第11話 カイトと新しい家
「今日はありがとな」
「ヒヒーン」
俺は馬に礼を言って厩舎を後にした。
レイとアリスはこの場にいない。
彼女たちは既にそれぞれのクラス寮へと帰って行った。
「さーて、俺も寮に行くとするかー」
俺が魔法学校に向かって歩き出す。
・・・。
「やあ、遅かったね。カイト」
校門の前でレイが待っていた。
「それじゃあ、帰るとしようか」
レイが学校から離れていく。
「えっ?校内の寮に行くんじゃないのか?」
俺が聞いた。
「いや、僕たちが住むのは寮じゃない」
レイが言った。
「えっ?どゆこと?」
魔法学校の生徒は校内の寮にするのが決まりのはずだ。
「まあ、とりあえずついて来なよ」
レイは俺の疑問に答えずにどんどん進んでいく。
「もうなんなんだよ」
俺はよく分からないままレイのあとを追いかけていった。
・・・。
「さあ、着いたよ」
王都の一等地にある家に案内された。
「なんだよ。この家」
俺がレイに聞いた。
「何って、僕たちがこれから住む家だよ」
レイが答えた。
「はあ!?こんな立派な家に?なんで?」
突然のことに俺が驚く。
「忘れたのかい?アリスは大貴族の令嬢だよ。王都に家を建てるぐらい朝飯前さ」
レイが言う。
「いや、でも魔法学校の生徒は寮暮らしがルールだろ?実際に貴族クラスの寮も存在しているわけで・・・」
「ははっ、どうだ。カイト。私が建てた家は気に入ってくれたか?」
俺が戸惑っていると女性が話しかけてきた。
「親方!?」
声をかけてきたのは大工の親方だった。
「久しぶりだな。元気にしてたか」
親方が俺を抱きしめた。
『むぎゅ』
俺は親方の胸に顔をうずめる形となってしまった。
「く、苦しいっす。親方」
「おお、悪い。悪い」
親方が俺を解放した。
「親方が建ててくれたんすね。ありがとうございます」
「気にするな。お前には色々と助けてもらったからな」
親方が言う。
親方には入学条件のボランティアで知り合った。
「それにデカパイの嬢ちゃんの親からたんまりお金ももらったしな」
親方が嬉しそうに言う。
「そ、それは良かったすね」
俺が言う。
「まあ、そういうわけでカイトのおかげで一軒家が手に入ったんだよ」
レイが言った。
「・・・どうして?」
まったく理由になっていなかった。
「はは、カイトは朝早くから夜遅くまで王都中の手伝いをしていただろ?」
親方が俺の肩に腕をまわしながら言った。
「でも、学校に通ったら寮生活になっちゃうだろ?」
「そうですけど。それが何か・・・」
親方が難しい顔をする。
「学校の寮は門限が厳しく、早朝から深夜までの手伝いができなくなっちまう」
親方が困った顔をする。
「そこで、そこの嬢ちゃんと私が校長に直談判をしたわけよ」
「はい?」
親方の言葉に俺が間の抜けた返事をする。
「つまりだよ。カイト・・・」
今度はレイが話し始める。
「学校の寮だと外部からの人は入ることができない」
レイが説明する。
「これでは君への手伝いのお願いが滞ってしまう」
レイが続ける。
「そこで、君の手伝いを理由に特例でこの一等地に住むことが許されたんだ」
レイが衝撃の事実を告げた。
「まあ、当然の結果だな」
親方が頷く。
「本当に当然なんですか!?」
俺が困惑を含めた驚きの声を上げる。
「そういうわけで、早速手伝いに来てもらうぞ」
「嘘―!?」
親方が俺の首根っこを掴んで歩き出す。
「あっ、親方。ごめんなさい。今日は来客が来ているので明日からで・・・」
レイが親方を引き留めた。
「そうか。なら仕方ないな」
親方が俺を解放する。
「た、助かった」
俺が安堵する。
「それじゃあ、明日から手伝い頼んだぞ」
「まじっすかー!?」
親方の言葉に俺が頭を抱える。
「はは、しょんぼりするな。手伝ってくれたら、お礼に胸を揉ませてやるから」
親方が大きな胸を見せつけながら言う。
「カイト。君は家で待っているんだ。僕はこれから親方の手伝いに行く」
レイが胸に釣られた。
「来客はどうしたんだよ!?」
「しまった!」
レイが頭を抱える。
すると・・・
「もう、遅いわよ。レイちゃん。カイト」
家の扉が開いてアリスが出てきた。
「ふふ、二人が楽しそうで良かったわ」
「えっ」
アリスと一緒に出てきた来客者――シスター服を着た少女を見て俺が驚く。
「ローザさん!?」
俺とレイの母親がそこにいた。




