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第33話 かぼちゃランタンの夜

秋の夜は、不思議と人を懐かしい気持ちにさせる。

わずかな冷気が差し込む放送室で、二人は今夜もマイクを前に腰を下ろす。


「こんばんはー!マリです!」

「そしてレイです。今日も終末ラジオ放送をお届けします」


レイが落ち着いたトーンで挨拶すると、マリは机の上にごろんと転がしてあった丸々としたオレンジ色を持ち上げた。


「じゃーん!見てください、このカボチャ!」


声の調子だけで、リスナーにもその笑顔が浮かぶようだった。


「ついに畑でできたんですよね。夏の頃に苗を植えて……よくここまで育ってくれたわ」

「いやー、あのとき雑草と一緒に抜きかけたのを思い出すわ。危なかった危なかった」

「……あなたの“勢い”は植物にとっても試練ね」


レイが小さく笑いながら突っ込み、二人の間に柔らかな空気が広がる。


「で!ただ食べるだけじゃもったいないなーって思って。せっかくだし……ハロウィン気分出してみません?」

「ふふ。提案の方向性が完全にマリらしいわね」

「いいでしょ?かぼちゃランタン!こんな時代でもさ、遊び心って必要だと思うんだ」


マリが意気込むと、レイもほんの少し口角を上げて頷いた。


二人は小刀を手に、即席のランタン作りを始める。

放送机の上には新聞紙代わりの古いチラシを広げ、カボチャの中身をくり抜いていく。

普段ならただの調理作業だが、今夜は少しだけ特別な儀式のように感じられた。


「ねぇ、これってちゃんと火入れるの?安全面、大丈夫かな」

「大丈夫大丈夫!ほら、以前ゲットしたロウソクがあるでしょ。カップに入ってるやつ」

「……なるほど、それならいけそうね。念のため水もそばに置いておきましょう」


レイの几帳面な気遣いと、マリの勢いで、ランタンはあっという間に形を成していく。

外の冷たい空気と、かすかに漂うカボチャの甘い匂い。

二人の指先に残る温もりが、夜の寂しさを薄く溶かしていった。


「できた!ほら、見てよレイ!」

マリが誇らしげに掲げたカボチャには、ちょっと不格好な三角の目とギザギザの口。

どこか笑っているようで、泣いているようにも見える。


「……ふふ。意外と愛嬌があるわね」

「でしょ?これ、玄関に置いたら絶対映えるって!」


ロウソクの小さな炎が、ランタンの中で灯る。

放送室の壁にゆらゆらと影が揺れて、二人の顔をオレンジ色に染めた。


その瞬間だけは、崩れた街の中に、確かに“祝祭”の気配が生まれていた。



「それじゃあ、ここで恒例の今日のニュース!」

マリがランタンの隣で声を張る。


「なんと畑でカボチャが収穫できましたー!」

「……もう皆さんお分かりの通りね」

「はい、テンション上がっちゃってすでにお披露目済みです!」


二人は笑い合いながらも、続ける。


「でもね、やっぱり“実り”があるって大事だなって思ったんだ。食べられるものが増えると安心するし、こうやって遊び心も持てる」

「ええ。今夜はかぼちゃスープにでもしましょうか。寒さもだんだん増してきたし、体を温めるのにちょうどいいわ」



「はい!続いては妄想お便りコーナー!今回のお題は“もしも今ハロウィンパーティーをやるなら?”です!」


「うーん、私はやっぱりお菓子を山ほど集めたいな。チョコとかキャンディとか。仮装よりもまず“食”でしょ!」

「マリらしいわね……。私は仮装をしてみたいかも。アーチェリーの弓を持って、ハンター風とか」

「おおー!それ絶対カッコいい!……っていうか武器として普通に頼りになるやつじゃん!」

「ふふ、そういう意味じゃないのよ」


二人の掛け合いに、静まり返った夜の空気もほんのり温かさを帯びる。


マリ「なぁレイ、こういうイベントってやっぱ気分上がるな」

レイ「そうね。少しの工夫で、季節をちゃんと感じられる」

マリ「冬が近づいてるって思うと、ちょっと不安にもなるけどさ」

レイ「でも同じくらい、楽しみも増やしていけばいいのよ」

マリ「……よし!次は冬のイベントも考えとかなきゃな!」

レイ「ふふ。あなたの発想力には、私も期待してるわ」


二人の声は、ランタンの炎に溶け込むように、夜の闇へ消えていった。


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