから、騒動の中心になるかもしれないエルを監視しとけってことだと思う」

「なるほどね」

「多分だぞ? パラキアスさんの考えてることなんて、あたしだって全部はわかんない」

「ああ、オーケーだ」


 まあこのモジャ髪が納得できる理由ならいいのだ。


「じゃあ頑張れ」

「またね、ウルトラチャーミングビューティー」

「バイバイぬ!」


 さて、リリーを見つけてと。

 パワーカードの売り上げにも貢献していくか。


          ◇


 塔の村からの帰宅後、掃討戦跡地へやって来た。

 知った顔はと。


「あっ、サブローのおっちゃんと『スナイパー』の人! こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「オレの名はチャーリーだ」


 言葉少なだな。

 あたしにビビってるみたい。

 この前は悪いことしたか?


「嬢ちゃん、今日はどうしたんだい?」

「魔物退治頑張ってくれてるみたいだから、支援しに来たんだよ」

「支援?」

「これあげる」

「ん? 何だこれ?」

「ほお。スキルスクロールだな。開けばスキルを覚えられるんだぜ」


 サブローのおっちゃんはスキルスクロールを知ってるらしい。


「『経穴砕き』のスクロールだよ。六本持ってきたから、魔物退治班の皆が覚えて」

「どんなスキルだい?」

「えーと、敵単体に一ダメージを与え、魔法防御をかなり下げるバトルスキル」

「使えねえ! 余りものかよ!」

「そこが畜生の浅ましさ」

「何だとお!」

「ごめん。素人の浅ましさって言おうと思って間違えた」

「どっちもダメだろ!」


 帝国の人はスキルの知識もあんまりないだろうからな。


「踊る人形って魔物が出るでしょ? 青くてぬめっとしてて、一見頭の大きい人間みたいなやつ」

「ああ、たまに出るな」

「倒せてる?」

「いや、攻撃しても吹っ飛ぶだけでダメージが入らねえようだ。最近は相手にしてないんだぜ」

「魔法を撃ってくるだろ? 間違って村人が出くわすと危ねえから、駆除できるならしてえ」

「あいつは経験値高いし、必ず魔宝玉をドロップするんだ。倒せないと損しちゃう。さっきの『経穴砕き』は一見役に立たないスキルみたいに見えるけど、必ず一ダメージ与えるのがミソだよ。踊る人形はヒットポイント一しかないから倒せる」

「専用スキルだったのか! 嬢ちゃん、恩に着るぜ!」

「ハッハッハッ、あたしを崇めるがよい!」


 あれ、どうした。

 スナイパーが胡散臭げな目をあたしに向けてるが。


「親切ごかしか? 何が目的だ?」

「あたしは親切と優しさ、ほんのちょっぴりの厳しさでできてるんだよ」

「信じられるか!」

「本当だぞ? いい子には御褒美あげるし、悪い子はドラゴンのエサにしちゃう」

「御褒美とドラゴンのエサが釣り合ってねえ!」

「ドーラの常識は帝国で通用しないのかなあ?」

「それは御主人の常識だぬよ?」

「ヴィルは賢いな。ぎゅー」

「ふおおおおおおおおお?」


 よしよし、いい子だね。


「帝国ではあり得ないことかもしれないけど、ドーラではスキルスクロールを売ってるんだ。どこでも売ってるわけじゃないけどね。有名どころの汎用スキルなら大概手に入るから、もし欲しい魔法やバトルスキルがあったら灰の民族長のサイナスさんに相談してよ。取り寄せてくれると思う」

「『ファイアーボール』とかでもか?」

「もちろん。でも火の魔法は火事が心配だから、こゆとこで使うなら違う系統の魔法の方がいいけど」


 スナイパーも目輝かせてるじゃん。

 やっぱスキル覚えられるってのは魅力的なんかな?


「あたし帰るね」

「おう、またな」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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