第1話 伝え忘れていたこと
レイ「なんのつもりだい? カイト」
レイが怖い顔をしている。
カイト「どうしたんだ?
そんなに怒って……」
何かあったのだろうか?
ドラ「か、カイトさん。
どうして、私を庇って……」
俺が庇った?
一体、何の話だ?
カイト「って、倒れてる人いるじゃん!
大丈夫か!?」
俺が慌てて倒れている生徒に
駆け寄ろうとする。
レイ「駄目だ!」
レイが俺の腕を掴んで引き留めた。
カイト「ど、どうしたんだよ。
早く治療してあげないと……」
ユキノ「カイトくん……
何も覚えてないのかい?」
カイト「覚えてるって何が……」
ズキッ。
カイト「うっ」
頭が痛い。
視界がぼやける。
何かが俺の意識を支配しようとする。
レイ「カイト!」
倒れそうになった俺をレイが支える。
カイト「あ、ありがとう。レイ。
なんか、体調が悪くて……」
ゾンビ「ぐおおお」
倒れていた生徒が立ち上がった。
でも、生徒の様子がおかしい。
カイト「ああ、そうだ。ゾンビだ」
すっかり頭から抜けていた。
ズキッ。
カイト「うぅ」
頭の痛みが激しくなる。
少年『……』
五歳の俺が……今の俺を見ていた。
なんだ、あれ? 幻覚か?
そういえば、彼女と何かを話したような……
ズキッ、ズキッ。
カイト「うっ、うぅ」
思い出せない。
なんで頭がこんなに痛いんだ?
?『……足りない』
ユキノ「まさか……ゾンビ化が?」
ドラ「さ、さっき噛まれたせいで?」
レイ「もう、ゾンビは増えないって
言ったじゃないか!
あれも嘘だったのか!」
ユキノ「ち、違う。嘘じゃない。
嘘じゃないが……
なぜ、カイトくんは……」
レイがユキノに詰め寄った。
カイト「や、やめろ……レイ」
俺がレイを止める。
?『……が足りない』
カイト「そんなことより……
起き上がったゾンビを……」
俺が震える手でゾンビを指さす。
ユキノ「カイトくん……
ゾンビはまだ寝ているよ」
えっ?
だって、そこに……
カイト「幻覚……なのか?」
ズキッ、ズキッ。
分からない。
頭の痛みのせいで、思考がまとまらない。
?『……魔力が足りない』
レイ「カイト!」
レイが俺の体を揺さぶる。
レイが泣きそうな顔をしている。
……ああ、そうだった。
カイト「大事なことを伝え忘れてた……」
俺が服の裾を上げ、脇腹を見せる。
レイ「噛み跡……」
俺の脇腹の噛み跡を見て、
レイが絶句する。
カイト「悪い……アリスを庇った際に……」
いや、アリスじゃなくて……マオだったか?
記憶が……曖昧だ。
カイト「噛まれちまった……ゾンビに」
『ゾンビの増加は止まる』
ユキノが言っていた。
でも、それだけじゃない。
『ゾンビになった生徒を治せるとは
言っていない』
ドラの設定を書き換える前に噛まれた俺は
手遅れだった。
?『マンドラゴラの幻覚に対抗するだけの
魔力が足りない』
そりゃ、そうだ。
だって、俺は魔法使いじゃないから……
カイト「……」
俺の意識は、そこで途絶えた。




