第117話:ソル君パーティー帰還
ダン、ピンクマンと共闘したあと、ギルドで待ち合わせる。
素材とアイテムをうちのパーティーでもらう代わりに、食事をごちそーする取り決めだったからだ。
買い取り屋で換金をすませて食堂に行ったら、ソル君パーティーがいた。
「おーソル君達、お帰りなさい」
「「「ユーラシアさん!」」」
ソル君アンセリの声がハモる。
石板クエスト配給が再開するまでの休みで、ソル君パーティーはアンセリの故郷であるカトマスの村を訪れていたはずだ。
「つい今しがた、戻ってきたんですよ」
「楽しかった?」
「勉強になりました」
ソル君疲れてるような気もするが、アンセリがツヤツヤしてるから差し引きプラスだろ。
たまには里帰りもいい。
「カトマスはあたしも興味あるんだよね。いつか行ってみたいな」
「ユーラシアさんも来ればいいじゃないか」
「レイノスと違って人間臭いいい村ですよ」
「うーん、ちょっと遠いんだよな。うちは畑があるから留守にできなくてさ」
カトマスはギルドから西へ強歩一日弱あるらしいのだ。
自力で行くのは当面ムリそう。
カトマス行きの転送魔法陣を持つか、カトマスをホームにしている人に連れていってもらうかしないな。
「おいユーラシア、勝手に注文しとくぞ?」
「あたしらの分もお願い。同じのでいいから」
ダンとピンクマンが茹で小麦粉麺の炒め物を人数分と、大皿の蒸し肉とサラダの盛り合わせを注文する。
「クエストの再開は明日からのようですね」
「うん、楽しみ。レベル上がってるから、かなり強い魔物相手でも戦えると思うんだよね」
「ユーラシアさんは最近何してたんだ?」
アンが聞いてくる。
何って言われても新しい石板クエストがないし、冒険者っぽいことはほとんどしてないな。
「……お肉ばっかり食べてた気がする」
「何ですか、それ?」
単なる事実なんだよなあ。
アンセリは笑うが、ソル君は何かを察したようだ。
ダンとピンクマンは苦笑している。
「カラーズで焼き肉親睦会ってのやってたんだぜ。村三つ巻き込んで」
「ユーラシアさん主催ですか?」
「主催ってゆーか、やろうぜって言ったら皆が乗ってきてさ。カラーズの各村って仲悪いから、何とかしたかったんだよ」
「うむ、ユーラシアのおかげだ。小生もカラーズ諸村の関係が悪いままではいかんと思ってはいたのだが、何もできなかった」
ピンクマンの意見は頷ける。
『アトラスの冒険者』として外の世界を見ちゃうと、どーしても仲悪いのは損だっていう考え方になる。
あたしは損が嫌いなのだ。
街道の中継点にあるカトマスはいかに?
「カトマスって、どういうところなの?」
「とにかく人の行き来が多くて、騒々しい村ですよ」
「特に村の正門付近は、商人や旅人、冒険者なんかでいつもごった返しているんだ」
セリカとアンが口々に言う。
カトマスは西域への入り口にあり、自由開拓民集落群の生産物と、逆に西域に足りないレイノスからの物資が集まる村。
だから人口以上に規模が大きく感じるのだそうだ。
いいところだなあ。
「西への街道は、ところどころに魔物除けが埋め込まれているという。巷に言われているほど頻繁に魔物が出るわけではないんだ」
「ただ盗賊が……」
「盗賊?」
何と西域には、自由開拓民集落とは名ばかりの追い剥ぎ村も存在するという噂だそーな。
マジかよ。
「食べていくのは大変だし、ものは高く金はない。背に腹は代えられないから旅人を襲う。わからんではないんだが」
「もちろんほとんどは真面目に運営している集落のはずなんです。真面目な集落まで十把一絡げの悪評で迷惑を被るのは可哀そうです」
「なるほどなあ」
自力で食べていけない集落があることを考えると、自給自足できているカラーズ各村は大したものなんだな。
西方に移住したメンバーは息災だろうか?
「あたしの出身の村の人と精霊が、街道の果てに移住したんだよ。アンセリの話聞くと心配だなあ」
「もうですか。祝勝会で聞いた話ですよね?」
ソル君が口を挟んだ。
「そうそう、街道の果ての塔のあるところって言ってた」
「冒険者を募集してるという話が、カトマスでも聞こえましたよ。初心者大歓迎って」
「もう? じゃあまずまず順調なんだな。よかった」
初心者大歓迎ってのはいいな。
参入のハードルが低い。
「村が冒険者募集ってのはどういうことですかね?」
掃討戦祝勝会の時に聞いて知ってるはずなのに、ソル君が聞いてくる。
ダンとピンクマンに聞かせるためだろうな。
ソル君は配慮のできる子だから。
「その塔が魔力の集中してるところにあって、取っても取っても素材が湧くんだって。で、素材を冒険者に採取させて買い取る、集めた素材を加工するなりレイノスに売るなりするみたいだよ」
「へえ、うまい仕組みですね」
「買い取りレートは知らないけど、上手に回れば冒険者も潤うね」
ピンクマンがボソッと呟く。
「西の塔は『永久鉱山』なのか……」
「ピンクマンは『永久鉱山』を知ってるの?」
どこで仕入れる知識か知らないが博識だな。
「魔力の入出条件が適切ならば、理論上内部リソースが減らないらしい、ということは。実際に存在するとは知らなかったが」
「あるんだよ。ちなみに一昨日あたしがコブタマン狩ってたダンジョンも『永久鉱山』なんだ。だからコブタマンの肉なら、狩り尽くす心配なしに食べられるの」
「どうしても結論が食い意地になるのな」
ダンの言葉に皆が笑う。
食は何より大事だとゆーのに。
「明日クエストが来るのかー。久しぶりだから嬉しいよ」
「ユーラシアさんのところへは、どんな感じで『地図の石板』が届くんですか?」
あっ、皆のところにどうやって来るのかは興味あるな。
「うちの南に海岸があってさ。そこに流れ着いたのが最初だな。イレギュラーなもらい方することもあるけど。ソル君のところは?」
「飼っているイヌがくわえてきますよ」
「ユーモラスだな。見てみたい。ピンクマンは?」
「飛んでくる、んだと思う」
「へ?」
「気がつくと地面に刺さっているのだ。どうやってるのかわからんが」
言われてみると海岸に流れ着くのもイヌが持ってくるのも、どうやってるか謎だな。
『アトラスの冒険者』恐るべし。
「いろんなパターンがあるんだなあ。とにかく明日からまた頑張りましょ」
「「「「おう!」」」」




