第12話 本当のバケモノは……
パンッ。
ユキノ「ドラちゃんの設定を書き換えれば……」
パンッ。
ユキノ「ゾンビの増加は止まり……」
パンッ。
ユキノ「今回の騒動は丸く収まるのだよ。
だから、ドラちゃんを私のもとまで
連れてきてくれたまえ!」
パンッ。パンッ。
僕がユキノのお尻を一定のリズムで叩く。
これはゾンビ騒動を起こした
ユキノへのお仕置きである。
ルナ「ユキノちゃんのお話を聞いた魔法クラスの
みんなはすぐにマンドラゴラの捜索に
向かったんだけど……
誰も戻って来なくて……
多分、みんなゾンビにやられちゃったんだ
と思う……」
ルナが悲しそうに言った。
レイ「噛まれただけで
一発アウトだもんね」
対抗できる抗体持ちは、現時点で
僕とランドルフ先輩の二人だけだ。
ユキノ「それは違うよ、レイくん。
魔法クラスのみんなはゾンビには
なっていない」
レイ「えっ、そうなのかい?」
でも、言われてみれば
ゾンビの中に魔法クラスの生徒はいなかった。
ルナ「マンドラゴラの幻覚は強い魔力を持った
人間……つまり、魔法使いには効かないの」
カイト「あ~、それでレイは噛まれても
ゾンビにならなかったのか」
ルナの言葉にカイトを含む
僕たちが納得する。
ユキノ「ドラちゃんの近くには大量のゾンビが
控えているはずだ。
きっと、私のクラスメイトたちはゾンビの
群れに対処できずに身動きが取れなくなっ
てしまったのだろうね……ひゃっ」
パンッ。パンッ。
僕によるユキノへの尻たたきは
まだ継続中である。
レイ「一年のみんなはともかく、二、三年の先輩
までやられるとは思えないんだけど……」
僕が頭を悩ませる。
もしかしたら、予想外の何かが起こったの
かもしれない。
アリス「やっぱり、ゾンビが進化を……」
ユキノ「いや、そうではない。
単純に魔法クラスの先輩方は留守に
しているのだよ」
カイト「留守?」
ルナ「うん。先生が出ていったあと、今度は
地下水道でスライムが大量発生したの。
スライムの液体のボディには剣も槍も
効かないから……
魔法使いの先輩方が対処に向かったの」
レイ「それは困ったね」
王都の外、地下……そして、学校。
三か所で同時に事件が発生している。
カイト「なんだよ、これ?
世界の終わりか?」
カイトが絶望した顔をする。
レイ「世界の終わりと言うには早いかな。
なにせ、僕がまだ残っているからね」
アリス「きゃ~!
レイちゃん、カッコいい!
抱いて~~!」
僕の言葉にアリスが大喜びする。
レイ「アリスは、ほんと可愛いね」
パンッ! パンッ!
ユキノ「ひゃんっ!」
僕にお尻を叩かれたユキノが
大きな声をあげた。
レイ「ああ、ごめん。
思わず力が入っちゃった」
まあ、お仕置きはこのくらいで
いいだろう。
僕がユキノを解放した。
……。
…………。
カイト「そういえば、
学校は結界で囲われてるんだよな?
魔法クラスの先輩たちは
どうやって、地下水道に行ったんだ?」
カイトが最もなことを聞いた。
ユキノ「我らが生徒会長が用意していた秘密の
抜け道をつかったのさ」
レイ「へ~、さすがは会長だね」
カイト「じゃあ、それを使えば俺たちも外に……」
ユキノ「残念ながらそれは無理だ。
あの抜け道は生徒会長でなければ開ける
ことができない」
残念ながら、脱出は不可能と……。
カイト「やっぱり、俺たちでマンドラゴラを
捕まえるしかないか~」
レイ「そうだね。
無事な生徒の保護は引き続き
ランドルフ先輩に任せて
僕らは元凶の退治といこう」
今後の方針が決まった。
アリス「ちょっと待って。おかしくない?」
レイ「うん。事件が立て続けに起こるのは
おかしいけど、今はゾンビ問題の解決
を……」
アリス「そうじゃなくて!
ランドルフ先輩のことよ!」
カイト「ランドルフ先輩?」
アリス「ええ、そうよ。
なんであの人ゾンビになってないのよ!」
カイト「あっ、マジじゃん。なんでだ?」
僕らが頭を悩ます。
レイ「魔法使い以外に
マンドラゴラの幻覚が効かないのは?」
ルナ「ううん。いないはずだよ」
ルナが首をふる。
ユキノ「今回の幻覚は
ゾンビ映画がベースになっている。
ゾンビに噛まれたり、
引っかかれたりして、
傷を負えばゾンビになるはずだ」
カイト「ランドルフ先輩は
間違いなくゾンビに
噛まれていた……」
レイ「……あっ!」
そこで、僕が思い出した。
レイ「ランドル先輩の体……綺麗だったよね」
僕がランドルフ先輩と会ったときのことを
思い出しながら言った。
カイト「えっ、マッチョが好みだったのか?」
カイトが見当外れの返答をした。
レイ「違うよ。
体に傷が無かったってことだよ」
カイト「言われてみれば、そうかも?
でも、どう見ても噛まれてたよな?」
アリス「もしかして……
筋肉が分厚過ぎて、
ゾンビの歯が通らなかった
ってこと!?」
カイト「嘘だろ!?
あの人が一番のバケモンじゃん!」
レイ「恐るべし、ランドルフ先輩……だね」
衝撃の事実に僕らは戦々恐々とした。




