27話 お気に入りのセーターが……!
大切にしまっていたものほど、気づけば傷んでしまうことがある。
笑うしかない小さな出来事が、また新しい行き先を決めさせる。
「こんばんは。こちら、終末ラジオ放送局」
レイが落ち着いた声で放送を始める。
「では、今日のニュースです!」
マリがわざと深刻そうに言葉を続けた。
「お気に入りのセーターが……虫に食われました!」
「ほんとショックだったわよね」
レイが苦笑まじりに返す。
「袖のところなんて、まるでチーズみたいに穴だらけで」
「いやぁ、あのセーター気に入ってたんだよな。去年の秋に見つけたやつでさ」
マリが肩を落とす。
「着るとちょっと背筋が伸びる気がしたのに」
「まあ、笑うしかないわね」
レイが肩をすくめて笑った。
「でも冬の準備は必要よ。虫に食べられて全滅はしてなかったけど、ああいうお気に入りを失うと気分が下がるわ」
「じゃあ、次の探索先は……洋服屋さんに決まりだな!」
マリが明るく声を張る。
「駅前の通りにあったよな?まだ残ってるかもしれない」
「ええ。気分転換も兼ねて行ってみましょう」
二人は少し前向きな調子を取り戻す。
「さて、ここからは恒例の……妄想お便りコーナー!」
レイが笑いを含んだ声で宣言する。
「ラジオネーム“セーター大好きさん”からのお便りです」
『大切にしていたセーターを着ようとしたら、ペットの犬に袖を引っ張られて穴があきました。どうすればいいでしょう?』
「ふふっ……これはもう、袖なしセーターに改造だな」
マリが笑う。
「タンクトップみたいにして、新しいファッションとして着るんだ!」
「それは斬新すぎるわ」
レイも吹き出しながら答える。
「でも、切り抜け方としては……正しいかもしれない」
二人の笑い声が放送室に響いた。
マリ「なぁ、次に見つけるなら何色のセーターがいいと思う?」
レイ「そうね……落ち着いたグレーとかが無難ね」
マリ「俺は赤だな。元気出そうだし」
レイ「……マリって、意外と派手好きよね」
マリ「お、おう……バレたか」




