第4話 カイトと旅人のお兄さん
「コーヒーできたよ。お兄さん」
「ありがとうございます、カイト・・・熱っ」
旅人のお兄さんが俺のいれたコーヒーを飲んで熱がった。
「あれ?お兄さん、猫舌だっけ?」
「いえ、一度に口に入れ過ぎました。ふーふー」
旅人のお兄さんがコーヒーを冷ましながら少しずつ口に入れる。
「うーん、美味しい。カイトの入れるコーヒーは格別ですね」
「いやー、そんなに褒めたってコーヒーしかでないよ」
旅人のお兄さんの言葉に気を良くした俺が二杯目のコーヒーの準備に入る。
「ふふ」
お兄さんが笑った。
「どうしたの?」
「いえ、コーヒーを入れるのも板についたと思って」
お兄さんが過去を思い出しながら言った。
「最初に入れてくれたコーヒーは水の中にコーヒー豆が浮いてましたからね」
「うっ、コーヒーなんて初めて見たんだから仕方ないだろ・・・あと、お兄さんはそれを美味しそうに飲んでたじゃないか」
「目が見えないのでコーヒーだと思わなかったんですよね。てっきり、タピオカの一種かと思っちゃいました」
お兄さんが舌を出して笑う。
「タピオカ?」
「はい、甘いジュースの中に弾力のあるゴム?みたいなのが入っているんです」
「ゴム?・・・なんか、美味しくなさそう」
「いや、美味しいですよ?私の食レポが絶望的なだけで」
お兄さんがタピオカを庇う。
「ふーん。そのタピオカは例のあの穴の中にないの?」
「うーん、どうでしょう。探してみますか」
パチンッ。
お兄さんが指を鳴らした。
すると、何もなかった空間に黒い穴があいた。
「どこかなー?」
お兄さんが穴の中に手を突っ込んだ。
それは収納魔法。
お兄さんが旅先で手に入れたものが乱雑に放り込まれていた。
「もう少し整理した方がいいんじゃない?」
「目が見えないから分別するの大変なんですよね」
「じゃあ、せめていらないのは捨てるとか」
「それはもったいないじゃないですか。せっけく、旅先でもらったものですし・・・」
お兄さんが穴から手をだす。
タピオカは見つからなかったらしい。
「どれも思い出の品ですからとっておきたいんですよね」
お兄さんが言う。
「ものを取り出すとき不便じゃない?」
「探している時間も楽しいものですよ。旅と一緒です」
お兄さんが笑った。
パチンッ。
お兄さんが指を鳴らすと黒い穴が消えた。
お兄さんは世にも珍しい・・・なんてものじゃない。
歴史上二人目となる男の魔法使いだった。




