第11話 カイトとおとぎ話
俺の家は魔法使いの家系だった。
しかし、俺の家系は長らく魔法使いを輩出していなかった。
その理由は単純。
生まれてくる子供が男の子ばかりだったからだ。
『魔法を使えるの女性だけ』
それがこの世界の常識だった。
そんな中、生まれた念願の女の子が俺――『カイト』だった。
えっ?
男みたいな名前だって?
それにはちゃんと理由がある。
俺は両親から男として育てられたからだ。
その理由はいたってシンプルだ。
俺は魔法使いの家系に生まれた女なのに・・・
魔法が使えなかった。
『魔法が使えない魔法使いの娘は一族の恥である』
『よって、成人するまでは男として育てられる』
『そして成人後は家を追い出されてしまう・・・』
それが魔法使いの家系に生まれた出来損ないの末路・・・なんてことはない。
びびらせてしまい、申し訳ない。
今の話は嘘だ。
そんな可哀そうな理由ではない。
これは魔法使いの家系に古くから伝わる習わしだ。
俺の家だけの話ではない。
魔法使いの家系に生まれた魔法が使えない娘は・・・
『六歳の誕生日を迎えるまで男として育てられる』
そういう習わしだ。
誰が始めたことなのかは分からない。
ただ、そうするようになった伝承・・・というほど立派なものではないが言い伝えれているおとぎ話がある。
そのおとぎ話いわく・・・
『魔法使いは悪魔と交わった女性の子孫である』
『その際に女性は悪魔を騙し魔力を奪った』
『これが魔法使い誕生の経緯であり、女性しか魔法使いになれない理由だ』
『悪魔は魔力を奪った女性を恨んでいる』
『今も奪われた魔力を取り戻そうとしている』
『ゆえに、魔法使いの家に生まれた娘は悪魔に狙われる』
『しかし、悪魔はその娘に近づくことができない』
『他ならぬ悪魔から奪った『魔力』が娘を守ってくれる』
『もし、魔力を持たぬ娘が生まれたなら六歳まで『男』として育てなさい』
『そうすることで、悪魔の目を騙し『娘』を守ることができるのです・・・』
それは・・・あまりにも節穴な悪魔のおとぎ話。
けれど、世の中にはこういう人間に騙される悪魔のおとぎ話が多くある。
「人間って悪魔のことが嫌いなのかな?」
俺は幼い頃から本が好きだった。
とりわけ好きだったのはおとぎ話。
「あれ?この本は・・・」
おとぎ話コーナーで、一冊の本を見つけた。
その本のタイトルは・・・
『大魔導士ベルクと悪魔』
大魔導士ベルクシリーズ。
千年前に世界を救った英雄――ベルクについて書かれた本である。
ベルクが生きていた時代――千年前から続くこのシリーズは各地での彼の伝承をまとめた歴史書である。
「どうして、歴史書がおとぎ話コーナーに?」
当時の俺は疑問に思いながらその本を手にとった。
あとから、知ったことだが『大魔導士ベルクシリーズ』が歴史書になったのは二作目の『大魔導士ベルクと戦争』から。
一作目である『大魔導士ベルクと悪魔』はフィクションであり。
誰もしらないベルクの最後を作者が妄想で書いた・・・おとぎ話だった。
「・・・」
俺がそのおとぎ話を読む。
それは悪魔を取り扱った本には珍しく、人間が悪魔を騙す本ではなかった。
それは・・・人間と悪魔の悲しい恋の物語だった。




