表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

第8話 探索の余韻

初めての探索を終え、放送室には少しの安心感と疲労が漂っていた。

缶詰やペットボトル、そして“奇跡の一本”を手に入れた二人。

今日の放送は危険な話よりも、振り返りと休憩がメイン。


「もう遠足から帰ってきた子どもみたいだな」

「……むしろ疲れすぎた大人でしょ」


そんなやりとりをしながら、レイとマリはまたマイクに向かう。

荒廃した世界の中で、ラジオだけはいつも通り――少しユルめの日常放送が始まる。

「……こちら、終末ラジオ放送局。今日は、ちょっとのんびりお届けします」

レイがマイクに声を乗せる。

横ではマリが缶詰のラベルを眺めていた。


「いやー!昨日の探索は疲れたな!でも戦利品の缶詰たち、並べるとテンション上がる!」

「……その割に、帰ってきた直後は床に突っ伏してたけど」

「だって全力で冒険してたからな!勇者マリ、探索完了!」

「勇者が缶詰とジュース一本で満足するのね」


二人の笑い声が放送室に響いた。



「振り返ってみると、結構うまくいったんじゃない?」

レイがリュックの中身を確認しながら言う。

「缶詰三つ、ペットボトル四本、カップ麺少々……そして奇跡の一本」

「おー、あのジュースな!まだ開けてないから楽しみ倍増だ!」

「……本当に乾杯用にするつもり?」

「もちろん!未来に希望を残すんだ!」


レイは肩をすくめながらも、少しだけ笑った。



「じゃ、今日もニュースいってみようか」

マリが軽く咳払いをして声を張る。

「ニュースその一!探索帰還!勇者マリと参謀レイ、無事に凱旋!」

「……参謀って何よ」

「頭脳派ポジションだろ?私が勇者だから」

「はいはい」


「ニュースその二!戦利品の缶詰、レイがちゃんと仕分けして保管完了!」

「……当たり前でしょ」

「ニュースその三!マリ、筋肉痛で階段がつらい!」

「それニュースにする必要ある?」



「さて……次は何しようか」

レイがマイクの前で小さくため息をつく。


「そしたら、いつもの“妄想お便りコーナー”でもやりますか!」

マリが机に手を叩きながら元気を取り戻す。


「今回のお便りは〜!ラジオネーム・缶詰コレクターさんから!

“もし缶詰に新しい味を作れるとしたら、どんな味がいいですか?”」


「私は……レモン味の水煮とか。さっぱりして食べやすいと思う」

「ほほう、現実的!私はね……寿司缶!」

「寿司って、生ものよ?」

「じゃあ、寿司味の缶詰!」

「……酢飯の缶詰なんて聞いたことないわよ」

「いやいや、未来の技術ならできるかもしれん!」

「終末後に未来を持ち出すのね」



「とまぁ、こんな感じで今日ものんびり放送でした」

レイがまとめに入る。

「次の探索はもう少し先ね。今は休む時間」

「おー!休養も冒険の一部だな!」

「……違うけど、まぁいいわ」


机の上には、戦利品の缶詰と“奇跡の一本”が並んでいた。

開ける日はまだ先。それが少しだけ、心の支えになっていた。



マリ「なぁレイ、“奇跡の一本”って名前つけようぜ!」

レイ「……ただの缶ジュースよ」

マリ「いやいや!“希望のジュース”とか“ラストドリンク”とか!」

レイ「名前でハードル上げると、飲んだ時がっかりするわよ」

マリ「……やめろ!夢を壊すな!」


――次回、また少し未来の話を。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ