第11話 終末3分クッキング
退屈な日常を少しでも楽しくしようと、二人は今日もマイクの前に座った。
外に出ることもなく、時間だけが静かに過ぎていく。
「……なぁレイ、せっかくだし料理番組でもやってみる?」
「終末で料理番組?」
「そうそう!ほら、“3分クッキング”みたいなノリで!」
缶詰、非常食、スナック菓子――。
誰もが顔をしかめそうなラインナップも、想像力と笑い声が加われば、ちょっとしたごちそうに変わる。
荒れ果てた世界の中、拠点の小さなテーブルは即席のキッチンスタジオへと姿を変えた。
今日も、笑えることを見つけながら。
「……こちら、終末ラジオ放送局。今日は特別企画をお届けします」
レイの声が妙に張り切っていた。
「おっ、なんだなんだ?」
「題して――“終末3分クッキング”!」
「でたー!急に始まった料理番組!」
レイは机の上に並べられた材料を一つずつ指差した。
「本日の食材は、缶詰のミックスビーンズ、非常用クラッカー、そして……昨日の戦利品のチーズスナックです」
「おぉー!豪華三点セット!」
「これを使って、簡単・美味しい・栄養満点、三拍子揃った創作料理を作っていきます」
「なんか本格的に言ってるけど、缶詰とスナック菓子だからな?」
⸻
「まず、缶詰を開けてミックスビーンズを取り出します」
レイが淡々と進行する。
「次に、砕いたクラッカーを混ぜ合わせます」
「おー、なるほど、食感アップだな!」
「最後に、チーズスナックを細かく砕いて、上から振りかけます」
「……完全におやつアレンジじゃん!」
「完成しました。“終末ビーン・クラッカー・チーズ風味”。」
「ネーミングが地味ぃ!!」
マリは思わず吹き出した。
「いやさぁ、もっとこう、“サバイバーズ・サラダ”とか、“奇跡の三重奏”とか、あるじゃん!」
「……私は事実を正確に表現したまでよ」
「真面目か!」
⸻
二人は皿を前にして、スプーンでひと口。
「……意外と悪くないわね」
「おぉ!クラッカーの塩気とスナックのチーズが合う!」
「……ただ、見た目は完全に駄菓子」
「いいじゃん、駄菓子だって立派なごちそうだ!」
⸻
「さて、今日の妄想お便りコーナーいってみようか」
マリが口を拭いながら進行役を引き継ぐ。
「今回のお便りは〜!ラジオネーム・給食大好きさんから!
“もし終末でも食べられるなら、どんな給食をもう一度食べたいですか?”」
「私は……ソフト麺のミートソース」
「うわー懐かしい!私は揚げパン!」
「……どちらも、ここでは望めないわね」
「いやいや!いつか再現するんだ!揚げパン缶詰とか、出ないかな!」
「……それはちょっと食べたくない」
⸻
「というわけで、今日の“終末3分クッキング”は大成功でした!」
レイが締めに入る。
「……成功なの?」
「私たちが食べられて笑えたら、それで成功よ」
「……そっか。じゃあ、大成功だな!」
机の上には、缶詰とスナックから生まれたささやかなごちそう。
荒廃した世界でも、二人は笑って味わっていた。
マリ「なぁレイ、次回はデザート作ろうぜ!」
レイ「……材料は?」
マリ「チョコと……乾パン!」
レイ「……硬すぎて歯が折れる未来が見える」
マリ「終末スイーツは命がけかぁ!」
――次回、またちょっとした日常を。




