第28話 ユキノとドラ⑤
博士「ドラくん。
学校に通いたくはないかね?」
博士が突然とんでもないことを
言いだした。
ドラ「か、通えるんですか!?」
ドラちゃんが驚きの声をあげる。
博士「ああ、少し条件はあるが……
通ってもいいよ、と言ってくれる
学校が見つかってね」
ドラ「わ、私が学校に……」
ドラちゃんが驚きと喜びが
混じった声色で言った。
ユキノ「ま、待ってください。
いくらなんでも危険です」
町中を数分、散歩するのとはわけが違う。
どれだけ、見た目が人間でもドラちゃんは
マンドラゴラなのだ。
博士「しかし、前に人間と変わらない暮らしが
できると言っていたではないか?」
ユキノ「あ、あれはあくまで日々の調整を
行った場合の話で……」
マンドラゴラの持つ強い幻覚作用を
防ぐために日々の調整は必要不可欠だった。
博士「だったら、ユキノくんも
一緒に通えばいい。
そうすれば問題ないだろう?」
ユキノ「そ、それはそうですが……
研究もありますし、
何より他の研究員のみなさんに
ご迷惑をかけてしまいます……」
博士「そんなことは気にしなくていい。
大切なのは君が『今』何をしたいかだ」
ドラ「ご主人は……学校に行きたくないの?」
行きたくないわけではない。
ただ、天才である私は
行く必要が無かっただけだ。
ユキノ「私が今したいこと、か……」
それは決まっていた。
『なでなで』
私がドラちゃんの頭をなでた。
ドラ「あっ……ん」
ドラちゃんが気持ちよさそうに目をつぶる。
ドラちゃんのしたいことをさせてあげる……
それが最優先事項だ。
……私は彼女に幸せになってほしい。
ユキノ「……分かりました。
学校の件、よろしくお願いします」
博士「ふふ、任せてくれたまえ」
トンッ。
博士が自身の胸をたたいた。
……。
…………。
ユキノ「……」
私が制服に袖を通す。
今日は学校の入学式だ。
ドラ「楽しみですね。ご主人」
メイド服に着替えたドラちゃんが
嬉しそうに言った。
ユキノ「……そうだね」
まさか、私が学校に通うことになるとは……。
世の中、何があるか分からないものだ。
博士「二人とも、よく似合っているよ」
博士が私たちを見送る。
ドラ「ありがとうございます!」
ドラちゃんが元気よく言った。
博士「……そろそろ、出発の時間だね」
博士が時計で時間を確認しながら言った。
ユキノ「そうですね……。
博士……行ってきます」
ドラ「行ってきます!」
博士「行ってらっしゃい」
私たちが魔法学校に向けて、
出発する……
博士「ドラくん!」
博士がドラちゃんの名前を呼んだ。
博士「……すまない。
君を生徒として学校に
通わせてあげられなくて……」
博士が申し訳なさそうに言った。
ユキノ「博士……」
ドラちゃんはマンドラゴラの幻覚作用を
考慮し私のメイドとして、
魔法クラスでお世話になることになった。
……生徒として学校に通う彼女の願いは
残念ながら完全には叶わなかった。
ドラ「いえ……気にしないでください。
私……ご主人と一緒に学校に通えて、
すごく嬉しいんです。
博士……ありがとうございます!」
ドラちゃんが笑顔で言った。




