第1231話:格好も中身もチャーミング
フイィィーンシュパパパッ。
「こんにちはー」
「やあ、いらっしゃい。今日は大勢だね」
青の民族長セレシアさんと服屋の売り子一同、ディオ君を連れて皇宮にやって来た。
「話は聞いてる。ドーラのファッションを売り込みに来たんだって?」
「そうなのです。よろしくお願いいたします」
あれ? 土魔法使い近衛兵緊張してない?
セレシアさん美人だからかな?
いや、セレシアさんも帝都進出が目前ということで、若干緊張しているようだ。
ちょっと硬くなってるくらいの方が、暴走されなくていいかもしれない。
「新聞記者さんに聞いたの?」
「ああ。もうスタンバイしてるぞ」
ディオ君が言う。
「新聞記者を用意していただけてるんですか」
「わざわざ用意したわけじゃないんだよ。でも新聞って慢性的に記事が足りないらしくてさ。あたしが帝都に来る日をチェックしてるんだよね」
「君が来た次の日の新聞は読みごたえがあるんだ」
「そーだったかー。あたしの魅力が紙面に十分表現されているか心配になるよ」
「ハハハ。心配いらない。新聞も好意的だからな」
話をしながら近衛兵詰め所へ。
「こんにちはー」
「「「ユーラシアさん!」」」
朝から大声出すと迷惑だろ。
本当にこの記者トリオはあたしのことが好きなんだから。
詰め所の近衛兵にお土産のお肉を渡す。
「今日は可愛い格好をしているではないか」
「殿下ありがとう!」
「本体が可愛いのはいつものことだが」
「おおう、殿下はやるなあ。とっても褒め上手」
「ハハッ、今日は『ケーニッヒバウム』へ行くと聞いたが?」
ウルピウス殿下はいつもここにいる気がするなあ。
まったくあたしのことが好きなんだから。
互いに紹介してから説明する。
「……とゆーわけで、可愛い格好がテーマなんだ。ドーラ発のファッションが帝都の人に受け入れられるといいなってことで、お披露目に来たんだよ」
「うむ、ユーラシアのキュートさを一層引き立てている」
「殿下はよくわかってるなあ」
「予も同行していいか?」
ウ殿下がついて来てくれた方が、宣伝には都合がいいな。
セレシアさんが驚く。
「ウルピウス様もお出でくださるのですか?」
「迷惑でなければそうしたいのだ。よろしいだろうか、セレシア殿」
「とても光栄ですわ」
「今日は覆面外しておいでよ。顔隠してもムダだから」
「そうか?」
「うん。どうせ人に囲まれちゃうから。堂々と行こうよ」
ウ殿下がいるぞってわかった方が宣伝になるかなと思っただけだ。
でも今日は女の子の方が目立っちゃうか。
ディオ君を含む青の民六名とウ殿下記者トリオ、あたしを入れて計一一名で出発。
◇
「ドーラのファッションなんですね?」
「ドーラ人の女の子が皆こーゆー格好してるわけじゃないけどね。ドーラの首都レイノスでは流行りなんだ。『ケーニッヒバウム』で売り出すことになると思うからよろしくね」
「今お召しになっているのは、ひょっとして画集『女達』の表紙になっている?」
「うん。いいでしょ?」
「チャーミングですね」
「チャーミングなのは中身もなんだなー」
ぞろぞろ。
道行く人がついて来て行列みたいになっているので、記者トリオとの話を聞かせながら行く。
いやまあ、記者トリオは知ってる内容なのだが、宣伝に協力してくれてるのだ。
もっともここで何だ何だ? って思わせとけば、明日の新聞も売れるだろ。
何せ見慣れない格好で目立つし、大人数だし、ウ殿下や新聞記者もいるしな。
さすがにウ殿下が一緒だと話しかけてくる人はいない。
「セレシアさんは動じないねえ」
「ええ、人に見られる商売ですからね」
うむ、セレシアさんとこの服屋は、店員が兼業モデルみたいなもんだからな。
皆が見せびらかすように歩いている。
「殿下とディオ君、大丈夫? 居心地悪くない?」
「うむ、問題はないぞ」
「宣伝ありがとうございます」
まーこの二人は度胸あるし、自分の役割もわかってるしな。
「ここ、通りの両面全部が『ケーニッヒバウム』なんだよ」
「「えっ?」」
セレシアさんとディオ君が驚く。
「欲しいものがあったらここに来れば何でも手に入る、っていう商売の仕方なんだって」
「とても羨ましいですわ」
「なるほど。しかし普通は思いついてもできない商売ですね」
ディオ君の言う通りだ。
メッチャお金がないと不可能な商売の仕方。
魔宝玉コーナーへ。
「こんにちはー」
「ユーラシアさん、いらっしゃい」
ピット君が笑って迎えてくれる。
「ピット君がニコニコしてると気持ち悪い」
「何てことを言うんですか!」
「もっとこう、悪いことを企んでるような顔をしてないと」
「待ってください、ボクって悪党のイメージですか?」
「悪い顔が板についてないのがよろしくないんだよな。小物臭がする」
「さっきから悪い顔悪い顔って!」
いや、悪いやつが堂に入ってくれば、それはそれでリリーを任せられるだけの貫禄なんだってばよ。
あたしにとっては『悪い』って別に貶す言葉じゃないよ?
「ユーラシア殿」
「こんにちはー。店主のフーゴーさんだよ。こちらデザイナー兼店主のセレシアさんと、生産担当のディオ君」
握手。
セレシアさんの店の売り子が、サンプルの服をフーゴーさんに見せる。
「ふむ、話は聞いておりましたが、これは目を引きますな。装飾一辺倒でないところもいい。すぐにでも当店で取り扱いたいものです」
「本当ですか!」
こら、踊りだそうとすんな。
ある意味当然なんだから。
品質に問題がなければ、こんだけ人がついてくるほど注目浴びてる商品を切り捨てるわけがないんだって。
ディオ君が言う。
「ドーラから輸出することになると、かなり価格が上がってしまうことが予想されます」
「輸送費がバカになりませんからな。デザインをお借りし、使用料を当店で支払う、という形がベストでしょうかの?」
セレシアさんの頭が茹ってる内に交渉が始まってる。
さすがにディオ君だなあ。
やはり輸出ではなく、デザインを『ケーニッヒバウム』に提供するという形に落ち着きそうだ。
「交渉してる間に、あたし施政館行ってくるね。ごめんよ、今日は記者さん達連れていけないけど」
「わかりました。ここで取材させていただきます」
「昼過ぎ頃に戻ってくるね」
「予も行っていいか?」
「うん、行こうか」
ウ殿下とともに施政館へ。




