第1324話:ドワーフの集落と初コンタクト
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。
あたりを見渡していたアトムが感慨深げに言う。
「岩ばっかりでやすね」
「そうだねえ」
うちの子達とともにドワーフの集落近辺に飛んできたのだ。
典型的なドワーフは岩に穴をあけて住み着くようだから、こういうところがいいんだろうが。
「ドワーフには岩フェチの称号を授けよう。授けられた方が嬉しいかは知らんけど」
「アルアさんの家兼工房も岩壁の中ですもんね」
「ドワーフってすげーな」
「ストレートにゴーね?」
「その通りだ! あたし達は前のみを見て進むのだ!」
「ユー様、実際には搦め手も好きですよね?」
「意表を突きたい乙女心にも忠実だから」
アトムとダンテが何やらわからんって顔してる。
まあいいだろ、可憐な乙女の趣味については。
「岩ばっかで見通しがまるで利かないな。集落どっちだろ?」
「こっちだぬ!」
ヴィルの案内でドワーフの集落へ。
「おお、立派な門だね」
岩で囲まれた向こう側が集落になってるのか。
天然の要害だな。
その岩に穴あけてこんだけデカい門にしてるとかどんだけだ。
ドワーフの加工技術に絶句。
門番らしき人に挨拶する。
アルアさんもそうだが、ドワーフは鼻が大きいのがデフォルトかな?
「こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「おう、変わった一行だな。ノーマル人に精霊、と悪魔だな?」
「悪魔だぬよ?」
「あたしが美少女精霊使いユーラシアだよ。よろしくね」
「ハハッ。偶然ここへ来たのか? それとも土と岩の民の村と知ってか?」
「ドワーフの集落と知ってだよ」
警戒気味になる門番さん。
あ、ヴィルが引っついてきた。
よしよし、肩車してやろうね。
「ほう、誰にこの場所を聞いた?」
「パラキアスさんっていうノーマル人。知ってるでしょ?」
「ああ、アイツか! エルフとごたついた時に世話になったんだ」
門番さんの表情が和らぐ。
「で、アンタは何しに来たんだ?」
「仲良くなりに来たんだよ。あたしもノーマル人社会で暮らしてるドワーフを一人知ってるんだけどさ。石工技術メッチャすげえじゃん? あたし達にできない細工は、ドワーフにお仕事お願いしようかと思って」
「なるほど、俺達の技術を買ってるってことかよ」
「うん。買ってるから売って欲しいの」
「ハハッ、しかし俺達は腕の安売りはしねえぜ?」
あたしを値踏みしようとしたってムダだ。
あんたらの弱点はわかってるからな。
「お土産にお肉持ってきたんだよ」
「えっ? 早く言えよ」
「誰に聞いても美味いって言うお肉だよ。しかも今日狩ったばかりのやつ」
「早く言えよ!」
「たくさん持ってきたぞお!」
「おーい! 宴だ! 客人を歓待するぞ!」
簡単じゃねーか。
◇
「ごちそーさまっ! もー腹一杯!」
「ハハハッ、ノーマル人は小食だな」
多くのドワーフが集まった気持ちのいい宴なのだ。
しかし小食扱いはいただけない。
「違うんだ。お昼にお肉たくさん食べちゃったから、もう入んないの。今度来た時は真の実力を見せつけるよ」
「酒は飲まねえのかい?」
「亡くなった母ちゃんが、二〇歳になるまで飲むなって言ってたんだよね。言いつけは守ることにしてるんだ。二〇歳になる楽しみの一つでもある」
「おお、何かすまねえな」
お酒うまそーだもんな。
飲んでる人は皆幸せそうだ。
さっきの門番さんが話しかけてくる。
「アンタが知ってる土と岩の民ってのは誰だい?」
「パワーカード職人のアルアさんって人。すごくお世話になってるんだよ」
「アルア……知らねえな」
アルアさん家の構造からして、かなり昔に集落を離れたと思われる。
ここの集落の出身ではないかもしれないしな。
「ロブロさんって人の弟子アリアさんの孫って聞いたな」
「おお、知っとる知っとる!」
「長老!」
この人が長老か。
ヤギみたいな白い顎ヒゲと温和な表情がホッとさせる。
「あのアルアか。確かわしより三つ年下じゃった。息災かの?」
「元気も元気。ノーマル人の弟子も取ってるし、あたしもガンガン仕事回してるよ」
「ホッホッホッ。実に懐かしいの」
好々爺だなあ。
和むわ。
「パワーカードか。久しぶりに聞いた」
「もうこっちでは作られなくなっちゃったの?」
「元々ここの集落バルバでは、塔の集落から流れてきたアリア殿が唯一のパワーカード職人じゃったよ。そのアリア殿がアルアを連れて新天地に旅立った時から、バルバでパワーカードは絶えてしもうた」
「残念だなー」
ドワーフでも独自のパワーカードが発達してたら興味深かったのに。
「嬢はパワーカードの使い手なのかの?」
「うん。あたしは冒険者なんだ。でもうちの子達はパワーカードしか使えないんだよね。自然とあたしもパワーカード使いになった」
「ふむ、実体を持たぬ精霊と悪魔だからか……」
長老が昔を思い出すように、視線を宙に向ける。
「又聞きじゃが、ロブロ師は不思議の塔でパワーカードの着想を得たと言うな」
「今、あの塔の周りはノーマル人が集落にしてるんだよ」
「その方が良いじゃろうな。我らが陣取っていては、エルフどもと諍いになる」
「でもあの塔って、ドワーフが作ったんでしょ?」
「いや、遥か昔に異世界からの旅人達が作ったと伝えられておる。外観内装は土と岩の民の意匠に変えておるがな」
「マジか」
あの塔を作るだけの技術力を持った異世界人ってエルやバエちゃんの世界じゃん、多分。
塔の村は異世界の監視下にある?
いや、監視下にあったらエルの存在なんかすぐバレるはずだわな。
下手に騒がない方がいいか。
「しかし、土と岩の民の集落はここだけではない。パワーカードの使用者も見たことがあるゆえ、他所には職人もおるのではないかな」
「ほんと? 教えてくれてありがとう!」
「いや、これだけの肉の礼にはとても足りぬ」
「黒妖石っていうとても硬い石を加工する仕事を、いずれ頼みたいんだ。その時は協力してよ。支払いはゴールドでいいんだよね?」
「もちろんじゃ。酒か肉がおまけについていればなお良い」
どんだけお肉ラバーなんだよ。
でも頼みやすいな。
「じゃ、今日は帰るね。今度来る時も必ずお肉持ってくるよ」
「ホッホッホッ。忘れずにの」
「バイバイぬ!」
もう一度言うけどどんだけだ。
ドワーフこの上なく扱いやすいわ。
転移の玉を起動し帰宅する。




