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第10話 静けさの中の小さな光

初めての探索から十日が経った。

食料も飲料もまだ残っていて、命の危機はすぐには訪れない。

だが、そのぶん拠点の中で過ごす時間は長く、単調な日々が続いていた。


「探索って大冒険だったな……でも、今は何も起きないな」

「……平和なのはいいことだけど、退屈でもあるわね」


電波を飛ばしても、返事が返ってくることはない。

この放送が誰に届いているのか――あるいは、誰にも届いていないのか。

ふと胸に差し込む虚しさを、冗談と笑いで紛らわせながら、今日も二人はマイクに向かう。


そしてこの日、小さな発見が、少しだけ彼女たちを救うことになる。

「……こちら、終末ラジオ放送局。ただいま生存中」

レイの声が、放送室の壁に反響する。

窓の外は曇り空。風に乗って舞う砂埃が、街の廃墟を薄く霞ませていた。


「いやー、今日は特にニュースなし!」

マリが机に頬をつけて、退屈そうに笑う。

「拠点の周り、相変わらず誰もいないしなぁ」

「……まぁ、静かでいいけど」

「静かすぎんだよなぁ!もうちょっとこう……ドラマチックな事件があってもいいんじゃないか?」

「事件があったら命の危機でしょ」

「……あ、そっか」


二人が暮らす拠点は、もともと小さな学校だった。

教室を物置に変え、放送室を居住スペースと兼用している。

屋上から見渡せば、崩れかけた住宅街と、遠くに黒く沈む森。

人の気配はどこにもなく、鳥の鳴き声すら途絶えて久しい。


「誰かに聞かれてるわけじゃないだろうけどね」

レイがぼそりとつぶやく。

「……そうなんだよなぁ。こんなに喋ってるけど、電波の向こうに人はいないかもって考えると」

「……空に話しかけてるようなものね」

「ま、そう考えると余計おかしいな!私たち、めっちゃ元気に独り言大会!」


マリは無理に明るく振る舞う。

だが少しの沈黙が、二人の胸に重くのしかかっていた。



「……じゃ、気分転換にいつものいく?」

レイがわざとらしく視線を向ける。

「おーけー!そしたら、いつもの“妄想お便りコーナー”でもやりますか!」


「今回のお便りは〜!ラジオネーム・ヒマすぎる人さんから!

“拠点の周りで、一番のお気に入りスポットはどこですか?”」


「私は……屋上かしら。風は強いけど、空を見られる」

「おー、ロマンチック!私は……体育倉庫!」

「……埃っぽい場所で何してるのよ」

「だってさ、ボールとか縄跳びとか、まだ残ってるんだぜ?遊べるもんがあるんだ!」

「……子どもか」

「いやいや、終末におもちゃは貴重なんだぞ!」



「まぁ、拠点の周りも探せばまだ何かあるかもね」

レイが窓の外を見やる。

「そうだなぁ。……あ、そういや!庭の隅に花が咲いてたぞ!」

「花?」

「そう!雑草かと思ったら、ちゃんと花だった!ちっちゃいやつだけど」

「……本当?」

「本当本当!明日一緒に見に行こうぜ!」


レイの表情が、ほんの少しだけ緩んだ。


「……それが、今日のニュースでいいわね」

「おっ、じゃあ私が言うぞ!

ニュースその一!拠点の庭に花、発見!」

「……ニュースってほどじゃないけど」

「いやいや!こんな時代だからこそ、小さなニュースが大事なんだよ!」


レイは小さくため息をつきながらも、マイクに向かって言葉を乗せる。


「……こちら、終末ラジオ放送局。本日の放送は、退屈と静けさ、そして小さな希望の花をお届けしました」

マリ「レイ、花の名前調べようぜ!」

レイ「……どうやって?」

マリ「図鑑とか!……いや、スマホで検索……あ、電波ないんだった」

レイ「……だから無理だって言ったじゃない」

マリ「未来の私たちがインターネットを復活させてるかもしれん!」

レイ「……それまで花が残ってるかどうかね」


――次回、日常にまた小さな発見を。


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