第123話:聖火教大祭司ミスティ
キャンキャン喚くハイプリーストがウザい。
でも聖騎士も修道女も同調してるみたいなんだよなあ。
宗教とは面倒臭いものだ。
悪魔を一律に嫌ってるようだけど、色眼鏡なしでヴィルを見てもらえばいい子だってわかりそうなもんなのだが。
「あたし達は平和的に交渉したいんだけど、あんたらは許さないと?」
「当たり前だっ!」
「あたしはうちの子を返してくれって言ってるだけだぞ? ヴィルが悪さしたならともかく、間違えて礼拝堂に入っちゃっただけでしょ? 謝っても許さないってのは、狭量に過ぎるんじゃないかな?」
「聖火教の教義を知らんのか! 本部礼拝堂に悪魔が立ち入るなど、許されるわけがないだろうが!」
「困ったなあ。倒してから行けって言われると、必然的に戦闘になっちゃうぞ? わかってる?」
「もちろん承知の上だっ!」
「ハイプリーストのあんたは『ヒール』くらい使えるんだろうけど、ケガすると痛いからやめとけば?」
「バカにするなっ!」
「ちょっと確認するけど、あんたの言ってることは皆さんの総意でいいのかな? あとからそんな気はなかったとか言われても知らんよ?」
「何を今更! 総意に決まっている!」
「雑魚は往ねっ!」
開戦直後に修道女四名を倒す。
驚愕する聖騎士とハイプリースト。
いや、これだけ時間があれば溜め技も出るよ?
「卑怯な!」
「はいはい、寝言は寝てどーぞー。敵扱いしといて何を言ってるんだか」
わかっちゃいたが聖騎士は『雑魚は往ね』で倒せなかった。
おそらくは回復魔法を使えるだろう、うるさい修道女を片付けたから良しとしよう。
ハイプリーストはあたしよりレベル低そうだけど、やっつけられなかったな。
ボス補正なのか、あるいはあたしとレベルが近いと効かないのか。
まあいい、ならば定石通り……。
「ハイプリーストから集中攻撃!」
「「「了解!」」」
ダンテのアダマスフリーズ! アトムのマジックボム! 回復役であろうハイプリーストを倒して残りは二人だ! クララが攻撃魔法をキャンセルして出の早い勇者の旋律に切り替え! よーしナイス判断! 出遅れた聖騎士二名の攻撃をアトムが受ける。……案外バカにできない攻撃力だな、クララやダンテが受けると危険だ。
「アトム、『アースウォール』!」
「了解!」
ダンテのアダマスフリーズ! あたしのハヤブサ斬り・改! しめた、片方クリティカルで大ダメージだ! アトムのアースウォール! 聖騎士の攻撃をあたしが受けるが、アースウォールの効果で大して痛くない。クララのリカバー! 聖騎士の何だか強めのスキルをアトムが受ける。聖騎士は強いけど、一人はもうフラフラだ。ダンテのエレキング! 聖騎士を倒して残りは一人。あたしのハヤブサ斬り・改! アトムの透明拘束! 攻撃力と魔法力を下げた。もう怖くない。聖騎士の攻撃をあたしが受けるが、どうってことない。クララの些細な癒しで全体回復! ダンテの実りある経験! やるなダンテ、ここでがめつく経験値を稼ぎにいくとは。あたしのハヤブサ斬り・改! アトムのマジックボム! よーし、倒した。
ハイプリーストがロープを持ってるがな。
あたし達を捕縛するためのものだったのかな?
用意がいいなあ。
倒れている七名を縛り、ついでに魔法封じに猿ぐつわを噛ませておく。
その上で七名全員をクララが『レイズ』で蘇生する。
「ごめんね、じゃあ通るよ」
ハイプリーストが何かギャアギャア言ってるけど、猿ぐつわしてるとゆーのに。
言葉になってないから諦めなよ。
念のため先ほど外で採取した魔法の葉を回復役クララに取らせ、マジックポイントを回復させておく。
さあ、奥の間へ!
中を覗くと、三人の女性と聖火の結界で身動きできなくされているヴィルがいる。
二人は修道女だろう。
真ん中の立派な法衣を身に着けている目元の涼やかな中年女性、あれが大祭司ミスティに違いない。
「こんにちはー」
「誰です!」
真ん中の女性が伸びやかな鋭い声を発する。
うむ、なかなかの威圧感だ。
聖火教のトップだけのことはあるな。
「あたしは精霊使いユーラシア、冒険者だよ。あなたが大祭司のミスティさん? 勝手に入ったのは悪かったけど、そこの悪魔を返してもらえないかな」
「いかにも私が聖火教大祭司のミスティですが、返すとはどういうことです? あなた達の仇という意味ですか?」
あたしは首を振る。
「いや、違うの。悪魔ヴィルはあたし達の仲間なんだ」
ミスティさんが目を見開く。
「精霊連れの冒険者が売り出し中、とは聞いていますが……あなたのことですか。悪魔を従えているとは知りませんでした」
「ちょっと成り行きでね。ヴィルは人の喜びとか満足とかの感情が好きで、全然悪い子じゃないの。聖堂に無断で入ったのも聖騎士とプリーストやっつけちゃったのも悪かったけど、許してもらえないかな?」
大分虫のいい話だとは思うがどうだろう?
「ええ? 彼らは中級冒険者に倒されるようなレベルじゃないはずなんですけど。これは驚いた……」
ミスティさんは少し考えていたが、やがて結界を解いてヴィルを解放してくれた。
連戦になるかもと身構えていたが、随分と物わかりがいいな。
ありがたい。
ヴィルが飛びついてきたので頭を撫でてやる。
よしよし、いい子だね。
「御主人、助かったぬ! ありがとうぬ!」
「助けてくれたのは大祭司さんだよ。謝っときなさい」
ヴィルはぺこりと頭を下げる。
「ごめんなさいぬ。雨が痛くて、つい中に入ってしまったぬ」
「……今回は特別に水に流します。しかし我々にも教団の教えがあります。悪魔の立ち入りはこれっきりにしてくださいよ」
「わかった、借りを作っちゃったね。何かあたし達にできることある?」
初めて大祭司ミスティさんは笑みを浮かべる。
「借り、と思っていただけますか。ユーラシアさんは『アトラスの冒険者』ですよね?」
「うん」
「一つ頼まれてもらえないでしょうか?」
「あたし達にできることなら構わないぞ」
「あれを持ってきてください」
あれ、とは何だろう?
『アトラスの冒険者』に関係するもののようだが?
ミスティさんが指示し、修道女が奥の戸棚から引っ張り出してきたものをあたしに手渡す。
「これをどうぞ」
ビックリした。
何でこんなもんが突然出てくる?
「これ、『地図の石板』じゃない!」
ヴィルを取り返しました。
ヴィルは物語の後半でユーラシアの機動力を格段に大きくするキーになる子です。




