第10話 王都への来訪者
シスター服を着た少女が王都の街を歩いていた。
「ふふ、きっと二人とも驚くわよね」
私は二人の驚いた顔を想像して笑う。
「マオー」
私の言葉に同意するようにマオが鳴く。
「おい、あの大きな羊は・・・」
「古都アルテンシラのマスコット・・・マオちゃん!?」
道行く人たちがマオを見て驚きの声を上げる。
「さすが、マオちゃん。王都でも人気者ね」
私がマオを優しく撫でる。
「マオー」
マオが嬉しそうにする。
「あのー、すみません」
「はい、なんでしょうか?」
通行人に声をかけられた。
「その子・・・マオちゃんですよね。写真を撮ってもいいでしょうか?」
「はい、構いませんよ。写真は私が撮るのでどうぞマオちゃんの隣へ」
「ありがとうございます!」
通行人は嬉しそうにマオの隣に立った。
私は通行人から受け取ったカメラを構える。
「はい、チーズ」
パシャリ。
私がカメラのシャッターを押した。
「そうだ。マオちゃんに触ってみます?」
「いいんですか!?」
通行人が驚いた顔をする。
「マオー」
マオが自身の体を通行人に寄せる。
「そ、それでは・・・失礼します」
通行人が恐る恐るマオに触れる。
「うわー、ふわふわ」
「えいっ」
私が通行人の背中を押した。
『モフッ』
通行人の全身がマオのモフモフの毛に埋もれる。
「す、すごい。まるで雲に包まれているみたい・・・」
通行人が幸せそうに言う。
「ふふ」
その様子を見て私が笑う。
「マオー」
マオが誇らしげに鳴いた。
「コケ―」
「コケちゃん!?」
通行人が慌ててマオから離れる。
しかし、通行人の肩に乗っていた鶏はマオにくっついたままだった。
鶏はマオの毛に絡まってしまったようだ。
「ご、ごめんなさい」
私が慌てて鶏を助ける。
「コ、コケ―」
救出された鶏が疲れたように鳴く。
「怪我はありませんか?コケちゃん」
「コケ―」
「良かったです」
通行人が胸を撫で下ろした。
「ごめんなさい。私があなたの背中を押したせいで」
良かれと思った行動が裏目に出てしまった。
「いえ、そんな。全身でモフモフを味わえて気持ち良かったと、コケちゃんも言っています」
「コケ―」
通行人の言葉に鶏が頷いた。
「おっと、いつまでも私たちが独占しているわけにはいきませんね」
「あっ」
気が付くと周りに人が集まってきていた。
みんなマオに興味津々だ。
「ありがとうございました。シスターさんに、マオちゃん」
「コケ―」
鶏を連れた通行人は手を振りながら去っていった。
・・・。
「お前、羊のくせにでかいな。さては、魔物だろう」
マオを見ていた子供が言った。
「マオー」
その言葉にマオが頷いた。
「やはり、そうか!よし、俺が退治して・・・」
「バカなこと言ってないで早くしなさい」
後ろにいた別の子供が彼の背中を押した。
『モフッ』
子供がマオの毛の中へと押し込まれる。
「何しやがる!?」
子供が怒った。
「後がつかえているのよ。早くしなさい」
後ろにいた子供が目の前の子供を急かす。
「ふふ、マオは体が大きいからみんなで一斉に来ても大丈夫ですよ」
「マオー」
「あら、そうなのね・・・えいっ」
私の言葉を受けて彼女がマオに抱きつく。
「うーん。ふわふわで気持ちいい・・・」
彼女がとろけたような声を出す。
「僕も、僕も!」
他の子供たちも一斉に抱きつく。
「マオー」
マオが楽しそうに鳴いた。
・・・。
・・・。
「ありがとうございました」
マオの周りに集まっていた人たちが帰っていく。
すでに日が暮れていた。
「ふー、想像以上に時間が掛かちゃったね。マオちゃん」
「マオー・・・」
さすがのマオにも少し疲れが見えた。
「そろそろ、学校が終わってあの子たちも帰ってくる時間ね」
私が時間を確認する。
「じゃあ、出発しましょう。あの子たちの新しいお家へ」
「マオー!」
マオが元気よく返事をした。
私たちは向かう。
大切な二人の娘に会いに。




