第12話 臨時キャンプ放送
今日は、いつもの放送室ではなく、外に小さな焚き火を起こしてマイクを並べている。
パチパチと燃える音、時おり吹き抜ける風の音、遠くで虫の声。
荒れ果てた世界の真ん中でも、ほんの少しだけキャンプ気分が味わえた。
「……外で放送するのって、なんだか不思議だな」
「誰も聞いてないのに、誰かに届いてる気がするね」
静かだけど、完全な静寂じゃない。
焚き火の音や夜の気配が、孤独をほんの少し和らげてくれる。
今日の放送は、そんな“音のある生活”をテーマに、二人が語り合う特別な回となる。
「……こんばんは。こちら、終末ラジオ放送局」
レイの声の後ろで、パチ……パチ……と焚き火がはぜる音が混じった。
「いつもと違う音、入ってるだろ? 今日は外に出て、臨時キャンプ放送だ!」
マリが少し誇らしげに笑う。
「虫の声も入ってるわね。放送事故って言われそう」
「いやいや! これぞ“臨場感”ってやつだろ!」
二人の笑い声に、火の爆ぜる音が小さく答える。
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「でもさ、こうして音を聞いてると安心するよな」
マリがぼそっと呟いた。
「普段の拠点って、静かすぎるからね」
「……だからこうやってラジオやってんのかな。誰かに聞かせるってより、自分たちの心を落ち着けるために」
「……それ、否定できないわ」
レイが少し笑って、焚き火を見つめた。
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「さて、それじゃあ……次は何しようか?」
「そしたらいつもの妄想お便りコーナーでもやりますか!」
マリが無理やりテンションを上げて進行を始める。
「今回のお便りは〜! ラジオネーム・キャンプマスターさんから!
“終末でもキャンプをするとしたら、絶対に欠かせないアイテムはなんですか?”」
「私は……ランタンね。灯りがあると落ち着く」
「うんうん。俺は……肉! 肉さえあればキャンプは成立する!」
「肉は“アイテム”じゃなくて食材でしょう」
「いやいや、終末キャンプにおいては最重要アイテムだ!」
「……じゃあ私は、調味料って答え直すわ」
「くっ……それはズルい!」
二人の声に混じって、風が木々を揺らす音がマイクに入り込む。
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「……こうして聞いてると、音があるっていいよな」
「焚き火とか、虫の声とか?」
「うん。何もない静けさより、“生きてる音”が聞こえると安心する」
レイは頷き、少し照れくさそうに呟いた。
「……生きてるって、実感できるからね」
「よし、じゃあまた明日からは日常に戻るか!」
「放送は続くよ、どこまでも」
マリ「なぁレイ、次はバーベキュー放送にしようぜ!」
レイ「材料は?」
マリ「缶詰!乾パン!あと謎のスナック!」
レイ「それ……ただの“終末おやつパーティ”じゃない」
マリ「いいじゃん!楽しけりゃ勝ちだ!」




