25話 埃まみれのラジオ雑誌
小さな探索での拾い物は、宝探しに似ている。
誰かが残した記録に笑い、懐かしさを覚える。
それだけで、今日という日は少し特別になる。
「こんばんは。こちら、終末ラジオ放送局」
レイがいつもより軽やかに声を響かせる。
「今日はね、探索の話なんだよな」
マリが足を組み直しながら続ける。
「ちょっとした散歩のつもりだったんだけどさ」
「そう。近所の空き家をのぞいてみたら……棚に残ってたのよ。古いラジオ雑誌」
レイはページをめくるような仕草をする。
「パラパラってめくったら、もう……なんだこれ、って感じだったな」
「そうそう。『最新トランジスタ技術!』とか『深夜ラジオで人生が変わる!』とか」
「タイトルが大げさすぎて笑ったよな」
二人の声が弾む。
「でも面白かったのはね、読んでると“放送”って、ただ音を届ける以上のものだったんだって感じるのよ」
「そうだな。手紙代わりだったり、誰かとつながるツールだったり」
「……今の私たちと、ちょっと似てるわね」
少しだけ、放送室にしんみりとした空気が漂う。
だがすぐにマリが笑い飛ばす。
「いやぁでも、『恋愛相談は電波に乗せて!』ってコーナーの広告は、今読むとシュールだったな」
「ふふっ。あれは私も笑ったわ」
放送室には、ひとときの賑やかな空気が広がっていった。
「さて、今日のニュース!」
レイが声を切り替える。
「拠点の周りに小鳥が戻ってきました!」
「おぉー!」とマリがわざと大げさに拍手する。
「この数日、電線に止まってチュンチュン鳴いてるの。ちょっと懐かしい音よね」
「まぁ、芽じゃなくて電線狙っててよかったな」
「そうね……もし畑だったら、また追い払わないといけなかったし」
「鳥にとっては何気ない日常が、こっちにはニュースってのが面白いよな」
「さて……次は何しようか?」
「そしたら、いつもの妄想お便りコーナーでもやりますか!」
レイがにっこり笑い、マリは小さく肩をすくめる。
≪妄想お便りコーナー≫
「ラジオネーム・“電波少年”さんからのお便りです」
レイがそれらしく声を整える。
『もし一日だけ、好きなラジオ番組を復活させられるとしたら、どの番組にしますか?』
「……へぇ、いい質問じゃん」
マリが腕を組む。
「私は、料理番組のラジオ版かな。音だけでどこまで伝わるのか試してみたい」
「ふふっ。私はね……“深夜の恋愛相談”。」
レイがいたずらっぽく笑う。
「だって、今だったら相談も何もないでしょ?『リスナーゼロだけど、どうしたらいいですか?』って投書するわ」
マリは吹き出した。
「……答えは簡単。勝手に恋しろ、って返ってくるんだろうな」
二人の笑い声が重なり、ラジオは心地よい余韻を残した。
マリ「なぁ、雑誌に載ってた広告さ……『未来のポータブルラジオ!』ってやつ、笑っちゃったよな」
レイ「だってサイズがレンガみたいにデカかったじゃない」
マリ「しかも『軽量1.8kg!』って……どこが軽いんだよ」
レイ「ふふっ、時代を感じるわね」
マリ「……でも、あの人たちが夢見てた未来に、私たちは生きてるんだな」
レイ「そうね。皮肉だけど……だからこそ、ラジオは続けたいわ」




