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魔法学校の悪役令嬢  作者: ああああいい
第1章 偽りの少女編
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第2話 旅立ちと山賊

 僕は幼いころヒーローになるのが夢だった。

 その夢は今も変わっていない。


「よし、これでいいかな」


 僕は制服に着替えた。


「レイちゃん!準備できたー?」


 アリスが元気よく部屋に入ってきた。


「うん、ばっちりだよ」

「わー、レイちゃん。カッコイイ!」


 僕の制服を見てアリスが目を輝かせる。


「騎士クラスの制服だからね。女性の僕に似合うか心配だったけど・・・」

「すごく似合ってるわ!」


 アリスが親指を立てながら言った。


「はは、ありがとう。アリスもすごく似合っているよ」

「ふふ、当然よね!だって、私だもの!」


 アリスが嬉しそうに回転しながら制服を見せてくる。

 それに合わせてアリスのスカートがひらりと動く。

 アリスが着ているのは貴族クラスの制服だ。


「うん、とってもかわいいよ」

「ふっふーん。まあ、私としてはもう少し悪役っぽい服の方が良かったけどね!」

「悪役っぽい服ってなんだよ・・・露出高い服か?」


 カイトが会話にまじってきた。


「いや、全身黒タイツじゃないかな」

「それは推理漫画の犯人よ!」


 僕の言葉にアリスが怒りながら言った。


「ごめん、ごめん・・・ところで、なんでカイトがいるのさ」

「俺も同じ学校に通うからに決まってるだろ」

「百合に挟まる男は死刑って習わなかったかい?」

「へい、へい。下で待ってますよ。あまりにも遅かったらおいてくからな」

「そのときは馬車ごと君を殴るよ」

「やめてくれ。馬がかわいそうだろ」

「ふむ。自分よりも馬の心配かい?」


 もしかしたら、カイトは思ったよりも良いやつなのかもしれない。


「きっと、カイトはドMなのよ。殴られたら喜ぶのよ」

「それは困った。今後、彼が悪いことをしたらどうやって戒めようか」

「勝手なことばっか言ってるとまじておいてくからな!」


 カイトが怒りながら階段を下りて行った。


「さすがにからかいすぎたね」


 僕は少し反省した。


「いいのよ。こんなかわいい美少女二人に囲まれて役得なんだから。カイトは」

「はは、アリスは確かにかわいいけど。僕はどうかな」

「レイちゃんはカッコカワイイってやつよ!」

「じゃあ、悪役のアリスは恐れかわいいだね」

「・・・その二つは同時に成立しない気がするわ」

「そっか、じゃあただのかわいいか」

「そっちを残さないでよ。恐ろしいを残してよ!・・・まあ、この服は確かに恐ろしくはないわね」


 アリスが自身の服を見ながら不満そうに言った。


「確かに恐ろしくはないけど、似合ってるのは本当だよ。ほら、いつもみたいに胸を張って」

「まあ、そうね。この服も私に着られて満足しているに違いないわ」


 アリスが自身満々に胸を張る。


(・・・胸でかいな)


 思わずアリスの胸に視線がいってしまう。


「どうしたの?レイちゃん」


 アリスが不思議そうに聞いてくる。


「いや、なんでもないよ。そろそろ僕らも出発しよう。カイトが待ってる」

「そうね!行きましょう」


 僕たちは階段を下りていく。

 今日、僕はこの家を・・・この町を旅立つ。


「よお、遅かったな」

「さっき会ったばかりじゃないか。カイトは寂しがり屋だね」

「そういうことじゃねーだろ!」


 カイトが頭を抱える。


「あれ?カイトしかいないの?」

「うん?ちゃんと馬車もあるだろ?」

「馬を引く業者さんがいないってことだと思うよ」

「ああ、それなら大丈夫。俺が馬を引いてくから」


 そう言って、カイトが馬の手綱を引く。


「へー、いつの間にそんな特技を?」

「まあ、あの学校に入れてもらうために手伝いでいろんなことやらされたからな」

「なんだ、裏口入学だったのか」

「ちげーよ。人聞き悪いこと言うな。ちゃんとした労働の対価だよ」


 ヒヒーン。


 カイトが馬を走らせる。


「おおー。ちゃんと走ってるわね!」

「当然だろ。これくらい余裕だぜ!」


 ヒヒーン。


 カイトが調子に乗って馬車のスピードを上げる。

 僕の生まれ育った町がどんどん遠ざかっていく。


(今までありがとう)


 僕は小さくなっていく町にお礼を言う。


「王都まではどれくらいだっけ?」

「一時間もあれば着くかな」

「へー、意外と近いんだね」

「ああ、ホームシックになったらいつでも戻ってくればいい。送って行ってやるよ」

「はは、大丈夫だよ。卒業するまでは戻ってこない。そう決めたんだ」

「私は戻ってくるわよ。録画したアニメみたいし」

「アニメくらい王都でも見れるわ!」

「あははは」


 僕は笑った。

 そして、もう一度町の方を見た。

 馬車から見える町はもう米粒サイズになっていた。


(寂しくないと言えば嘘になる。でも、もう決めたことだ)


 僕らはこれから王都に行く。

 そして、そこにある魔法学校に通う。


(ここから始まるんだ。僕らの新しい日常が)


 僕は二人を見る。


(学校生活を通して僕らの関係も変わっていくだろう。もしかしたら、今まで通りずっと一緒とはいかないのかもしれない)


 僕は目をつぶる。


「眠いのレイちゃん?」

「違うよ。ただ、準備をしていたんだ」

「準備?」

「ああ、ちょっとしたね」


 僕はゆっくりと目を開けた。

 そこに広がる王都の風景を想像しながら。


「あれ?まだ、着かないのかい?」

「一時間かかるって言っただろーが!」

「じゃあ、寝ることにするよ。実は楽しみ過ぎて昨日眠れなかったんだ」

「やっぱり、眠かったんじゃないの!」


 二人の騒々しい声を子守歌に僕は眠りについた。


「むにゃむにゃ。カイト・・・往来で裸になるのはやめるんだ」

「ならねーよ!」


 僕の寝言にカイトがつっこんだ。


「アリス・・・その胸を分けてくれ」

「無理よ!あとレイちゃんも人並み以上にあるからね!」


 アリスが寝ている僕に言った。


「アリス!そいつの口にガムテープ貼っとけ!」

「そんなことしたらレイちゃんが死んじゃうわ!」


 ヒヒーン。


 騒がしい僕らに文句も言わず馬は走る。

 王都はもうすぐそこだ。


 ・・・。


 ・・・。


『バシャン』


 水をかけられた。


「うーん。王都の歓迎は乱暴だね」


 僕は眠い目をこすりながら起き上が・・・あれ?


「縄で縛られてる?」


 目をこすれなかった。

 別にいいけど。


「よお、目を覚ましたか」

「あなたたちは?」

「俺たちは山賊さ!」


 目の前の男が律儀に名乗った。


「悪い。しくじった。」


 僕と同じように縄で縛らているカイトが言った。


「いいよ。カイトが人質にされるのは今に始まったことじゃないしね」

「お前も捕まってんだけどな!?」


 カイトが正論をかます。


「そうだったね。山賊のみなさん、目的は?」


 僕は山賊に聞いた。


「当然、金だ。金になりそうなものはおいてけ!」

「うーん、お金は持ってないんだけど。馬車でいいかな?」

「やめろ!お馬さんがかわいそうだろ!」


 カイトが抵抗する。


「僕らの命より大事なのかい?」

「全員の命が大事なんだよ!天秤にかけんな!」


 どうやら、カイトは馬に思い入れがあるらしい。


「馬はいただく。だが、それ以外もいただく。例えば、お前らの服とかな!」


 山賊が下卑た笑みを浮かべる。


「みぐるみはいで、女は犯す」


 そういうと、山賊はアリスを引き寄せる。


「んー、んー」


 アリスはガムテープで口をふさがれていた。


「ああ、それでさっきから静かだったんだね」

「冷静に分析してんじゃねーよ!お願いだから危機感を持ってくれ!」


 カイトが僕に訴えかけてくる。


「くく、このかわいいお嬢ちゃんに命乞いされたら逃がしちゃいそうだから、口をふさがせてもらった」

「その程度の覚悟で犯罪に手を染めてんのかよ!」

「さすが、カイト。山賊相手にも物怖じしないね」

「違う。思わずつっこんじまっただけだ。山賊さん、ごめんなさい。もう舐めた口は聞きません」


 カイトが情けないことを言う。


「俺はどうなってもかまわないから、こいつらは逃がしてください。お願いします」


 カイトが僕たちを逃がそうと自身を差し出した。


「カイト・・・それじゃあ、山賊側にメリットがない。交渉するならちゃんとメリットを提示しないと」

「お、おう。そうだよな。思わず逃がしちまうところだったぜ。危ない。危ない」


 ・・・彼らは本当に山賊なのだろうか?


「ん-、んー」


 アリスが涙を流す。


『がばっ』


 山賊がアリスの頭に紙袋をかぶせた。


「ふー、危ない。涙を見たら決心がにぶっちまう」

「よく、それで女を犯すって言えたね。もっと、ひどいことになると思うけど」

「いや、お前らは犯さないぞ?だって、子供じゃん。コンプラ的にアウトだ」

「コンプラ気にすんなら、山賊なんてやらないでくれよ・・・」


 山賊の言葉にカイトが悲しんだ。

 彼の切実な願いである。


「うーん。なんか事情がありそうだけど。それを聞いたらそれこそこっちの決心がにぶるから聞かないでおくよ」


 そう言って、僕は立ち上がった。


「えっ、あれ?お前、縄は?」


 山賊が僕を見て戸惑う。

 僕は山賊の言葉を無視して・・・


 パチンッ。


 指を鳴らした。


「ヒーローショーの始まりだ」

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