第111話:魔法銃士と明後日の予定
ダンがピンクマンに精霊の依頼について説明する。
「最近依頼受付所の壁に案山子が立てかけてあるんだよ。サクラさんにこれ何なの? って聞いたら精霊だって教えてくれたのさ。まさか依頼主だとは思わなかったが」
「依り代タイプの精霊ということだな? どうやってギルドまで来たんだ? ユーラシア自身が引っ張ってきたのか?」
「いや、違くて。『精霊の友』って呼ばれる精霊親和性の特に高い人にたまたま出会って、ギルドまで連れられて来たみたいなんだ」
あたしも詳しいことは聞いてないから知らんけど。
ピンクマンが得心したように頷く。
「なるほど。精霊がわざわざギルドに来てまで出す依頼とはどんなものか、興味あるな。内密でなければ教えて欲しいものだが」
「強草、堅草、賢草、耐草、速草、月草、体力草、魔力草を一株ずつ持ってこいって」
二人が難しい顔になる。
「ステータスアップの薬草をほぼ全種類か。厳しいな。特に月草は困難だ」
「月草はレア度が高いみたいだね。たまたま掃討戦で月草含めて四種類のステータスアップ薬草を手に入れててさ。残り四種なの」
「残り四種ったって、手に入れようと思うと難しいだろ。期限ありならほぼムリだ。持ってないやつ手に入れたら売ってやろうか?」
「ありがとう。でもこの依頼に期限はないんだ。ゆっくりやろうと思って」
ダンとピンクマンが身を乗り出して聞いてくる。
「で、報酬はどうなんだよ?」
「うむ、精霊が何を目的としているのかも気になるところだな」
「食ったほうが得な報酬じゃ割に合わねえだろ。クエスト完了の経験値に多少色つけてもらったところで、ユーラシアほど簡単に経験値稼げる冒険者は他にいないんだし。ペペさんを除けばだが」
「案山子の精霊が何でステータスアップ薬草を欲しがってるかは、聞かなかったからわかんないな。報酬はアッと驚くようなものだって」
「何だそりゃ?」
ダンが眉をひそめる。
「話にならねえな」
「そんなことないよ。あたしすごく楽しみなんだ。だって、精霊がわざわざギルドに来てまでしたかったことがあるんだよ? 何なのかなーってね」
ピンクマンが苦笑する。
「依頼主が精霊では、精霊使いユーラシアが請けるしかないだろう。あとが楽しみであるな」
「もう納めた四種の薬草は何なんだ?」
「強草、賢草、月草、体力草だよ。今、速草と魔力草持ってるからギルド行ってこようかな」
「ええ? どうしてそんなに簡単にレア薬草が手に入るんだよ?」
「運がいいから?」
ダンがあたしの運のステータスが高いことを思い出したか、軽く目を見開いている。
運が関係あるかは知らんけど。
「もうここには用ないんだろう? ギルドに行こうではないか」
「転送魔法陣こっちだよ」
◇
「ではギルドカードをお返しいたします。今回、速草と魔力草を納入していただきましたので、残りは堅草及び耐草になります」
「おう、仕事が早いな。待ってるぜ」
「うん、期待してて」
案山子の精霊がいきなり喋ったので、ダンとピンクマンの腰が引けてる。
それくらいのことでビビるんじゃないよ。
「石板クエストの再分配開始は三日後って聞いたけど、合ってるかな?」
「はい、先ほど正式発表させていただきました。こちら御覧ください」
何々、茸舟の月(一〇の月)四日から新規クエストを交付いたします、か。
明日は三村合同焼き肉親睦会だから、明後日が一日空いちゃったな。
おっぱいさんに挨拶して依頼所を離れる。
さてどーすべ?
「これから何か、予定あるのか?」
「パワーカードの工房行こうと思ってる。掃討戦で結構素材も手に入ってるからね。でも明後日空いちゃったんだよなー」
持ってる転送先は、今のレベルからすると効率のいい経験値稼ぎはできないだろうしな。
「明後日? じゃあ俺とカールと共闘訓練しねえか? カールの転送先で。おい、いいよな?」
「小生は構わんが」
「あたしもいいけど、何で?」
ダンが言う。
「早い話が、ユーラシアの効率のいい経験値上げに乗っかろうってことよ。拾った素材とドロップアイテムは全部あんたのものでいい。代わりにギルドで飯奢れ。どうだい?」
「いいよ。ピンクマンもいいのかな」
「うむ、問題ない」
経験値はさほど稼げないだろうけど、行ったことないところだと今まで採取できなかった素材が手に入るかもしれない。
共闘するのは楽しいしな。
ダンが破顔する。
「カールにもあの『雑魚は往ね』とかいうひでえ技、間近で見せてやりたかったんだよ。あんたもカールの戦い方見たいだろ?」
「ひどいゆーな。ピンクマンって後衛なんでしょ? 戦闘スタイルは知らないんだけど」
興味深いって知ってれば、掃討戦の時に見せてもらってたのに。
「カールは魔法銃士だぜ」
「魔法銃士?」
何それ?
聞いたことないな。
「パワーカード使いのあんたは、武器・防具屋の品揃えを隅々まで確認したことないだろ? 魔法銃ってものを売ってるんだ。魔法を弾として込めて撃ち出すってやつな」
「普通に魔法撃つのと何が違うの?」
ピンクマンが説明する。
「魔力の集中度が上がる分、若干元の魔法より威力は高くなる。それからこっちの方が重要なのだが、六発まであらかじめ用意しておき連射できる」
「へー、じゃ両手に銃持ったら一二発まで連続攻撃できるってこと?」
ダンとピンクマンが顔を見合わせる。
「理解が早いな」
「強えだろ?」
「うん、強い。魔法銃はどんな魔法でも撃ち出せるの?」
ピンクマンが言う。
「銃のグレードによって、どの規模の魔法まで撃ち出せるかが決まっているんだ。小生は二丁の銃を所持しているが、両方とも最もグレードの低いもの」
つまり『ファイアーボール』や『ウインドカッター』みたいな初級クラスの魔法を、一二連まで撃ち出せるということか。
実用的だな。
「ピンクマンは元々魔法使いで、連射に魅力があって魔法銃士になったということなのかな?」
「いや、カールは魔法系の固有能力を持ってないんだぜ。魔法力は高いのに。だからコツコツ金貯めて、魔法買って銃買ってここまで来たんだ」
なるほど、魔法力の高さを生かすためか。
そしておそらくボッチでも複数の魔物と戦うために、魔法銃で連射というスタイルを編み出したのだろう。
いろんな人がいるなあ。
「明後日楽しみにしてるよ」




