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魔法学校の悪役令嬢  作者: ああああいい
第11章 ゾンビ編(本編)
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第26話 ユキノとドラ③

ユキノ「博士。ただいま戻りました」


ドラ「戻りました~」


博士「二人ともおかえり」


博士が私たちを出迎えた。


ユキノ「すみません、博士。

    DVDプレーヤーを

    お借りしたいのですが

    よろしいでしょうか」


博士「それは構わないが……

   急にどうしたんだい?」


ドラ「学校のお勉強をするの!」


ドラが元気よく答えた。


博士「勉強?

   教育もののDVDでも

   借りてきたのかい?」


ユキノ「いえ、青春映画です」


私が博士の勘違いを訂正した。


博士「ああ、なるほど。

   文字通り『学校』の

   お勉強というわけか。

   ……分かった。

   今、持ってくるよ」


博士がDVDプレーヤーを取りに行った。


……。


…………。



映画――『青い春の呼び声』。

それは魔物と戦っていた勇者が

争いのない平和な世界に迷い込む話。

そこで勇者は……普通の女子生徒として

学校に通うこととなる。


ケイ「よお、勇者。

   テストどうだった?」


勇者「ふっ、ぜひ見てくれ」


勇者がテスト用紙を堂々と見せつける。

その点数、なんと――五点!


ケイ「低っ!」


勇者「なっ!?

   一問、正解したんだよ!

   ほら、ここ!」


勇者が丸のついている個所を

見せつけてくる。


委員長「あらあら、すごいわね。

    勇者ちゃん」


委員長が勇者の頭をなでた。


勇者「ふふ、そうだろう。

   さすが、委員長。

   よく分かってる」


勇者が自信満々に胸を張った。


ケイ「いくらなんでも

   甘やかしすぎだろ……」


はあ~、とケイがため息をつく。


バスケ部員「お~い、勇者。

      放課後、助っ人頼めるか?」


バスケ部員が声をかけてきた。


勇者「うん、もちろん……」


先生「駄目ですよ」


先生が勇者の元まできて

自身の眼鏡をくいっと上にあげた。


先生「テストの合格ラインは五十点です。

   ……この意味が分かりますね」


先生が勇者を睨んだ。


勇者「……」


勇者が無言で赤ペンを取り出す。

そして『5』の隣に『0』を書き足した。

……どうやら、これで五十点と

言い張るつもりらしい。


先生「駄目に決まっているでしょ」


先生が持っていた教科書の角で

勇者の頭を叩いた。


勇者「いてっ」


先生「五十点未満の生徒は全員、

   放課後に補習を行うので

   残るように」


勇者「そ、そんな~~」


勇者の情けない声が教室に響いた。



放課後。


委員長「ふふ、よろしくね。

    勇者ちゃん」


勇者「あれ? 委員長も補習なの?」


委員長「ええ、一点足りなかったの」


委員長がテスト用紙を見せた。

その点数……四十九点。


ケイ「勇者と一緒に補習受けたいから

   わざと点数調整しただろ……」


勇者「そうなの!?」


ケイの言葉に勇者が驚いた。


委員長「あら~、どうでしょう?」


うふふ、と委員長が笑って誤魔化す。


勇者「……ケイもわざと低い点を?」


勇者が同じく補習を受けている

ケイに聞いた。


ケイ「お、おう。

   もちろんだぜ!

   俺たち友達だろ?

   補習を受けるときだって一緒だ!」


勇者「け、ケイ~」


勇者の目からポロリと

嬉し涙が流れた。


先生「ケイくんは名前を書き忘れたので

   ゼロ点でした」


先生がケイの点数をばらした。


勇者「ぜ、ゼロって……

   僕より下じゃないか!

   あははっ」


勇者が大笑いした。


ケイ「ぐ、ぐぬぬ」


ケイが悔しそうにうなる。


委員長「うふふ」


そんな二人の様子を見て

委員長が笑った。



……しかし、そんな日常も長くは続かない。


兵士「勇者様。

   どうかお助けを……」


勇者「大丈夫。

   すぐに帰るよ」


二つの世界をつなぐゲートが再び開いた。

勇者が元いた世界に帰るときが来たのだ。


ケイ「待ってくれ!」


元の世界に帰ろうとした

勇者をケイが引きとめる。


ケイ「そっちの世界は

   戦争をしていて危険なんだろ?

   こっちの世界に

   残ればいいじゃないか……」


勇者「それはできないよ。

   勇者である僕は

   みんなを守る義務がある」


ケイ「そんな義務あるかよ!」


ケイが叫んだ。


ケイ「お前を危険な目にあわせる

   世界なんて消えればいい!」


ケイの目から涙が零れ落ちる。

本当に世界が消えればいいと

思っているわけではない。

ただ、勇者と離れ離れになりたくないが

ゆえにでてしまった発言だった。


勇者「……僕には親友がいたんだ」


勇者がゆっくりと口を開いた。


ケイ「その親友に会いに帰るのか……?」


ケイが聞いた。


勇者「ううん。

   彼はもう死んでしまったんだ」


勇者が悲しそうに言った。


勇者「彼が死んだあの日から

   僕は戦う理由を失った」


ケイ「だったら……」


勇者「でも、こっちの世界に迷い込んで

   ……出会えたんだ」


勇者がケイをまっすぐ見た。


勇者「平和な世界で

   今も生きている『君』に」


偶然か必然か。

ケイの姿は死んだはずの

勇者の『親友』にそっくりだった。


勇者「……僕は作ってみせるよ。

   この世界と同じ平和な世界を」


目をつぶると平和になった世界で……

共に笑う僕と彼の姿が見えた。

もう叶わぬ夢だとしても、

僕は……


カツンッ。


勇者が前に進む。


勇者「ケイ……君に会えて良かった」


勇者が笑う。

そして……ゲートをくぐった。


ケイ「勇者!」


ケイが手を伸ばす。

けれど、その手は届かず……

ゲートは跡形もなく消えてしまった。


ケイ「そんな……」


ケイが膝から崩れ落ちた。


ケイ「勇者……俺は……」


もしも……この思いを……

伝えられていたら……

彼女は思いとどまってくれただろうか?


ケイ「お前のことが……

   大好きだったんだ……」


……。


…………。



ユキノ「……青春映画?」


これ……

青春映画じゃなくて、

異世界ものじゃないか?


私がDVDのパッケージを確認する。

タイトルは……『青い春の呼び声』。

……うん。青春っぽい。


あらすじは……

少年と少女の甘酸っぱい恋の物語……と。

甘酸っぱかったかな~?


ドラ「うぅ~、勇者……ケイ…

   ぐすんっ」


ドラちゃんが涙を流していた。


ドラ「ご主人……

   学校がどういうものなのか

   よく分かりました」


ユキノ「そ、それは良かった」


まあ……

ドラちゃんが満足したのなら

良しとしよう。

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