第2話 悪魔の目的
『パチンッ』
僕が指を鳴らす。
『ウィーン』と、いう音ともにモニターが出現した。
このモニターは僕が作った『お友達』とつながっている。
?「やあ、レイ。悪魔について聞きたいんだって?」
モニターに映し出されたのはローブを着た見るからに魔法使いといった風貌の青年だった。
レイ「……冷やかしか? 君たちの『先生』はどうしたんだ?」
?「先生は忙しくてね。俺が代わりに答えてやることにしたんだ。――感謝しろよ?」
青年は恩着せがましく言った。
レイ「君が質問に答えれたら感謝するよ……『ベルク』」
ベルク「ああ、それでいい。裸で地面に這いつくばって感謝するがいい」
するわけがない。
こいつはいつも適当なことを言う。
レイ「……悪魔の願いと対価について聞きたい」
僕はベルクの言葉を無視して話を進める。
レイ「実は学校でこんなことがあって……」
僕は学校で起こったことの一部始終をベルクに話した。
ベルク「それはおかしいな」
ベルクが珍しく真面目な顔をする。
レイ「やっぱり、マンドラゴラを人間というのは無理があるよね……」
あの場は納得したふりをしたがどう考えてもおかしい。
ベルク「いや、そこは問題ない」
レイ「問題ない……?」
ベルクの言葉に僕が驚く。
なら、彼が問題視しているのは一体……
ベルク「まず前提条件として願いと対価のルールは常に変化している。……悪魔の都合の良いようにね」
レイ「……そんなのあり?」
人間側が不利すぎない?
ベルク「ありだよ。――なにせ、願いを叶えるのは悪魔だ」
悪魔の都合の良いように人の願いを叶える……
レイ「決して、慈善稼業ではないってことか」
ベルク「そりゃそうだ。だから奴らは『悪』『魔』を名乗っているんだ。ちゃんと忠告してくれてるんだぜ。良い奴らだろ?」
それは良い奴なのだろうか?
誠実ではあるとは思うが……
ベルク「まあ、そんな悪魔がそれで『オッケー』と言ったなら、取引に問題はない」
レイ「……じゃあ、何が問題なのさ」
ベルク「今回、追加されたルールは、悪魔にメリットがなさすぎる」
レイ「……」
メリットがないか……。
確かに、人間に都合が良すぎたとは思う。
今回のゾンビ騒動の解決方法はあまりにもご都合主義だった。
悪魔がハッピーエンドが大好きな善性の塊であるならそれまでだが……
『悪』を自称する彼らは決して『善』ではない。
ベルク「悪魔が人の願いを叶えるのは悪魔自身の願いを叶えるためだ」
悪魔自身の願い……。
今回、悪魔が手に入れたものは……
レイ「マンドラゴラの持つ幻覚能力を奪うのが目的?」
ベルク「あははっ。面白い冗談だ。そんな雑魚能力――悪魔は欲しがらない」
ベルクが僕の言葉を笑い飛ばした。
ベルク「目的は『ルール』の追加だろうな」
追加されたルールというと……
レイ「カイトはゾンビ化の影響で頭が回らず、ドラを『人間』と勘違いした。悪魔はそのことを指摘せずにドラを『人間』として扱い願いを叶えた。つまり、悪魔の願いの条件は『事実』ではなく、願う人間の『認識』にゆだねられるようになった?」
ベルク「ああ、そのとおりだ。このルールによって本来『人間』の願いしか叶えられないはずの悪魔が『マンドラゴラ』の『人間になりたい』という願いを叶えた……」
レイ「人間以外の願いを……」
それは遥か昔から続いた黒魔術の前提を崩しかねないルールだった。
ベルク「でも、よく分かんないだよね。このルール。だって、あの悪魔が『人間に騙される』ことを肯定するルールを作るなんてさ」
悪魔は嘘や騙されることを嫌う。
数多のおとぎ話として描かれているが、昔の人は悪魔を騙し利用していた。
そのことに悪魔は怒り、現代では正当な取引でしか悪魔に願いを叶えてもうことはできない。
まあ、これに関しては全面的に人間が悪い。
もしかして、本当の悪は悪魔ではなく、『人間』なのかも?
……いけない。いけない。
こんな考えでは心まで悪魔になってしまう。
ベルク「ねぇ、レイって――もしかして、美人だってする?」
レイ「はっ?」
ベルクがいきなりわけ分かんないことを言った。
ベルク「いや、君の美貌の虜になった悪魔が思わずルールを追加して願いを叶えちゃった可能性もあるかな~、って」
レイ「そんな馬鹿なことあるわけないだろ。それに悪魔が興味を持ったのは僕じゃなくて、僕の弟の方だ」
本当は女の子だけど。
ベルク「男か~。じゃあ、悪魔の方が女だったのか? どう、可愛かった? もしかして、サキュバス?」
ベルクが興奮した様子でまくしたてる。
レイ「悪魔は馬だったよ」
ベルク「なんだ、馬か。……角は生えてなかった?」
レイ「生えていない。普通の白い馬」
ベルク「ってことは、下級悪魔か……。ルールを追加できるのは上級も上級……最上級と呼ばれる悪魔だけ……」
レイ「ルールは前から追加されていた?」
ベルク「そうなるな。だったら、気にするだけ無駄か。はい、お手上げ。あとは分からん」
ベルクが両手を上げ、降参のポーズをした。
レイ「……」
本当にそうだろうか?
僕は今回のルールが前から追加されていたものだとは思えなかった。
『悪魔がマオの大好きな「白馬の王子様」のワンシーンを再現してくれたんだ』
それがゾンビ騒動のあと、カイトが教えてくれたことだった。
悪魔はマオの願いを叶えた。
『君たちが逃がした彼女は魔王の転生候補なんだ』
オルガさんが洞窟で話した内容を思い出す。
僕の予想が正しければ、マオの正体は――
レイ「……っ」
僕が唇を噛んだ。
悪魔はルールを追加することで叶えてみせたのだ。
マオ――いや、自分たちの王である『魔王』の願いを。




