第22話ホームセンター遠征!
胸に詰まったソワソワは、夜が明けたら行動に変わる。
準備してきた荷物を背負い、不安も希望も一緒に抱えて歩き出す。
初めての遠征、その足取りはぎこちなくも確かだった。
「こんばんは。こちら、終末ラジオ放送局」
レイの声が少し高ぶっていた。
「……っていうか、もうこんばんはじゃなくて“ただいま”報告なんだけどね」
マリが苦笑する。
そう、今日はついにホームセンターと薬局への遠征に出かけた。
机の上には、持ち帰ってきた袋と資材が積み上がっている。
「出発の時、意外と足取り軽かったよね」
「だって近場だってわかってたし、ワクワクもあったし」
「最初の曲がり角でカラスにめっちゃ驚いてたのは誰だったっけ?」
「……あれは、不意打ちだから」
二人は笑い合う。
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道中は静かでありながらも、不思議と賑やかだった。
風で揺れる看板、誰もいない駐車場に咲いた花。
そして、遠くから聞こえる獣の鳴き声――。
「ねぇ、途中で見た鹿っぽい影。やっぱり畑に来てた足跡と同じかも」
「うん、可能性は高い。だからこそ柵を強化しないと」
そんな会話を繰り返しながら、二人は目的地のホームセンターへと足を運んだ。
建物は外壁がひび割れ、看板の文字も色あせている。
だが自動ドアのガラス越しに見える陳列棚は、まだ形を保っていた。
「……懐かしい。なんか胸がキュッとする」
レイが小声でつぶやく。
「ね。普通に買い物してた頃を思い出すよ」
「今は“探索”だけどね」
二人は中に足を踏み入れた。
埃が舞い上がり、懐中電灯の光に細かく浮かぶ。
棚には工具、ロープ、資材、まだまだ使えるものが揃っている。
「おっ、軍手あった!」
「私はこれ、園芸用のネット。畑に絶対必要」
「……レイ、目が輝いてる」
「だって、知恵と工夫の宝箱みたいなんだもん」
マリは肩をすくめつつも、同じように笑った。
カートに荷物を積み込んでいると、マリが工具コーナーの端で何かを手に取った。
「ねぇレイ……これ、ちょっと“使えそう”じゃない?」
レイは首をかしげ、少し笑った。
「どうするの、こんなの?」
マリはいたずらっぽく口角を上げる。
「……まあ、後のお楽しみにね!」
レイは呆れたように肩をすくめ、それ以上は何も言わずに荷物へ加えた。
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帰り道、二人は途中の薬局にも立ち寄った。
看板は色あせ、シャッターは半分降りかけていたが、横の出入口から中に入れた。
「こっちは……匂いが強いね」
「古い消毒液の匂い。でも棚はまだ残ってる」
懐中電灯を照らすと、棚には崩れかけた箱や薬瓶が並んでいた。
期限切れのものが多かったが、湿布やガーゼ、マスク、絆創膏などはまだ使えそうだ。
「よし、応急用にいくつか確保」
マリがバッグに詰め込みながら言う。
「薬局にいるだけで、ちょっと安心するね」
「うん、気のせいでもいい。そう思えるだけで救われる」
戦利品は増え、リュックはずっしりと重くなった。
カートもギシギシと鳴きながら、それでも役目を果たしてくれた。
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「帰りは重かった……」
「でも、無事に戻れた。成果は十分!」
「うん、これで畑も少しは守れるし、応急用の道具も揃った」
レイはマイクの前で深く息をついた。
「初めての遠征、無事に成功しました!」
放送室の空気が、少し誇らしげに満ちた。
……そして机の片隅には、まだ話していない“戦利品”が、静かに横たわっていた。
マリ「……帰り道であのカート、ひっくり返さなくてよかったね」
レイ「でも途中でタイヤ外れそうになってたよ」
マリ「あれはヒヤッとした……」
レイ「次は油差してから行こっか」
マリ「ちょっと、もう次の遠征の話してるの!?」




