第29話 天才役者―後編―
ユキノ「パ……パ……」
パパ「この子は天才だ!」
パパが大喜びで赤ん坊の私を持ち上げた。
……。
…………。
?「おお、この子が君の子供か。
可愛い女の子だね」
見知らぬ女の人が私の頭をなでた。
パパ「ユキノ……この人はパパの恩師で、
すご~い博士なんだぞ~」
ユキノ「ハ……カセ……」
博士「ほう……もう喋れるのかい?
これはたまげた」
パパ「うちの子は天才ですからな~。
ガハハッ」
ユキノ「……」
私は他の子たちより、
少しだけ言葉を話すのが早かった。
パパはそのことを『天才』だと
言って自慢して回っていた。
……実に親バカだと思う。
この程度は誤差であり、
天才でもなんでもない。
パパ「ユキノは可愛くて、
天才で……私たちの天使だ!」
けれど、パパがあまりに喜ぶので、
私は成長したあとも天才の演技を
することにした。
そして、幸運なことに私は本当に天才だった。
ユキノ「……いや、違うか」
所詮は演技。
天才ではない。
だから、事故は起こった。
ユキノ「ツケが回ったんだ」
凡人が身分不相応に、天才を演じたツケが。
巻きんでしまった生徒たちには悪いことをした。
ユキノ「解決方法は分かっている。
幻覚は術者が死ねば消える……」
今回の術者は……ドラちゃんだ。
ドラ『人間さん!
私の友達になってください!』
私がドラちゃんの言葉を思い出す。
ユキノ「……っ」
私が唇を噛む。
……ああ、そうだ。
ただ、人間と友達になりたいと
願っただけの彼女が私のミスで
命を落とすなど、あっていいはずがない。
ゾンビ「ぐおおお」
ゾンビが唸り声をあげる。
ユキノ「君たちの恨みももっともだ。
全てが終わった暁にはいかなる
罰でも受けよう」
それでも今は……
ドラちゃんを守るために演技を続けよう。




