第8話 ミサキと恐ろしい少女
「ひえー」
私がさけび声をあげます。
「はは、悪は死ね!」
とらえたはずの少女が暴れています。
どうやったか分かりませんが自力で縄をほどいたようなのです。
そんな彼女は今、剣をふりまわしています。
『スッ、ザシュ』
私の横に置いてあった箱が真っ二つに割れました。
「ひっ」
世にも珍しい飛ぶ斬撃です。
少女が剣をふるたびにあたりが傷だらけになります。
「うわあああ」
私と同じ山賊にふんした騎士団のみんなが逃げまどいます。
斬撃は目には見えません。
彼女の剣を見て攻撃を予測するしかありません。
「そんなの無理だよー」
私は泣きごとを言いながらうずくまります。
早くこの斬撃がやむことを祈りながら。
「やめろー!このバカ!」
「ふえ?」
大声をあげる人物がいました。
それは私たちがとらえた少女の仲間でした。
その仲間――少年は、縄で縛らたまま転がります。
「カイト。動くと当たるよ」
少女が忠告します。
「当たりにいってんだよ!」
ザシュ。
転がった少年に見えない斬撃が当たってしまいました。
ですが、それは少年の予想通りでした。
「よし、これでようやく自由に動ける」
少年が立ち上がります。
なんと、少年は少女の放った斬撃に自らあたりにいくことで自身を縛っていた縄を切ってみせたのです。
「な、なんて、無茶を」
私は驚きの声をあげました。
「あはは、さすがカイトだ」
それを見て少女が喜びます。
「じゃあ、これはどうかな」
なんと、少女が仲間であるはずの少年に向けて剣をふりました。
「・・・」
少年は動きません。
パサリ。
少年の髪が切れました。
「伸びてきてたからね。切ってあげたよ」
「今やることじゃねーだろ」
少年が怒ります。
「そうだね。先に山賊を殺さなきゃね」
「だめだ。殺すな」
少年が少女を止めます。
「山賊を・・・悪を放っておくっていうのかい?」
少女が剣の切っ先を少年に向けました。
「悪は裁くべきだ」
少女がにらみつけます。
「裁くのは俺たちじゃない。国の仕事だ」
少年は臆せず言います。
「彼らを放っておけば別の誰かが犠牲者になる」
「そうなる前に国に差し出す。それでいいだろ」
「よくないね。悪が生きている。それだけで人々は不安になる」
「だから、国の兵士がとらえるから安心だっていってんだろ」
少年が少女に怒ります。
「山賊が犯した罪も洗いざらい調べて相応の罰と償いをさせる。国にはそれができる。お前のくだらない感情論で勝手に殺していいことじゃねーんだよ!」
「悪は改心しないよ。償いなんてできるもんか」
少女が食い下がります。
「この分からずやが。お前も分かってんだろ。この山賊はそこまで悪いやつらじゃない。何か事情があるって」
「そうだね。事情があれば犯罪行為に手をそめる正真正銘のクズだ」
「このやろ・・・」
少年が少女の首のえりをつかみます。
「お前というやつは!」
「カイトこそ!ヒーローというのは・・・」
少年と少女が激しい口論を繰り広げます。
「・・・」
私たち騎士団はそんな二人の様子を黙って見ていることしかできません。
「んー、んー」
もうひとりのとらえていた女の子が何かを言いたがっていますが、ガムテープのせいで何もしゃべれません。
(ガムテープをとってあげようかな?)
私は考えます。
(やっぱり、やめとこう)
私たちは一応は山賊というていでやらせてもらっています。
そんな私たちが人質を解放するのはおかしいのでそのままです。
(きっと、あの二人のどちらかが助けるでしょう)
私は二人の口論が終わるのを見守ります。
そして・・・
バタリ。
「グーグー」
騎士団のメンバーがひとりまたひとり。
倒れて・・・眠っていきます。
「これでいいかい?」
「ああ、国の兵士がくるまで眠っていてもらおう」
どうやら、少年の説得が通じたようです。
これで、私たちの命は助かりました。
良かった、良かった。
「大丈夫か。アリス」
少年が縛られていた女の子の縄をほどいてあげます。
「ふー、遅いわよ。カイト!」
「レイに言ってくれて。あいつが暴れたせいで大変だったんだよ」
「あら、そうなのね」
女の子はかぶせられていた紙袋を外します。
「あら、山賊が眠っているわ」
「僕が眠らせたからね。半日は目を覚まさないはずだよ」
「よし、じゃあ早く王都に行くぞ。そんで兵士に頼んで捕まえてもらう」
三人が洞窟から去っていきます。
そして、その後ろ姿が見えなくなりました
「もう、大丈夫だよね?」
私が起き上がります。
はい、私は眠っていません。
実は不眠症で眠れないのです。
「みなさーん。起きてください」
私は眠った騎士団ひとりひとりのほおをたたいて起こしていきます。
そして、全員が起きたころに・・・
「やあ、みんな。これは何事かな?」
私たち騎士団の団長がやってきて・・・現在の説教となりました。




