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第14話 お風呂と洗濯日和

焚き火キャンプから帰ってきて数日。

服にしみついた煙の匂いは、やっぱり取れないままだった。


「これはさすがに限界ね……」

「よし、今日はお風呂と洗濯の日だな!」


そんなわけで、今日は生活感あふれる放送回。

いつものラジオに、湯気と洗濯物の匂いが漂うような時間をお届けする。

「こんばんは。こちら、終末ラジオ放送局」

レイが静かに始める。


「というわけで本日のテーマは“お風呂と洗濯”。いやー、やっと匂いから解放されるぜ!」

マリが大げさに伸びをする音がマイクに乗った。


「本当にね。焚き火の煙、ここまでしつこいとは思わなかったわ」

「まぁでも、匂いが残るってことは“ちゃんと外に行った証拠”だろ?」

「ポジティブすぎるでしょ」


二人は笑い合いながら、湯気立ちのぼるバケツを覗き込む。



「よし、背中流してやろうか?」

「はぁ!? 誰がマリにそんなこと頼むのよ!」

「冗談だって!でもこうやって桶でお湯をかけると、なんか銭湯っぽくていいよな」

ザバーッ、とマリがお湯を勢いよく流す。


「ちょ、ちょっと!冷たいじゃないの!」

「ははっ!ごめんごめん!ほら、次はちゃんと温かいのいくぞー!」

「……もう、子供みたいなんだから」

でも、レイの声はどこか楽しそうだった。


石けんもシャンプーもない。

それでも、桶の水音や笑い声があれば、ほんの少しだけ“昔の日常”を取り戻せる気がした。



「さて、ここで“今日のニュース”です!」

レイが軽快に声を張る。


「ニュースその一!お湯をわかすのに使った鍋、ちょっと焦げた!」

「……それ、ニュースにする?」

「いやいや、大事だろ?次からは気をつけようってことさ!」


「ニュースその二!干した洗濯物が風に揺れて、なんだか平和そうに見えた!」

「それは確かにニュースね。ほんの一瞬でも、昔みたいに感じられた」

「だろ?こういう小さいことを大事にしたいんだよな」



「さて、それじゃあ……次は何しようか?」

「そしたらいつもの妄想お便りコーナーでもやりますか!」

マリが掛け声を入れる。


「今回のお便りは〜! ラジオネーム・ソープバブルさんから!

“お風呂に入れるとしたら、何を一番最初に使いたいですか?”」


「私は……やっぱり石けん。あの泡の匂いが懐かしい」

「俺はシャンプー!頭わしゃわしゃして流すやつ!」

「……子供みたいね」

「だって気持ちいいんだよ!昔は当たり前だったのになぁ」

「今じゃ贅沢品ね。でも、またいつか出会えるかもしれない」



「というわけで、今日はお風呂と洗濯特集でした」

レイがまとめに入る。

「生活の匂いって、意外と忘れられないものなのよね」

「そうそう。明日着る服が干されてるのを見ると、ちょっと安心するしな」

「……小さな安心、大事にしていきたいわね」


放送は、湯気が静かに消えていくように締めくくられた。



マリ「なぁレイ、洗濯物取り込むの忘れんなよ」

レイ「分かってるわよ……って、あれ?」

マリ「ん?どうした?」

レイ「今、一瞬……放送に変なノイズ、入らなかった?」

マリ「……気のせいだろ。疲れてんだよ」

レイ「……そうね。気のせいならいいけど」


風の音と共に、微かな雑音が消えていった。


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