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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1015話:最も重要なこと

「あんた、これからどうするんだ?」


 燿竜珠をおっぱいさんに納め、うちの子達及びダンとギルドで昼食をいただいたあとのひと時だ。


「午後のこと? 悪役令嬢をからかいに行きたいんだけど、ちょっとまだ時間が早いんだよね。もう一、二時間経ってからかな」

「悪役令嬢だ? 相変わらずあんたのやることはわからねえが、からかいに行くってので大体察したぜ」

「大体察したぬ!」


 アハハと笑い合う。

 精神の潤いは必要だからね。


「しかし一、二時間か……」

「何なの?」


 ダンにしては歯切れが悪いじゃないか。


「もっと奢ってくれようとしてたの? 一、二時間あれば十分だぞ?」

「違えよ。 レイノスに付き合ってもらいたかったんだ」

「デート?」

「そんなところだ。姉の店知ってるだろ?」

「えーと、確か『サナリーズキッチン』だったよね」


 ダンの実家である『オーランファーム』の農作物をふんだんに使った食堂だ。

 フィッシュフライフェスでも揚げポテト付きの一品を提供していた。

 さすがに『オーランファーム』の直営店だけあって、ボリュームはナンバーワンだったけどな。


「『サナリーズキッチン』がどうかしたの?」

「経営がな」

「え? 『オーランファーム』の食材が安く入ってるでしょ? やっていけないわけないじゃん」

「ああ、まあ潰れる潰れないのレベルの話じゃねえんだが……」


 ハッキリ言いなよ。

 フェスの時も割と売れてたと記憶してる。


「目論見通りじゃねえんだな」

「つまり生産する農場との相乗効果が発揮できていないと」

「まあな」


 確かに食堂は安く食材を仕入れるメリットが出ている。

 しかし食堂が当たってくれないと、ファームの評判は上がらないし出荷量も多くならないということらしい。


「んー? でも『オーランファーム』産の野菜は結構レイノスに入ってるでしょ? 『サナリーズキッチン』が当たる当たらないに関係なく」

「移民が多くなるから、生産量増やせって話があったろ? ドーラ全体としては農作物足りないのかもしれねえが、レイノスやカトマスの人口はそう増えてねえ。生産量増やしたとしたら、どこで消費するかってのも問題になる」

「ふむふむ」


 『オーランファーム』の農産物はレイノス次いでカトマスに出荷されるから、そこで多く消費されなきゃいけない。

 で、『サナリーズキッチン』で捌くことを考えたが、思ったほどは繁盛していないということか。


「農場の跡取りっぽい悩みだねえ」

「冒険者っぽくなくて幻滅したか?」

「いーや。冒険者として一方向しか見てないのは二流三流だと思うし」


 物事の解決方法を探るのには、いろんな知識や手段があった方がいいに決まってる。

 あたしがゴリ押し好きなのとは別の話だ。


「美少女精霊使いの意見を拝聴したいんだ。どの辺に問題点があると思う?」

「うーん、ウリと客層かな」

「ウリと客層?」

「『サナリーズキッチン』のいいところは、御飯の量が多いところじゃん?」

「仕入れの安さを最大限に生かせるからな」


 いいことなんだが。


「腹ペコが集まるギルドや田舎だったら、大いに客ウケがいいに決まってる。レイノスでもお腹一杯食べられることをウリにすれば繁盛すると思うよ。でも『サナリーズキッチン』は店構えが可愛過ぎるんだよね」


 女性客向けの店なのだ。

 もう一つ流行ってると言いがたいなら、レイノスの女の子は食事の量が多いことにさほど魅力を感じていないのだろう。

 逆に男の人はファンシーで入りづらいということだ。

 席も小さくて男性向きじゃないしな。


「店の雰囲気は姉の趣味なんだ。おそらく変える気はない」

「じゃあ急に繁盛させるのはムリだぞ?」

「急じゃなきゃ何とかなるのか?」

「これあげる」


 ナップザックから帝国の裏町で買ったトウガラシを取り出して渡す。


「トウガラシ?」

「レイノスにはあんたんとこの農場の野菜使ってる食堂が多いじゃん? 使用してる調味料も塩、コショウ、あとはせいぜい酢、カラシとまよねえずくらい。どこで食べても味そんなに変わらないんだよ。量が多いことがウリにならないんだったら、『サナリーズキッチン』がヒットするわけない」

「味に変化をつけろということか。それでトウガラシ?」

「このトウガラシは帝国で一番人気の品種なんだ」

「ほう? 美味いのか?」

「辛味は強いね」


 でも美味いのかって言われるとどうだかよくわからん。


「でも『帝国で一番人気のトウガラシを使ってる』って煽り文句があると、食べたくなるでしょ?」

「……確かにな」


 要するに実験的な作物を提供する食堂にしろということだ。

 これなら店構えと合わんことない。


「今までのお客さんをキープしといて新しもの好きを呼び込めば、プラス分賑わうよ。魔境のクレソンだってまだレイノスには入ってないでしょ。それからショウガっていうピリッとしたアクセントのつけやすい作物があるよ。聖火教徒から買えるから、導入してもいい」

「おう!」

「ウルピウス殿下からフルーツとナッツの木を何種類かもらったんだ。ドーラ中で増やすつもりでいるから、『オーランファーム』でも協力してよ。特にモモはあんたんとこの強みにできると思うよ」

「モモ? どんなやつだ?」

「みずみずしくてあまーい果物なんだけどさ、実が柔らかくて長距離の輸送に耐えられないんだって。レイノスに近い『オーランファーム』ならピッタリだわ。ちょっと大きくなったら枝あげるから増やしてよ」

「おう、すまねえな」

「いいんだよ。ドーラの発展に寄与してくれると、あたしも嬉しい」


 ハハッ、喜んでやがる。

 本当は食後にデザートの習慣を根付かせたい。

 でもまだまだだしなー。


「大体『サナリーズキッチン』一店が繁盛したところで、野菜の消費量なんか知れてるわ。目新しい野菜や果物をどんどん『サナリーズキッチン』で提供してさ。ヒットしたやつを『オーランファーム』で増産するってゆーやり方なら、どの店も買ってくれるわ」

「あんたのドーラの発展ってのは食文化限定なのかよ」

「でもないんだけど、おいしいものが食べられるってのは最も重要だと思わない?」


 頷くダン。

 『オーランファーム』と『サナリーズキッチン』で新しい農産物を発信していくのがベストだな。


「ごちそーさま。またね」

「参考になったぜ」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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