第16話 静かな日々の取り留めない話
特別なことがない日だって、放送は続く。
ご飯を食べて、少し眠って、なんとなく話す。
そんな取り留めのない日常が、意外と心を支えてくれる。
「こんばんは。こちら、終末ラジオ放送局」
レイが、やや気怠そうに挨拶する。
「なんか今日はテンション低めだな?」
マリが茶化すように言う。
「……特に何も無かったからよ」
「それこそ放送向きじゃん。何もないから話せることってあるんだぜ」
レイが苦笑する。
⸻
「例えばさ、今日の昼ご飯」
「はいはい、例の缶詰ね」
「そうそう。ツナ缶とクラッカーだけだったけど……あれ、意外と合うんだよな」
「同感。塩気のバランスがちょうど良かったわ」
マリは思い出したように笑う。
「でもクラッカー、最後の一枚落とした時のレイの顔!あれは伝説だ!」
「……忘れて」
「おっきなため息ついて、しばらく無言で拾ってたろ?」
「だから忘れてって言ってるのに!」
二人の声に、拠点の小さな空気が温まっていく。
⸻
「今日のニュースです!」
マリが唐突に切り出す。
「ニュースその一!屋根裏からホコリだらけの毛布を発見!」
「……使えるの?」
「まぁまぁ暖かかった!」
「ニュースその二!放送室の隅に落ちてたビー玉を発見!」
「ビー玉?」
「そう、ビー玉!ちっちゃいけどキラキラしててさ、なんか宝物見つけた気分になった」
「……子供みたいね」
「でも、少しは気持ちが軽くなるだろ?」
「……そうね」
レイの声が、ほんの少し柔らかくなる。
⸻
「さて、それじゃあ……次は何しようか?」
「そしたらいつもの妄想お便りコーナーでもやりますか!」
マリが呼びかける。
「今回のお便りは〜! ラジオネーム・だらだら生活推進委員さんから!」
“暇なとき、どんなことをして過ごしていますか?”
「私は……ひたすら空を眺めるわね。雲の形とか、意外と飽きない」
「俺は歌かな!適当に思い出した曲を口ずさむ」
「歌詞間違えてるやつね」
「いいんだよ!誰も突っ込まないし!」
二人の笑い声が重なり、取り留めのない会話が放送室を満たしていく。
⸻
「というわけで、今日は取り留めのない話ばかりでした」
レイが締めに入る。
「でもさ、取り留めがないからこそ、続けられるんじゃないか?」
マリがぽつりと付け加える。
「特別じゃないことも、積み重ねたら大事になる……ってな」
「……その通りね」
静かな夜に、ラジオの音だけが続いていった。
レイ「取り留めのない話、ちゃんと放送になってたかしら」
マリ「大丈夫だって!俺たちが喋れば、それで番組になるんだよ」
レイ「……無責任すぎない?」
マリ「終末なんだから、ちょっとくらい無責任でもいいだろ」




