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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第120話:幼女悪魔登場

 ――――――――――三五日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「ふーん? こりゃまたすごく変わったところに出たね」


 あたし達は新しい『地図の石板』から出た、悪魔をめぐる戦いの転送先に来た。

 アルアさんとこの工房の交換ポイントに余裕があり、またピンクマンの転送先で得た未交換の素材もある。

 パワーカード工房へ先に行く手もあるのだが、だからと言って初見の悪魔に対して何か対策が打てるわけでもない、というのがパーティー共通の意見だった。


 一般に悪魔に対しては聖属性による攻撃が有効とされる。

 しかしアルアさんのところでもらったパワーカードの交換リストの中に、未だ交換対象とならないカードも含めて聖属性を扱えるものがない。

 世の中に聖剣や魔剣がごく少ないのは、聖属性や闇属性を扱うことがすげえ難しいからだそーな。

 どうやらその原則は、パワーカードにも適用されるらしい。


 じゃあまず行ってみよ?

 あとのことは様子見てから考えればいいじゃん、というのがパーティー共通の意見だった(うそ)。

 まあ行ってみないと、何をどう対策しなきゃならんのかさえわからんしな。

 とりあえず砕けない程度に当たってみて、対応難しけりゃ転移の玉で逃げ帰ろうぜとゆースタンスだ。


「ユー様。何でしょうかね、これ?」


 掌サイズの辺だけ青く光る真四角の箱のようなものが、無数に並んで宙に浮いているのだ。

 この青四角がない部分が道として歩けるようになっている。

 空間全体は光がないので、光る青四角がなければ暗くて見えないかもしれないな。


「この青いやつは鉱物のようでやすが……見たことのないものでやす」

「少なくとも素材扱いされているアイテムではありませんね」

「ふーん。なかなか好奇心を刺激するオブジェクトだよね。奇麗だし。いくつか持って帰ろうか?」

「ボス、アテンションね。アラームかも知れないね」

「あり得るな。放っとこう。素材も薬草もアイテムもないし、ガッカリだ」

「姐御はブレやせんね」

「おまけにお肉もいないよ。どうなってんの? このダンジョン、サービス精神足りなくない?」


 うちの子達から笑い声が出ない。

 こらアトム、ムードメーカーのあんたが委縮してどうする。

 どーも悪魔と聞いてから、うちの子達が縮こまってる気がする。

 精神生命体として精霊より悪魔の方が格上なのかなあ?


「悪魔も精霊と同じで実体を持たないんだよね。何が違うの?」

「大体同じでさあ」

「大体同じね」

「どっかであったな、このやりとり。マンネリをエンターテインメントにまで昇華させるのは多大な努力を必要とするよ。精進するように」

「へえ」「イエス、ボス」


 圧倒的に足りてない情報量を補うのはクララの役目。

 これがうちのパーティーのお約束。


「ユー様。成り立ちは精霊でも幽霊でもいいのですが、生命力や精力、感情を吸収して自らの力に変えられるようになった存在が悪魔です。低位の魔族はその転換が中途半端だったり、あるいは高位の魔族が生み出したものだったりします。高位の魔族は主に人間などの知的存在の悪感情をその糧とします。一方で人間の信仰心を自らの力に変えられるのが神や天使で、特に天使は悪魔と対立軸にある存在です。通常、悪魔は闇属性、神や天使は聖属性を得意とし、この闇と聖の属性もまた互いに対立属性になります」

「ありがとう、クララ。さすがうちのパーティーの知性」

「えへへー」


 クララのフニャッとした笑顔は癒されるなあ。

 しかしとりあえず道みたいになってるし、青四角のないところを進むしかないようだ。

 他は通れないっぽいもんな。


「あたしが先頭で行く。アトムは最後尾で後ろに警戒して。クララとダンテは間に挟まって、大丈夫だと思うけど一応両サイド見ててね」

「「「了解!」」」

「ダンテ、魔力でおかしいと感じるところある?」


 精霊は皆、魔力に対して敏感のようなのだ。

 特にダンテは、空間とか大きな魔力の気配や雰囲気といったものを得意としているみたい。

 何か感じ取れることがあるか?


「スペース自体はインディペンデントで安定してるワールドね。ちょうどレディーのチュートリアルルームに似てるね」

「バエちゃんとこに似てる?」


 ほう、実に興味深い内容の発言だ。

 ここもチュートリアルルームも周囲から独立した空間なのか。

 つまりあたし達の世界とは別の世界とゆーこと。

 おそらくチュートリアルルームも、バエちゃんの元々住んでた世界とは別物なのだろう。

 ははあ、ちょっと仕組みがわかってきたぞ?


「ジススペースから魔力のウェーブは感じないね。バット、道を真っ直ぐ行った先にストロングなパワーがあるね」

「そいつが悪魔かな。会ってみないと始まんないみたいだね。さあ、行こうか!」


 青四角の間をどんどん前へ進む。

 魔物も素材も本当に何もない。

 あたしは青く光る四角い石を愛でる趣味はないので、マジで道中楽しみがない。

 いきなりボス戦なのかなあ。

 今までこんな転送先はなかったから、ちょっと戸惑うわ。

 ボスドロップがよっぽどいいものじゃないと割に合わないんだけど。


「誰ぬ!」


 正面から甲高く鋭い声が飛ぶ。

 対するあたし達の反応も一致した。


「「「「ぬ?」」」」


 突き当りにぽつんと置いてあった椅子に、本クエストのターゲットであろう存在は座っていた。

 想像していたイメージよりもかなり小型だ。

 見かけ五歳児くらいだな。

 クララよりも随分小さい。

 黒と赤を基調とした礼服みたいな恰好をしてるところは悪魔っぽいが、カールした艶のある白髪と犬耳がとてもチャーミングだ。


「わっちは今、機嫌が悪いぬ! 返答次第じゃ、ただではおかんぬ!」


 語尾といい一人称といい、ものすごくキャラが立ってる。

 実に素晴らしいじゃないか。


 最近レベルが上がったからか、相手の強さもよーくわかるようになった。

 多分あの子はレベル五〇近くある。

 まともに戦えば、あたしらが束になってかかるよりも強いんじゃないかな。


「ボス、アレはかなりハイクラスの悪魔ね。アテンションプリーズ」


 ダンテが注意を促すが、もーそーゆーのどうでもよくなったな。

 目の前の悪魔よ、憂鬱そうな顔を見せてもムダだ。

 あたしの中のセンサーが敏感に感じ取っている。

 ……あんたさては、とびきり可愛い幼女悪魔だな?

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