第1話 救出
「はあ、はあ」
俺は走っていた。
「・・・」
レイは俺の背中で眠っている。
レイを瓦礫から救出した俺は彼女を背負って村を飛び出した。
(少しでも遠くに・・・)
俺は走り続ける。
魔物はもう追いかけて来てはいなかった。
『もう、休んでも大丈夫』
頭では分かっていた。
でも、体が逃げることをやめない。
(もしかしたら、すぐ後ろに魔物が・・・)
嫌な妄想が止まらない。
俺は走り続ける。
それは一種の脅迫観念のようだった。
『逃げる必要はないと頭では分かっているんですが・・・逃げてないと落ち着かないんですよね』
旅人のお兄さんの言葉を思い出した。
(お兄さんもこんな気持ちだったのかな・・・)
ズルッ。
「・・・!」
転んだ。
俺が転んでしまった。
『ガサッ、ガサッ』
・・・!
後ろから物音がした。
「なんだよ・・・まだ追いかけて来ているじゃないか!」
俺が体を起こす。
「レイには手出しさせない!」
レイを庇うように俺が魔物の前に立ちふさがる。
「マオー!」
魔物が鳴いた。
「えっ?」
一目散に逃げ続けていた俺がようやく魔物の姿をしっかり見た。
そこにいたのは・・・
「・・・マオ!?」
「マオー」
マオが俺に駆け寄った。
「なんだ。お前だったのか・・・でも、無事で良かったよ」
俺がその場に座りこむ。
緊張の糸が一気に解けた。
「いや、安堵している場合じゃないか」
俺が再びレイを背負おうと手を伸ばす・・・
(ああ、駄目だ。体が思うように動かない)
走り続けて、体力が尽きた。
「マオ・・・レイを頼む」
「マオー!」
マオが俺を見て泣きそうな顔をする。
「そんな顔するなって。ほんの少し眠るだけ・・・」
寒気がした。
限界だった。
(もしかして、俺・・・死ぬのか?)
俺がレイを見る。
「スー、スー」
レイが寝息を立てている。
彼女はまだ生きている。
『助けて・・・カイト』
レイの声が聞こえた・・・ような気がした。
彼女を守りたい。
その意志が俺に力を与える。
「俺がレイを守るんだ」
寝るのはやめだ。
俺が自身の体に鞭打って立ち上がる。
そしてレイを背負う。
「マオー・・・」
マオが心配そうに俺を見る。
「大丈夫だ。安心しろ」
俺がマオに微笑みかける。
そして一歩踏み出して・・・
『ドサッ』
転んだ。
「はは、マジか」
俺はもう一度立ち上がるとレイを背負った。
諦めるという選択はなかった。
「君!大丈夫かい!」
誰かの声が聞こえた。
「えっ」
俺が驚きながら声のする方を振り返ろうとして・・・
また転びそうになった。
『ガシッ』
誰かが転びそうになった俺の体を受け止めた。
「もう大丈夫だ。私たち――騎士団が君たちを助ける」
俺を受け止めた青年が言う。
(そうか、俺たち助かったのか・・・)
俺はその事実に安堵し・・・
そのまま意識を失った。




