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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第122話:転移事故

「ユー様、ユー様! 大丈夫ですか?」


 慌てているクララの声がする。

 な、何事?

 頭がズキズキする……。


「あたた、女の子の大事なお尻を打った」

「頭も打ってるじゃないですか。頭の方が大事ですよ。ヒール!」


 クララの回復魔法で痛みは消えた。

 が?


「あれ、建物の中? ここどこ?」

「わかりません。どこかの倉庫のようですが」


 クララも不安そうだ。

 状況を整理する。

 悪魔ヴィルを仲間にして転移の玉で家に戻り、今後のことを相談しようと思っていたのだ。

 ホームに飛んだはずなのに見覚えのないところ、これはいわゆる……。


「転移事故かな?」

「おそらく。四人までという、転移の玉のキャパシティ制限に引っかかったのだと思います」

「あっ、そーだった!」


 人数オーバーで転移事故が起きるとこんな感じになるのか。

 結果については覚えておこう。

 一度体験したいことではあったのでよしとする。

 物事はポジティブに考える美少女精霊使いであった。


「じゃあヴィルどうしよう?」


 せっかくレベル高くて強い仲間なのにな。

 五人だと転移の玉が使いづらい。

 もっともヴィルは好感情の好きな悪魔のようだから、戦闘メンバーに入れて魔物の苦痛を吸うのは嫌いかもしれない。

 少なくともレギュラーの戦闘メンバーと考えない方が良さそうだ。 


「考えなきゃいけませんね。しかし今は皆と合流するのを優先しましょう」

「ごもっとも。転移事故のことはしばらく忘れよう」

「事故は覚えといてくださいよ」


 クララが笑う。

 精霊が一人勘定なら悪魔も当然そうなんだな。

 迂闊だった。


 倉庫らしき小屋の出入り口から外を見渡すと、アトムとダンテがいた。

 あ、外は微妙に雨降ってるな。


「姐御! ここでしたかい」

「クララもいるよ。こっちは大丈夫。そっちは?」

「ミーもノープロブレムね。あの悪魔ヴィルがいないね」

「どうやら転移事故みたいなんだ。転移の玉使えるのって四人までと説明されてたんだけどさ。ヴィル入れて五人だったじゃん?」

「オー、アイシーね」


 ヴィルはどこ行った?

 状況からして近くに飛ばされてると思うんだけど。

 アトムが腕組みをする。


「呼んでも返事がないんで。向こうにでっかい聖堂らしき建物があるんでやす。そちらかもしれやせん」

「悪魔が聖堂に? マズくない?」


 何事か考えていたクララが口を開く。


「ユー様、この雨変です。わずかに聖属性を帯びています。雨を嫌って建物の中に飛び込んだのかも」

「げ!」


 高位聖職者には悪魔を押さえ込む力を持っている者もいる。

 ヴィルが危ない!


「速やかにデカい建物と周辺を探索、ヴィルを見つけよう」

「ボス、聖堂との通路の途中にゲートがあってロックされてるね。デストロイする?」


 ドーラ大陸内で大きな聖堂を建てられるほどの宗教勢力といえば、おそらくは聖火教だろう。

 この前の掃討戦では友好関係だったし、なるべく騒動は起こしたくないなあ。


「迂回して聖堂側に出られるところを見つけよう」

「魔物がいやすぜ」

「望むところだね」


 ユーラシア隊出撃。

 ユーラシア隊って響きはいいな、ユーラシア組よりは。

 先ほどダンテが言ってた門が見える。


「結構立派な門だね。魔物を中に入れたくないがためのものだと思うし、やっぱり壊すのは最終手段とする。北の森を探索して、西の聖堂側へ抜けられるところを探すよ」

「「「了解!」」」


 ネズミのデカいやつが現れた。

 掃討戦で見たのと同じ魔物だな。

 してみるとここは、アルハーン平原の一部だろうか?


「雑魚は往ねっ!」


 魔物を蹴散らしながら進む。

 当然、素材とアイテムも回収していく。

 いや、急いでるよ?

 でもアイテム拾うのは冒険者のエチケットだもん。


「姐御、ここ通れやす!」


 木の陰の柵の隙間から聖堂のある敷地内へ。

 さすがに敷地内には魔物がいない。


「こっちの敷地内は聖属性が濃いです」


 クララの指摘だ。

 どうやら雨じゃなくて、定期的に屋根から薄い聖水を噴霧してるっぽいな。

 おそらくは魔物避けだろう。

 ヴィルはこの聖水噴霧に驚いて聖堂の中に入ってしまった可能性が高い。


「入口はどっちだろうな?」


 ぐるっと回って南側に立派な出入り口を発見。

 『聖火教アルハーン本部礼拝堂』の看板がある。

 やはり聖火教か。


「乗り込むぞー!」


 ドアを開け内部へ。

 趣味のいい絵が飾られ、あちこちに火が焚かれている。


「こんにちはー」

「あら、お客様でしょうか?」


 修道女らしき女性が声をかけてくる。

 あたし達が信者には見えないんだろうな。

 精霊連れだし。


「うん、ここに悪魔が来なかった? 喋ると『ぬ』っていう語尾がつく子」

「来ましたよ。よく御存じで。あっ、あの悪魔の被害に遭った方ですか? 奥の間で大祭司ミスティ様が尋問しています」


 よし、ビンゴだ!

 ヴィル救出作戦開始!


「被害に遭ったんじゃなくて、あの子あたし達の仲間なんだ。転移する時のトラブルでここに飛ばされちゃって。悪気があったわけじゃないんだよ、ごめんね」


 修道女が信じ難いものを見るような目をする。


「悪魔の……仲間?」

「悪魔の仲間じゃなくて、悪魔が仲間だよ。奥の間だね?」


 あたし達は奥へ通ろうとする。


「お待ちください! 何を?」

「もちろん悪魔ヴィルを返してもらうんだよ。大祭司さんと交渉してね」

「なりません! 聖火教には聖火教の秩序があるのです!」

「あたし達も、むざむざ仲間を見殺しにできないんだ。そこどいてくれる?」

「皆さん集まって! 招かれざる侵入者です!」


 人が駆け集まってくる。

 聖騎士二名、ハイプリースト一名、修道女四名か。

 ハイプリーストが怒鳴る。

 掃討戦の時とは違う人だ。

 

「お前、精霊使いユーラシアだな!」

「そうそう、よろしくね。あたしも有名人になったもんだ」

「何の用だ!」

「今、修道女さんにも説明したんだけど、うちの悪魔の子がここに捕まっちゃったみたいなの。無断で侵入したことは謝るから、返してくれない?」

「返せるわけがないだろうが! 悪魔の眷属めが!」

「眷属じゃないって。あたしが主人」

「誤魔化されんぞ!」


 困ったなあ。

 誤魔化してもいないし、何一つウソなんか吐いてないのに。


「あんたらじゃ話になんないから、大祭司さんに会わせてくれない?」

「通りたいなら我々を倒してから行け!」


 実に三下臭のプンプンするセリフ。

 でも実際に言われてみると敵対の意思だな?

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