第3話 ヒーローの誓い―中編―
ベルク「黙ってどうしたんだ? 何か思い当たる節でも?」
レイ「……そんなものないよ」
僕は嘘ついた。
ベルク「まあ、レイに分かるわけないか~」
ベルクが僕を小馬鹿にするように言う。
レイ「そうだね……」
僕は彼の挑発に乗らずに答えた。
ここで、本当のことを言えば、彼の思う壺だ。
レイ「教えてくれて、ありがとう。感謝するよ」
僕が通信を終わらせようと手を伸ばす。
ベルク「待て……感謝の裸土下座は――」
ブチッ。
僕は容赦なく通信を切った。
レイ「……彼にマオのことを知られるわけにはいかない」
モニターに映っていたあの青年は……
『千年前の英雄――大魔導士ベルク』
『十年前に会った旅人のお兄さん』
――に次ぐ『三人目』の男の魔法使いだった。
レイ「本人は『ベルク』を名乗っているけど……」
間違いなく嘘だろう。
あんな下品な男が『大魔導士ベルク』であるはずがない。
何より大魔導士ベルクは千年前の人間だ。
とっくの昔に死んでいる。
レイ「それでも彼が英雄に憧れてベルクを騙っていることには変わらない」
もし、彼がマオのことを知ったらその転生体に選ばれたアリスごとマオを――悪を殺すかもしれない。
レイ「そんなことさせるものか!」
なんとしてでも、悪魔たちの思惑を防ぎ、アリスを――
『ありがとう……レイさん!』
僕から受け取った本を大切に抱えるマオの姿を思い出した。
レイ「ああ、そうだ……『マオ』と――」
カイトも含めた――
レイ「……」
僕が一枚の写真を取り出す。
王都の家の前でママが撮ってくれた写真。
その写真にはカイトとアリスの二人が写っている。
けれど、二人の間には不自然に空いたスペースがあって――
レイ「ここにマオが入ればちょうどいいだろ?」
僕が写真をポケットにしまう。
レイ「ヒーローとして誓うよ。君たち三人の日常を守ってみせると――」
たとえ、その日常に僕がいなかったとしても。
覚悟はとうに出来ていた。
そう、王都に来てルナに出会ったあのとき――偽物の死は確定した。




