第3話 憧れのヒーロー①
レイ「そういえば、魔王の件。僕に話しても大丈夫だったのかい?」
僕が疑問を口にした。
アン「当然、駄目ですね。私はライトさんとの約束――信頼を裏切ってしまいました」
アンが苦しそうに言った。
レイ「どうして……」
アンは、なぜ初対面の僕に教えてくれたのか。
謎は深まった。
アン「カイトくんからあなたのことを聞いていたんです」
レイ「カイトが?」
アン「はい。私はカイトくんのメル友なので」
アンが携帯を見せながら言った。
アン「カイトくんは律儀に朝晩。メールを送ってくるんです。まあ、私が頼んだんですけど」
アンが携帯の画面をスライドしながら言った。
アン「で、カイトくんのメールの内容のほとんどはレイさんの話なんですよ。レイが今日は何々をして~って」
レイ「カイトのやつ、日記のくせでメールを書いているな」
カイトはママに言われて日記を書いているがいつも僕のことを多めに書いてしまっていた。
そのたびにママに注意されてカイト自身のことを後から書き足す……それがいつもの流れだ。
でも、今回はママがいないから原文のまま僕のことだけが垂れ流されてしまっているようだ。
まあ、最近はマオのことも多く書いているみたいだけどね。
まったく、ほんと妬けるね。
アン「で、カイトくんはよくレイさんのことを心配しているんですよ」
レイ「まあ、だろうね」
僕とカイトでは思想に大きな違いがある。
アン「レイが一人で無茶をしないか。傷ついてないか――って」
レイ「やれやれ、僕の強さを知っているだろうに。余計な心配を……」
あるいは強すぎる僕が人を殺さなないか心配しているのかな?
アン「ふふ、似た者『姉弟』ですね。お互いがお互いの心配してる」
レイ「それは……まあね」
僕とカイトはあの村で起こった惨劇の――たった二人の生き残りだ。
また、あのような悲劇が起こって――僕らの日常を奪ってしまうじゃないか……。
心配で、心配でたまらない。
アン「本当に羨ましいですね。私もどうせ『姉妹』なら姉じゃなくて、弟か、妹が欲しかったです」
レイ「へ~、アンは姉がいるんだね」
アン「まあ、元です。姉は私を捨てて、家を出て行ってしまいましたから。ヒーローになるなんて戯言を吐いてね」
レイ「そ、それは、僕も少し耳が痛いね……」
僕も一応は、ヒーローを目指している……と、いうことになっている。
アン「レイさんはカイトくんを捨てて出ていくんですか?」
レイ「いつまでも一緒にはいられない。……でも、先に捨てるのはカイトの方かもね」
アン「どうして、そう思うんですか」
レイ「カイトは一時期、家を出ていたんだよ。まあ、その理由は僕と同じ魔法学校に通うためだったんだけどね」
アン「なら、大丈夫ですよ。これからも、ずっとレイさん一緒にいたいから、一時的に家を出ていただけじゃないですか」
レイ「そうだね……」
僕がアンの言葉に頷く。
けれど、そのカイトの選択は間違いだった。
僕がカイト一緒にいられる時間はもう少ない。
カイトは……余計なことをせず僕のそばに一緒にいるべきだった。
レイ「いや、それも僕のせいか……」
僕が魔法学校に行くと言ったせいで……。
本当に、僕は何をしているんだろうか?
オルガ(回想)『いい太刀筋だ。レイはきっといい騎士になれる』
オルガさんの言葉を思い出す。
ああ、そうだ。
僕は魔法学校に通って……騎士クラスの制服に袖を通した僕の姿をオルガさんに見せてあげたかったんだ。
きっと、喜んでくれると思うから……。
オルガ(回想)『待ってくれ! レイ!』
レイ「うっ……」
僕が頭を押さえる。
オルガさんとの最後の別れが脳裏にフラッシュバックした。
正体を隠したつもりだった。
でも、バレた。
レイ「どんな顔して会えばいいんだよ……」
あれ以来、オルガさんには会えていない。会わす顔がない。
『友達』を通して、彼の姿をモニター越し見るだけだ。
おかげで、あの嘘のネタ晴らしが出来ていない。
ただのサプライズのつもりだったのに……。
アン「大丈夫ですか? レイさん?」
アンが心配そうに僕の顔を覗き込んだ。
レイ「うん。大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
僕が姿勢を正す。
自身の弱い姿を見せ続けるわけじゃない。
オルガ(回想)『ヒーローはね。逆境に立たされたときほど笑うんだ。人々が不安がらないようにね』
それが僕とカイトを救ってくれたヒーローの言葉だった。
ああ、そうだ。笑おう。
たとえ、作り物だったとしても――
『道化師』らしくね。




