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魔法学校の悪役令嬢  作者: ああああいい
第14章 ヒーロー編―前編―
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第5話 公園

鳩「クルッポー」


平日の昼間……誰もいない公園に鳩の鳴き声だけが響き渡っていた。


アン「ここなら静かですし、邪魔も入らないでしょう」


さっきまでいた喫茶店は目移りするものが多く、話が進まなかった。

それで、痺れを切らしたアンに手を引かれこの公園に連れて来られた。

僕としては、あのまま話をせずに、なあなあに済ませたかったのだけれど……


ライト「……」


僕がさっきまでアンに引かれていた自身の手に目を落とす。


アン「女の子に手をつながれて嬉しかったんですか? ほんと、ロリコンですね」


ライト「違うよ。妹のことを思い出していたんだ」


アン「へ~、妹さんがいらしたんですか」


ライト「うん、そうなんだ。仲はあまり良くはないんだけど……。そうだ! ここは僕の妹の話でも……」


アン「駄目です。誤魔化されませんよ」


駄目だった。

まあ、あの優秀な妹について話すことなんて何もないんだけど。


ライト「言い方が悪かったね。厳密には優秀な妹を持ってしまった――兄である僕の葛藤と苦難を話そうと思ったんだ」


アン「いえ、興味ないです」


ライト「悲しいな。少しくらい僕に興味を持ってくれてもいいじゃないか」


アン「ストーキングの件の話が終わったら聞いてあげますよ」


ライト「それは駄目だ。話すのはどちらか片方だけ。僕のことか……そのどうでもいいストーキングの件か」


アン「ストーキングの件でお願いします」


即答だった。

分かってはいたけど、少し悲しかった。


ライト「残念だけど、話せることはないよ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」


僕は地べたに仰向けに倒れた。


アン「……分かりました」


アンはカメラからフィルムを取り出して、日の光に当てた。


アン「これで撮った写真は駄目になりまっした。良かったですね。ライトさんの弱みもなくなりましたよ」


そう言うと、アンは僕の隣に座った。


ライト「どうして、消してくれたんだい? 僕は何も話してないのに……」


僕は上半身を起こす。

そして、アンに聞いた。


アン「これはストーキングの件を聞くための脅しとして持っていたんです。でも、ライトさんは脅しには屈しないようなので」


アンが僕の体に寄り掛かった。


アン「……代わりにライトさんのお話を聞いてもいいですか?」


ライト「いいけど。別に楽しい話じゃないよ」


アン「……」


アンは無言で僕の腕を掴み……僕が話し出すのを待った。


ライト「分かったよ。話すよ。僕は――出来損ないのいらない人間なんだ」


アン「いらない人間?」


ライト「うん。だって、僕は魔法使いの家に生まれた『男』だから」


アン「魔法が使えるのは女性だけ……」


ライト「そう。そのせいで、肩身が狭くてね。しかも、あとから生まれた妹は優秀な魔法使いときた。もう、兄の威厳なんてないよね」


ぎゅっ。


アンが僕の手を握りしめた。


ライト「不幸なことにそんな僕は一冊の本と出合ってしまったんだ」


アン「もしかして、『大魔導士ベルクと戦争』……ですか」


ライト「正解。よく分かったね」


アン「有名な本ですから」


ライト「そうだね。誰もが知る千年前の英雄――『ベルク』。彼は歴史上唯一の『男』の魔法使いだった。だから、あの本を読んだ僕は希望を抱いてしまったんだ。僕も……ベルクのように魔法使いになれるんじゃないかって」


今、思えば実に馬鹿な考えだ。


ライト「たくさん、本を読んで。死に物狂いで魔法の勉強をして。……でも、駄目だった。結局、僕は魔法が使えなくて」


苦い思い出が蘇る。


ライト「まあ、夢を見てもいいことなんてないって話で……えっ」


僕が驚いて声をあげる。

アンが……泣いていた。


アン「辛かったですよね。もう大丈夫ですよ」


アンが僕の頭を抱いた。

今の僕はアンの胸元に顔をうずめる形になってしまっていた。


アン「私も魔法使いの家に生まれたんです」


ライト「君は……魔法使いだったのか?」


僕が馬鹿な質問をした。

僕に共感して涙を流してくれた彼女が魔法使いなわけないのに。


アン「いえ、魔法……使えないんです。おかしいですよね。女なのに」


ライト「……」


僕はまだマシだった。

男に生まれた瞬間、魔法が使えないことは確定していたから。

でも、彼女は……


ライト「……ごめん」


僕は謝った。

それが何に対する謝罪なのかは分からなった。

彼女の前で無神経な話をしてしまったから?

それとも……


アン「……変な人。あなたが謝ることじゃないでしょうに」


アンが僕の頭を優しく撫でた。

彼女は今どんな表情を浮かべてるいるのか。

情けないことに彼女の胸に顔をうずめっぱなしの僕には分からなかった。

……顔を上げる勇気も無かった。


アン「ふふ、ライトさんって可愛いですね。まるで、赤ちゃんみたい」


それは褒めているのだろうか?  ……んな、わけないか。

でも、その声は先程よりも明るくなった気がする。


『アンが喜んでくれるならいいか』


――そう思いながら、僕の意識は薄れていく。


ライト「スゥー、スゥー……」


心地よい温もりの中……僕は眠りについた。

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