第116話:作業だ作業
「おおう、ダンジョンだったか」
ピンクマンの持ってる転送先で、最も魔物の強いところに招待してもらった。
共闘だから広くて戦いやすい野外のエリアだと思ってたよ。
ダンジョンってのは意外だったな。
うちの子達もキョロキョロしている。
ピンクマンが説明してくれる。
「先住亜人の古代遺跡であるな。石畳が壊れていてつっかかるところがあるので、足元は注意してくれ」
ふむ、ダンジョンとはいえ、広くて見通しは利くな。
不意打ち食らうこともないだろうし、戦いやすそうだ。
足元注意とは言ってたけど、滑ることはない。
太陽の方向と風向きも気にする必要はなしと。
「魔物はどんなやつが出るかな?」
「アンデッドが多いな。それと植物系の魔物か。総じて火属性の攻撃には弱い。比較的物理攻撃力は強めだが、魔法攻撃をしてくる魔物は人形系のみだ」
「あっ、人形系が出るのか」
「複数で出たこともあるぞ」
「マジか。楽しみだなあ」
「小生『経穴砕き』は持っていないゆえ、人形系が出た場合は完全に任せる」
『経穴砕き』はバトルスキルだもんな。
魔法じゃないから魔法銃では扱えないんだろう。
人形系の時は近接物理に切り替えるみたいな、節操のないことをピンクマンはしないらしい。
後衛からの魔法銃攻撃に特化してるんだと思われる。
ぜひ見てみたいもんだ。
「わかった。じゃあ最初の一回はピンクマンの戦いぶりを見せてくれる? 二回目以降はあたしの作業で片付けるから」
「作業?」
作業なんだよ。
ピンクマンが意を計りかねたような顔をしている。
ダンがニヤニヤしながらその肩をポンポン叩く。
「作業だよ、作業」
「お仕事だぞー」
お、早速魔物のお出ましだ。
ではレッツファイッ!
ダンテが実りある経験を発動! ピンクマンがファイアーボール弾を連射! ゾンビ、マミー二体ずつを倒した。瞬殺! 鮮やか!
「すごいすごい! ビックリしたよ! ピンクマン強いんだ!」
「な? 一見の価値ある戦闘スタイルだろ?」
どーしてダンが得意そうなんだ。
「よーくわかった。事前に準備できるとは言え、消費マジックポイントが多くなっちゃうね。あとはうちのパーティーに任せて!」
「作業だ作業」
「もし事故があったら、ピンクマンとダンテで全力火力ね」
◇
幾度かの戦闘のあと、ピンクマンが呆然と呟く。
「これが作業か」
ダンテの『実りある経験』、アトムとダンで攻撃を受けクララの『些細な癒し』、とどめにあたしの『雑魚は往ね』。
ほぼほぼそんなパターンだ。
ピンクマンの出番がない。
とゆーかピンクマンはマジックポイント節約しててよ。
不測の事態があったらよろしく。
「ほとんどマジックポイント使ってないんだろ?」
「うん」
厳密には『実りある経験』は少しマジックポイントを必要とする。
しかしダンテの装備している『プチエンジェル』はマジックポイント自動回復付きなので、実質ゼロコストになるのだ。
探索や経験値稼ぎの時は自動回復が重要になるなあ。
「さあ、経験値と素材をじゃんじゃん稼ごう!」
「作業だ作業」
そうそう、作業だ作業。
◇
「雑魚は往ねっ!」
午前中ずっと共闘していた。
ピンクマンとダンのレベルがそれぞれ上がったようだ。
「ユーラシアが経験値を稼げる理由がわかったろ? マジックポイントは使わねえ。ノーコストのヒットポイント回復手段と殲滅手段がある。だから長時間探索していられるんだよ。おまけに経験値倍増スキル。ひでえ話だぜ」
「ひどいゆーな。盛大に感謝しろ」
「わ、悪いな、何も手伝えなくて」
「アンとセリカもパワーレベリングの時、同じこと言ってたな」
ピンクマンが恐縮するけど、ダンは悪びれる様子もない。
全然構わないんだぞ?
損するわけじゃないし。
『雑魚は往ね』の溜め技という性質上、戦闘に参加するメンバー多い方が事故の確率が減るし。
「全部素材とアイテムもらっちゃって、本当にいいのかな?」
「ああ、最初の取り決めだからな」
「昼飯奢れよ?」
「もちろん。あっ、冒険者の醍醐味が出た!」
踊る人形三匹組が現れた!
しかも何と全部倒せたのだ!
さすがに『実りある経験』を使う余裕はないのだが、黄珠三個と墨珠一個をゲット。
やったぜ!
「ここかなり素材多めのダンジョンだよねえ?」
「魔力濃度がやや高いようだ。小生があまり奥の方まで探索に来ていないということもあるのだろうが」
魔力濃度が高いと素材が多いんだ?
ピンクマンは物知りだなあ。
数も結構なもんだけど、今まで手に入らなかった素材も拾えたから嬉しいな。
アルアさんのパワーカード工房行くのが楽しみ。
うん、今日は充実していた。
共闘は刺激があって楽しい。
たしかなまんぞく。
ダンが言う。
「あの『雑魚は往ね』、とんでもない技だろ?」
「あの威力でノーコストというのは驚く。射程も長いから、弱点らしい弱点が本当に溜め技であるという一点しかない」
「いや、溜め技の弱点が大きいんだって。最初使い物にならなかったもん」
「今使えるならいいじゃねえか。あんたんとこには頑丈な精霊がいるからな」
ダンがアトムをチラッとみると、アトムがニヤッとした。
『雑魚は往ね』を使うには、魔物の攻撃を引き受けてくれる盾役アトムの存在が不可欠なのだ。
「ピンクマンの瞬間火力は大きいけど、あの戦い方はレベル上げには向かないよねえ」
「うむ。ただ小生はクエスト進めることを目的にしていないからよいのだ」
「ああ、その辺はあたしと同じだ」
「ん? ユーラシアは大喜びでクエストこなしてるイメージあったけどな。飯が一番クエスト二番、三時のおやつに魔物狩りって感じで」
ダンのイメージの中のあたしってどんなだ。
「うちの子達との生活の方がうんと大事かな。クエストは楽しいし目先の目標にはなるけど、どーしてもってわけじゃないんだよね。でも転送先で知らない人と会ったり、知らなかったことを知ったりするとワクワクする。強くなるとやれることが増えるから、レベルはなるべく上げておきたい」
ピンクマンが言う。
「今日のでよくわかった。ユーラシアほど効率的にレベル上げしてる冒険者はいないだろう。ペペ様は別だが」
「あたしも魔境に行けるようになったら、ペペさんのレベル上げを真似たいなあ」
「ドラゴンが絶滅すんぞ? 素材が手に入らなくなるからマジで止めろ」




