第6話 アンの兄
ライト「……はっ!」
僕が目を覚ます。
アン「おはようございます。ライトさん」
目の前にアンの顔があった。
どうやら、僕はアンに膝枕をされているようだ。
ライト「ご、ごめん」
慌ててアンから離れる。
アン「私は大丈夫ですけど……。ライトさんは嫌でしたか?」
アンが不安そうに言った。
ライト「嫌なわけないよ! むしろ、このまま永眠したかったくらいだ!」
彼女の不安を取り除こうと焦った結果、変なことを口走ってしまった。
アン「えっと、永眠……ですか?」
アンが困ったように言った。
ライト「それは比喩で……。ずっと膝枕されていたいっていうか……。その……すごく良く眠れたよ。ありがとう」
僕が感謝の思いを伝えた。
ここ最近は魔王の件で気が張っていた。
そのせいで、あまり眠れず疲れが溜まっていたんだけど……。
アンの膝枕のおかげでよく眠れたし、疲れも取れた。
アン「そうですか。それは良かったです」
アンが笑顔を見せた。
ライト「……!」
その笑顔を見て、僕が固まる。
アン「どうかしましたか?」
アンが不思議そうに僕の顔を覗き込んだ。
ライト「な、なんでもないよ」
アンに抱いてしてまった感情を押し殺す。
ライト「もう、遅いし寮まで送るよ」
僕は内心を悟られないように話題を変えた。
アン「ありがとうございます」
アンがお礼を言う。
コケ「……」
コケは何も言わない。
コケは、ずっと沈黙を貫いていた。
もしかしたら、僕とアンの邪魔してはいけないと思っているのかもしれない。
ライト「大丈夫だよ。僕とアンは……そういうのじゃないから」
僕がコケを撫でながら言った。
コケ「……」
けれど、コケは黙ったままだった。
……。
…………。
ライト「……」
アン「……」
僕とアンは手をつないで夜道を歩いていた。
『どうして、僕らは手をつないでいるんだろう?』
そんな疑問を抱いたが手を離してと言う気にはなれなかった。
アン「……着きました」
目的地の学校に辿り着いた。
アンが校内にある寮に住んでいるが、部外者の僕は校内に入ることはできない。
ライト「それじゃあ、お別れだね」
僕がアンの手を離した。
アン「ライトさん!」
アンが僕に抱きついた。
ライト「アン……? どうしたんだい?」
抱き返していいものか分からず、僕の手は宙ぶらりんとなっていた。
アン「私にも手伝わせてください。あの三人の監視……騎士団のお仕事を」
ライト「どうして、騎士団の任務のことを……」
まさか、知っていたのか僕が騎士団というだけでなく、魔王の件まで……
アン「分かりますよ。ライトさんがロリコンの変質者がじゃないなら、それ以外に学生をストーキングする理由がないじゃないですか」
ライト「それもそっか」
良かった。
アンは魔王の件までは知らないようだ。
アン「私なら学校内の彼らの動向を知れます。これはライトさん……強いては騎士団の助けになりませんか?」
ライト「駄目だ。一般人を巻き込むことはできない」
僕はアンの提案を断った。
アン「監視対象と同じ学校に通っている時点で巻き込まれているのでは?」
ライト「それは……」
もし、校内で魔王が転生を果たしたら僕は対処できない。
このままでは、アンに……学校の生徒たちの身が危ない。
ライト「君の……言う通りだ」
僕の心が揺れ動く。
アンに校内の監視をお願いし、不審な点があれば僕が出動する。
理に適っている。
アン「……私には兄がいます」
アンが急に話題を変えた。
どうしたのだろうか?
アン「その兄は騎士団に所属しています」
ライト「アンのお兄さんが騎士団に?」
誰のことだろう?
新入りの僕には心当たりが無かった。
アン「兄の名前は『オルガ』。騎士団の団長をしています」




