第19話 図書館探索
静かな芽吹きの隣に残された足跡。
その影に怯えるより、知識で立ち向かうために、二人は足を運ぶ。
向かった先は、今や誰も訪れない図書館。
ページをめくれば、かつての人々の知恵がそこに眠っているはず。
埃と沈黙の中に、未来を守る答えを探しに行く。
「こんばんは。こちら、終末ラジオ放送局」
レイが落ち着いた声でマイクに向かう。
「……今夜は、本の匂いとホコリに包まれながらお届けするぜ」
マリが鼻をすすりながら笑う。
街外れの図書館。
ひび割れたガラス窓から差し込む光が、舞う埃を金色に染める。
本棚は静かに並び、ページは誰にもめくられぬまま、長い眠りについていた。
「見て、この“足跡の見分け方”って本。ちょうど欲しかったやつ」
レイが埃を払いながら開く。
「おー、こっちには“家庭菜園を守るDIY”だってよ。……柵とかトラップとか書いてあるな」
マリがページを繰りながら呟く。
さらに奥へ進むと、実用書の棚が目に入る。
「“自作発電入門”“野外でできる水の確保”……宝の山だな」
「でも持ち帰れるのは限られてるから、写すしかないね」
二人はノートに必要な部分を急いで書き写す。
エントランス脇、埃まみれのラックに目を向けると、観光パンフレットが数冊残っていた。
「お、ボロボロだけど地図だぞ。これで周辺の位置関係がわかるな」
「へえ、この辺に小さな湖があるんだ。水源の候補になるかも」
「いやぁ……図書館って、ただの本置き場じゃなかったんだな」
「知恵の倉庫よ。人がいなくても、声はここに残ってる」
けれど、頭の片隅ではいつも同じ不安が囁く。
――畑に迫る見えない影。
新しい芽が荒らされる前に、どこまで備えられるのか。
二人は埃を吸い込みながらも、夢中でページをめくり続けた。
マリ「にしても、“足跡=イノシシ説”は重いな……」
レイ「でもパンフレットの地図に“里山公園”って書いてあったでしょ。山が近いなら、獣が下りてきてもおかしくない」
マリ「……はぁ。ますます柵作りが急務だな」
レイ「大丈夫、DIY本もあるし。ね?」
マリ「あんたは妙に楽しそうだよな」
レイ「だって“作る”ってワクワクするじゃない」
マリ「……俺は“守る”方で精一杯だぜ」




