第4話 星空と廃墟のラジオ
三日後の夜。
停電した世界では、かつてよりもずっと星が鮮明に見える。
その空の下で、レイとマリは壊れかけの古いラジオを見つけた。
三日後の夜。
放送局の窓から見上げる空には、かつてよりもずっと多くの星が瞬いていた。
「……こちら、終末ラジオ放送局。聞いてる人がいたら、こんばんは」
レイがマイクに静かに声を乗せる。
「やー、電気が消えた世界の夜ってさ、星がド派手に見えるよな!」
マリが椅子に寝転がりながら天井を見上げていた。
⸻
「こんなに明るい星空を、人類はどれくらいぶりに見たんだろう」
「皮肉なもんだな。人が減ったら空が綺麗になりましたーってさ」
「文明って、便利だけど不便でもあったのね」
「ま、星にお願いごとしても食料は降ってこないけどな!」
レイは小さく笑って、窓の外に視線を向けた。
⸻
「じゃあ、ここで今日の“終末ニュース”です!」
マリが突然立ち上がり、ラジオDJのように声を張る。
「ニュースその一! 壊れかけの古いラジオを見つけました!」
「実際、まだ音が出るのよね。雑音ばかりだけど」
「ニュースその二! その雑音の中に……なんと!人の声っぽいのが混じってました!」
「……それ、本当に人の声?」
「いやー、気のせいかもしれない。でもゾクッとしたんだよなぁ」
マリの表情は半分楽しそうで、半分本気のようでもあった。
レイは何も言わず、そっとメモに「古いラジオ・調査要」と書き込んだ。
⸻
「ニュースも終わったし、次はどうする?」
「そしたら、いつもの“妄想お便りコーナー”でもやりますか!」
「……妄想って自分で言うのもどうかと思うけど」
「いいのいいの!雰囲気だって!じゃあいくぞ!」
マリは胸を張って読み上げるふりをする。
「今回のお便りは〜!ラジオネーム・星屑コレクターさんから!
“もし流れ星に願いが叶うなら、何を願いますか?”」
「私は……“誰かに、届いていますように”かしら」
レイの声は少しだけ柔らかかった。
「おお、真面目だな!私はもちろん“お菓子の降る星空”だ!」
「……願いのスケール感が違いすぎるわね」
「いいんだよ、夢はデカく!ってやつだ!」
二人の声は、夜空に瞬く星々に吸い込まれていった。
⸻
「さて、そろそろ締めましょうか」
「いやー、ロマンチックな回だったな!」
「……お菓子の話しかしてないくせに」
「おいおい、星空の下で食べるチョコとか最高だろ!」
笑い合う声が、夜空の輝きに溶けていった。
マリ「なぁレイ、ほんとにラジオから声がしたんだって!」
レイ「気のせいでしょ」
マリ「いや絶対!“助けて”って聞こえたもん!」
レイ「……“チョコ買って”の聞き間違いじゃない?」
マリ「そんな切実な声出す奴いるかぁ!」
――次回もお楽しみに。