第18話 水やりと足跡
芽が出るのは未来の兆し。
けれど、その小さな命を守るには、過去の知恵が必要になる。
足跡が残した影は、不安と同時に次の行動を教えてくれる。
今日も語るのは、ただ一緒にいるから。
「こんばんは。こちら、終末ラジオ放送局」
レイが少し落ち着いた声で始める。
「この前、畑の芽が出たって話したじゃない?」
レイが嬉しそうに言う。
「うん」
「気になるからさ、見に行こって思って」
「お、いいな。今夜のニュースは“畑の見回り”か」
マリが小さく笑う。
――駐車場に広げた家庭菜園。
懐中電灯の明かりに照らされて、土の上からちょこんと伸びる緑が見えた。
「見て見て、芽が増えてる!」
レイの声が弾む。
「おー、確かに伸びてるな。……悪くないじゃん」
二人は思わず顔を見合わせる。
けれど、そこで異変に気づいた。
「……ねぇ、これ」
レイが指差す。
「足跡?」
「そう。大きさからすると……シカかイノシシか」
一瞬で、空気が冷えた。
せっかくの小さな未来を、動物に奪われるかもしれない。
「柵も道具もないし、このままだと危ないな」
「だから、図書館に行こうと思う」
「図書館?」
「足跡とか、動物対策とか。……本なら、きっと答えがあるはず」
マリが肩をすくめる。
「なるほど、畑を守るための知識探索ってわけか」
「そういうこと」
芽の喜びと、不安な影。
その両方を胸に、二人は放送を続けた。
マリ「にしても、芽は可愛かったなぁ」
レイ「でしょ?ちっちゃいのにちゃんと主張してて」
マリ「……でも横にあった足跡の方がインパクトあったけどな」
レイ「あれは笑えないのよ。食べられたら終わりだから」
マリ「はいはい。……で、次は図書館調査か」
レイ「畑を守るためだからね」
マリ「ほんと、食べ物のためなら動きが早いな」
レイ「そこにツッコむの禁止!」




