第7話 初めての探索
準備を終え、ついに放送室を出る時が来た。
行き先は近所のコンビニとスーパー。
地図に印をつけ、ルートを確認し、リュックを背負って扉の前に立つ二人。
「……ほんとに行くのか」
緊張で声を落とすレイ。
「おー!初めての大冒険だな!」
無駄にテンションの高いマリ。
足音を響かせて廃墟の街を歩く彼女たちの姿は、遠足の子どもとベテラン登山者の奇妙なコンビ。
缶詰と飲料を求める、小さな一歩がここから始まる。
放送室の扉を開けた瞬間、埃と乾いた風が顔を撫でた。
レイとマリにとって、初めての探索が始まった。
「……行くわよ」
レイがリュックの肩紐をぎゅっと締める。
「おー!冒険の始まりだー!」
マリは勢いよく叫び、近所迷惑を気にする必要もない街に声を響かせた。
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舗装のひび割れた道を歩きながら、レイは小さな地図を広げる。
「徒歩十五分のコンビニ、さらに十分歩けばスーパー。そこまでで引き返す」
「了解!任せとけ!」
と胸を叩くマリだが、数分後には「リュック重い〜」と愚痴を漏らしていた。
「……まだ空っぽでしょ」
「心が重いんだよ!」
「それ、一番厄介ね」
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最初の目的地、近所のコンビニ。
シャッターは半分壊れ、窓ガラスも割れていた。
中は薄暗く、商品棚はほとんど空。だが――
「レイ!缶詰あったぞ!あとカップラーメンも!」
「……賞味期限を確認して」
「細けぇ!終末なんだから気にすんな!」
「気にしなさい。お腹壊したら命取りよ」
二人は静かに品をリュックに詰め込む。
缶詰三つ、ペットボトル四本。小さな成果だが、確かに“生き延びるための糧”だった。
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続いてスーパー。
広い店内は荒らされた形跡があり、棚は倒れている。
緊張感が漂う中、マリの目がキラリと光った。
「レイ!見ろ!まだ残ってるぞ!」
彼女が指差したのは、棚の隙間に転がっていた缶ジュース。
レイは一瞬警戒したが、問題はなさそうだと判断し、拾い上げた。
「一本だけ?」
「いやいや、一本の奇跡だ!乾杯用だな!」
「……本当に飲むつもりね」
小さな宝物のように、缶ジュースをリュックへしまった。
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無事に戻ってきた二人は、放送室に腰を下ろした。
マイクのスイッチを入れ、レイが静かに声を落とす。
「……こちら、終末ラジオ放送局。ただいま」
「いやー!生還だ!コンビニとスーパー征服!」
「征服……買い出しでしょ」
「でも、ちゃんと成果あったじゃん!缶詰、飲料、そして奇跡の一本!」
二人はリュックを覗き込み、笑い合った。
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「……ふぅ。探索も無事終わったし、少し休みましょうか」
レイが息を整えるようにマイクに声を落とした。
「いやー疲れたー!もう喋らず寝たい!」
マリが机に突っ伏す。
「でも……恒例だから。妄想お便りコーナー、やりましょうか」
レイが淡々と切り出した。
「えぇー!?このタイミングで!?もう恒例って便利な言葉に逃げてない?」
「逃げてないわ。決まりは守らないと」
「……仕方ないなぁ。じゃあ行きますか!今回のお便りは〜!ラジオネーム・遠足気分さんから!」
「“探索に行くとしたら、必ず持っていきたいおやつは何ですか?”」
「私はチョコね。疲れた時に効く」
「おー、現実的!私は……うまい棒30本!」
「……それ、荷物になるだけじゃない?」
「いやいや!仲間に分け与える喜びがある!」
「仲間、私しかいないけど」
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「というわけで、初めての探索は成功でした」
レイがまとめる。
「次は、もう少し遠くまで挑戦してもいいかもしれない」
「おー!次はショッピングモール攻略だな!」
「……その前に、まずは腹ごしらえね」
缶詰を並べる音が、マイクにカチャリと響いた。
マリ「レイ、次は絶対お菓子いっぱい探そうな!」
レイ「……非常食として?」
マリ「いや、完全におやつとして!」
レイ「……やっぱり子どもね」
マリ「大人は夢を忘れてるだけだ!」
――次回は少し遠くまでいきたいな。




